第39話 ハローワーク(ギルド)の受難







  ダンプカー四台による玉突き衝突事故は仕方ない、後続のコボルト隊の面々に事故処理を任せよう。


 恐る恐るダンプカーの運転席から降りようとするアンポンタン三人は、ウィラがホバリングしながら回収したので問題ない。


 パンツァー・ファウスト(携帯型対戦車擲弾発射機)を腰に下げたままなのが、少し気になるけれど……少なくともハローワーク(ギルド)、または彼女なりに振り上げた拳をどこかに落としたいのだろう……今回俺、関係ないよね?


 考えすぎてしまえば、結局のところ杞憂の憂鬱に終わることもあるけれど、ウィラの穏やかな表情の方が望ましいね。


 さて、アンポンタン三人をパーティーに編入した経緯を説明すれば、ウィラもどこか納得してくれただけありがたい。


「トラチヨ、ほんならあとはうちに任してくれればええわ。どこのぽっと出か知らへんけどな、うちがしばいたるから安心しぃ?」


 その後、詳しい事情を聞く限りでは、アンポンタン三人のリーダー格である男は、ハローワーク(ギルド)で大層な振る舞いをしたようで、職員も手を焼いているばかりか、クソチビポメ柴もよく耐えているだけまだマシか。


 ウィラの堪忍袋の尾が切れようものならば、俺は即座に撤収したいぐらいであるが……さて、今回は、果たしてどうなることやら?


 パンツァー・ファウストを腰に下げ、ホバリングしながらハローワーク(ギルド)に向かって前進するウィラに、俺とアンポンタンの三人が続き、ギルドの扉を開けば……うん、どうやらお祭りの会場に迷い混んだらしいね?


「……おい、誰がチビだ? 舐めてんじゃねえぞクソガキが!!」


 ああ、盛り上がっているようでなによりだ。


 ギャラリーに囲まれているからか、クソチビのヒナコの姿を全く認識出来ない一方、あたかも積み上がった山と化し、ピクピクと痙攣、脈動する敗者のなれの果てを目にすれば、どうやら大盛況みたいだね?


 身長144cmながらも狂犬そのものである放浪の魔女相手に対し、挑む奴らはいったいどういう神経をしているのだろうか?


 そしてよく見れば……積み上がった山のなかに、どことなく見覚えのある奴を確認。


 早速アンポンタン三人に確認すれば、無能なリーダー格とのこと……オッケイ、こっそり止めを刺すかい?


「ほな、そういう訳やから、地上屋みたいに突っ込んだらあかんっちゅうのもわかったやろ? トラチヨ、ここはヒナコちゃんに任してな、ギルドマスターにガツンと言うた方がええやろ?」


 ああ、このまま突っ込んだら罰金刑どころじゃあない、お縄を通り越して極刑だったね……ウィラ、ありがとう。そして愛してる。


「トラチヨ、事が事やからあれや。ちょうどマイケルも来てくれはったことやし、ほんならフェアデヘルデのカズサちゃんもこっち来る言うてるし、ほんならうちんとこのジェニーも呼ばなあかんわ。いっぺんギルドの制度にもメス入れなえらいことになってまうで」


 おいおい、思った以上に面倒なことになっているね?


 アンポンタン三人、そして積み上がった山の一角と化した無能なリーダー格は、同盟国であるフェアデヘルデの者だから丁度いいか……いや、いったいどう収拾をつけるんだ?


 とりあえずそうだね、俺は次もヒナコが勝つと予想するまでもないからね、これじゃあ賭けにならないね?───。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る