第38話 嫁は強し








  ダンジョンの出口へ向かってバックオーライ、召喚したダンプカーでダンジョンの出口に向かってゆっくりと進めば、高さと幅制限は問題ない。


 このままハローワーク(ギルド)に突っ込んで、無言の抗議と行きたかったんだけどね……出口に差し掛かった瞬間、光に包まれるさながら光のトンネルをくぐり抜け、久しく感じる外の世界へと帰ってくれば、すっかりと夜のとばりが下りたところか。


 さ、このままバックでハローワーク(ギルド)に突っ込もうかと思っていたその時だ。


『..-..-..----.-.-.-..-..-..----.-.-.--...--..-..-..-....-.-..-...--....-.--(止まれ、止まれ、早よ止まらんかいボケ)』


 突如フロントガラス前へと躍り出たウィラが、ホバリングしながら俺に向かって発光信号を送ってきたのだ。


 うん、相変わらず綺麗でかわいくて美しいけど、ちょっと怒った顔よりもさ、笑顔の方が素敵だと思うよ?


 ともあれ、俺がこれから何をしようとしているのか、よく理解しているようで何よりだが、邪魔をしないで欲し……待て待て待て、何処からともなく取り出した、パンツァー・ファウスト(携帯型対戦車擲弾発射機)を構えないでくれ?!


 俺が悪かった!


 いくら元魔王の俺でもさ、パンツァー・ファウストなんて撃ち込まれたらひとたまりもないぜ?


 オーライ、停止! 停止!……って、待て待て待て!?


 おい、後続のアンポンタン三人組!


 止まれ! 止まれ!!……って、そう言えば俺、こいつらにダンプカーの操縦方法、バックしか教えてなかったわ!?


 クソッタレ! 脱出だ!……その後、玉突き衝突事故になったのは、言うまでもなかったね。


 幸いにして誰一人として死傷者もなく、ダンプカーの頑強さを改めて認識したし、ハローワーク(ギルド)も無事だ。


 とりあえずウィラに怒られることは確定として、ダンプカーが傷物になってしまったことにより、俺のMP(マネーポイント)がごっそりと減ったような、そんな気がするね? HAHAHA!


 さて、久々の外の世界にて、世界で一番かわいくて綺麗で美しくて賢い最愛の嫁、ウィラと再び会えて最高に嬉しいぜ!


 相変わらずと言うか、マサチューセッツ州発祥のスマイリーフェイスのように、口角を吊り上げて凝視されるのは、嬉しいを通り越してちょっと怖いけど……どうしたんだい?


「トラチヨ、あんたがなにしようとしたか、そらわからんくもないんやけどな、流石にそらあかんで?」


 はい、仰る通りでございます。


 ウィラもウィラで、ハローワーク(ギルド)に何か言いたげな様子であることも、表情から察することが出来るね。


 しかし、本題はそちらじゃあなさそうだが……いったいなんだろうね?


「ナギのことはええねん。それよかあんた、あの三人に手ぇ出したりはしとらんやろ?……うん、その様子やったらなんら問題あらへんな、それでええねん」


 ウィラには隠し事なんて出来ないし、例え隠そうとしたところですぐに看破されてしまう。


 故に、俺は正直をモットーに生きているし、事実、ナギ姐、ヒナコ、ジェニファー、その他諸々以外、浮気はしていない。


 尤も、今はその話ではなく、ハローワーク(ギルド)への抗議、そしてアンポンタン三人のリーダー格だった男のことで、今から一悶着と言った話になりそうだね────。








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