第37話 ナギ姐の事情と地上げ屋







  小型魔獣の掃討が完了したことで、フロアの出口が開いたことで我々に先立ち、ゴーストさん、ダークフェアリーたちは撤収していった。


 残ったコボルト隊とアンポンタン三人、そして俺とナギ姐は焼け残った残骸を運び出し、数百体に及んだ小型魔獣たちの骸を一ヶ所に集めて積み上げれば、さながら宝の山の出来上がり。


 価値のありそうな部位を取り分け、残りは肥料の原料として纏め、MP(マネーポイント)を消費して大量のリアカーをレンタルしたことで、ほぼ全てを運び出すことが出来そうだ。


 ここに来るまでのフロアで打ち捨てた残骸もそうだが、最初からリアカーをレンタルしておけばよかったね? HAHAHA!


 いくら元魔王の俺と、鬼神の魔女であるナギ姐であっても、持ち運び出来る量にも限りがあるからね?


 勿体ないことをしたものだとも思いつつ、今度から輸送担当の輜重的な役割を果たす、冒険者とパーティーを組んでおきたいものだ。


 今回、不幸なすれ違いの果てにパーティーを組むことになった、アンポンタン三人を候補に入れておくのも悪くない。


 早速その旨を伝えれば、快くまた一緒にダンジョン探索をしたいとのこと。


 訓練も施したことでランク相応の実力も付いてきたことだし、あとは無能なリーダーの討伐の仕方を教えないとね? HAHAHA!


「カスガ、悪い……ちょっと先に出てもいいか?」


 ちょっと先の皮算用をしている時にナギ姐が、どこか申し訳なさそうな表情をしながら、断りを一つ入れる事情は知っているさ。


「ああ、ジェニファーによろしくな……もし、イナ中佐がこっちに来ていたらさ、二人で思う存分ゆっくりしてきなよ」


「ありがとう、また空振りかもしれないけどさ……ジェニーも喜んでくれるし、どちらにしても少しゆっくりしてくるさ」


「おう、それじゃごゆっくり」


 そうしてダンジョンの出口へと急ぎ足で向かうナギ姐の背中を見送った。


 どうか、ナギ姐の願いが叶うことを祈って……さて、今から俺たちは、この大荷物を運ばないとね……あ、それならいい方法を思い付いたね。


 以前、天界で召喚した、三菱ふそう、および いすゞ製の大型トラックを召喚するのもいいんじゃないか?


 いや、むしろ今回の戦利品的にダンプカーの方が、効率いいかもしれないね!


 あー、色んなメーカーあるけどどれにしようか?……あ、ところでさ、マイケル君。


「魔王様、我々コボルト族が、ダンプカーを運転出来るとでも思ってます? 小柄で短足な我々では、まともに運転なんて出来ませんよ?」


 ああ、そう言えばそうだった。


 アンポンタン三人はどうだ?……えっ、ダンプカーとは何かだって?


 そもそも運転免許とは何ですかだって?……わかった、バックの仕方だけ教えるから、なんとかしろ。


 今回の件もさ、ハローワーク(ギルド)側に落ち度があるものだからね。


 戦利品を満載したダンプカーでバックしながらダンジョンの出口を出て、そのままハローワーク(ギルド)に突っ込めばいいのさ。


 地上げ屋のやり方なんだけど、基本的にバックで突っ込む。


 ハローワーク(ギルド)の建物に突っ込んでも運転手は無事、ダンプカーの質量と積載物である小型魔獣たちの残骸が、建物内に流入することで、事の重大さを知らしめてやろうではないか!


 さ、そうなれば積めるだけリアカーからダンプカーに移し替えるぞ!───。








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