第36話 精鋭たち







  洞穴内にゴースト族の観測員を配置し、ダークフェアリーたちと連携して敵情を把握した我々は、早速マイケル・ブラウンに指示を送り、彼の号令で分隊(10人前後の部隊単位)毎に分かれた精鋭コボルトの配置が完了した。


 先行したダークフェアリーたちには、予め洞穴内に油を撒いてもらい、用意周到な彼らは洞穴内から撤収。


 あとは号令を待つだけ、敵情に変化はない……さぁ、派手にやろうではないか。


「攻撃開始、掛かれー!」


 マイケル・ブラウンの号令と共に、洞穴内に向かって火炎放射が放たれ、中から複数の小型魔獣の断末魔が各所で響き渡り、ダンジョンのフロア内に木霊した。


 予め油を撒いていたこともあり、洞穴内は炎の壁で塞がれ、少し空気が薄くなってきたと感じた頃には、それまで轟いていた断末魔すら聞かなくなり、小型魔獣たちの末路と同じく炎は消えていき、やがては静寂に包まれた。


 観測員のゴースト族からの報告では、概ね殲滅完了。


 洞穴内の炎は鎮火した模様だ。


 業火から逃れ焼け残った小型魔獣も酸欠で倒れ、しばらく間をおいてから突入したコボルト隊に止めを刺されたことによって、フロアのどこかで扉の開く音が鳴り響いた。


 ああ、今回のミッションもクリアと相成った。


 物理攻撃無効であり、念仏や除霊に対して弱いゴースト族は、火炎放射や酸欠でオウンゴールすることなく当然のように健在。


 死んでいるけど生きていることに対して飽きない限り、那由多の刻ぐらいに長い第二の人生を謳歌する、不死身のゴースト族たちは、ことが終われば我々の前に姿を表した。


「マオウサマ、マタシテモオヤクニタテテコウエイデゴザイマス」


「ああ、いつもありがとう。お前らのお陰で誰一人として失わずに済んだ。感謝する、あとでたくさんのお供え物を送るよ」


「アリガタキシアワセ……よし、お前ら! 宴会の準備をするぞ! 魔王様からのお供え物でな!」


「「「「「「「応!!」」」」」」」


「ワタシハ、ゴーストゾクノアイデンティティーヲマモリマス。コドモノユメヲコワシテハイケマセン」


 相変わらず、頼もしくて愉快なゴーストさんたちは、普段ならそのまま消えるところを、何故か普通にダンジョンの出口に向かって……おい、お前ら、普通にダンジョンの出口から出るんかーい!!


「チジョウジカンハヨルナノデダイジョーブデース」


 ああ、そうかい……一方のダークフェアリーたちも、俺の周りを飛び回りながら誇らしげに発光信号を送り、彼らの活躍を称えれば目の前でホバリングしながら整列し、いつもならいっそう強い発光信号を送ってから音もなく転移……することなく、列をなして出口へと向かってゆっくりと飛んでいった。


 おい、お前らも普通に帰るんかーい!


 最後にコボルト隊たち、彼らにも今回のミッションを完璧に成し遂げたことで、相変わらず高い練度であることを証明し、精鋭部隊として誇らしげに胸を張った彼らに対し、感謝しきれないね。


 コボルト隊、ダークフェアリー、ゴーストさんたちを召喚したことで消費したMP(マネーポイント)に、謝礼を上乗せしたので今回の報酬は殆どペイすることになりそうだ。


 戦利品を売ればいくらかにはなるだろうが、騒然と立ち尽くすアンポンタン三人にも分配する手前、まだまだウィラのヒモから卒業する日も遠いかもね?───。








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