第35話 カピターンたち







  マイケル・ブラウンとのやり取りを終えた頃には、ダークフェアリーたちも洞穴内のマッピングを終えて帰還してきた。


 また、ゴースト族の元部下も呼び出し、ダークフェアリーたちと入れ替わるように洞穴内へと潜入してもらい、リアルタイム情報を送ってもらうことで勝ち筋は見えた。


 先に撃退して分散しているとはいえ、小型魔獣たちは何体かで潜伏し、なかには一個小隊規模の数(おおよそ40体前後)で纏まり、逆襲の機会を窺っているようだ。


 総数にして数百体であることを確認したことで、これは大変骨の折れる攻略となるだろうと思っていたよ……ああ、精鋭のコボルト隊が到着するまではね?


「魔王様! 大変お久しゅうございます! 再び魔王様、並びに極東の魔女様と共に戦えることを光栄に思います!」


「ようマイケル、息災のようだな。親父のチャゲもそうだが、息子のお前も出世したな!」


「はっ、魔王様、そして極東の魔女様の前世と同じ階級、大尉を拝命致しまして光栄の極みであります!」


「マイケル、そう固くなるなって? あたしとカスガはさ、もう隠居の身だぜ? 今はお前たちの時代だ、あたしら年寄りの尻拭いに付き合わせて悪いな」


「いえいえ、我々に仇なす驚異を前にした防人の務めでございます。なによりも我々にとって英雄である、魔王様と極東の魔女様のエスコート……大変光栄でございますからね」


「「……ああ、過去の英雄たちなら通りすぎていったさ」」


「魔王様、極東の魔女様、ポーリュシュカ・ポーレでも歌います?」


「「……いいね」」


「「「HAHAHA!」」」


 精鋭コボルト隊の部隊長である、マイケル・ブラウン大尉の率いる、現役の若い世代からなる選抜兵で構成された部隊が到着し、大隊としては定数割れしているものの僅かな時間で即応出来る、中隊規模の兵力をよくぞ集めたものだ。


 数の上では洞穴に籠って潜伏する、小型魔獣たちとはおおよそ互角……だが、装備と練度、指揮統制、なによりも士気を含めて勝てない理由が見つからない。


 よって確実に攻略が可能だ。


 ポーリュシュカ・ポーレ、原曲である赤軍バージョンではなく、origa バージョンをチョイスすれば、草原を駆け抜けた過去の英雄たち、そして生き残った偽りの英雄である俺とナギ姐にお似合いだろう。


 あるいは前世で大尉の階級だった俺とナギ姐、そして現役のマイケル・ブラウンの三人にお似合いな、カピターン(大尉)を歌うかい? HAHAHA!


 ともあれ、このままダンジョン攻略そっちのけでマイケルと談笑したまま、アンポンタン三人と、コボルト隊おおよそ150名を置き去りにするわけにはいかない。


 洞穴に対して有効な火炎放射機、サブマシンガン、銃剣を装着したカービンライフル、手榴弾、中には旧来のショートソードを持ち込んだ精鋭コボルト隊の面々は、1m前後の小さき身体ながらもとても頼もしいものだ。


 彼らは今まさに、俺とナギ姐、そしてマイケル・ブラウンの号令を今か、今かと待っているんだ。


 ああ、アンポンタン三人よ、小さき身体のコボルトたちを見て、どこか頼り無さそうに見えるのかい?……HAHAHA!


 安心してくれ、戦争を知らないお前らもじきにわかるさ───。








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