第34話 コボルト族の精鋭







  一斉に襲い掛かってきた小型魔獣の群れをなんとか撃退し、巣穴に撤退して立て籠る奴らをどうやって殲滅するか、結局のところ巣穴をしらみ潰しに一つ一つ制圧する意外、攻略する道はない。


 小型と言えどもホッキョクオオカミサイズの魔獣相手となれば、油断大敵であるだけでなく、狭い洞穴に入ろうものなら地の利を生かしてくることも予想される。


 なによりも身長184cmの俺と、2m近いナギ姐ではろくに身動きが取れず、ただの案山子になってしまうことであろう。


 アンポンタン三人も例外ではなく、四つ足歩行の形態に対して、狭い洞穴に入れば不利であることに間違いない。


 そうなれば、洞穴に向かって火炎放射が有効かもしれないが、網の目のように入り組んでいたら効果が薄いだろう。


 召喚魔法でM132自走火炎放射器をリユースし、安全な車内に籠りながら火炎放射で燻り出し、焼き肉パーティーをしながら酸欠で飛び出てきた奴らを銃眼から狙い撃ちする方法も考えたが、これではあまりにも効率が悪い。


 プランBへと移行、形態端末のようなものを介して連絡した先は、元魔王ならではのツテを使うって訳だ。


「ようマイケル、俺だ。久しぶりだな!」


『……これはこれは、魔王様。息災のようでなによりです。噂によれば、最近ダンジョンをぶっ飛ばしていると耳にしてますからね、私の親父も頭を抱えていますよ?』


「チャゲの奴は偉くなっても相変わらずか、いい親父だな」


『ええ、一介の弱小魔族から大統領になった偉大な父です、息子として誇らしいですよ。ところで魔王様、私に連絡したと言うことは、部隊を動かせと言うことですかな?』


「ああ、ダンジョン最深部の小型魔獣の殲滅にあたり、兵力が足りない。相変わらずハローワーク(ギルド)の連中、戦力評価を改めないから困ったものだよ?」


『なるほど、魔王様のおかげで我々の地位も急速に上がりましたからね。まだまだ人間達に遅れなんて取りませんよ?』


「おいおい、俺も一応人間だぜ?」


『ええ、人間辞めてるあなたと比べる方がかわいそうですよ?』


「『HAHAHA!』」


 マイケルこと、マイケル・ブラウンは、かつての側近であるコボルト族のリーダー、チャゲ・ブラウンとアスカ・ブラウンの間に生まれた、子供たちの長男だ。


 今や大統領のチャゲ譲りの真面目な性格でありながら、ジョークを嗜むバランス感覚も受け継ぎ、我がエステライヒ軍の精鋭部隊の中隊長として敏腕を振るっているマイケルとは、ある種の師弟関係と言ってもいいだろう。


 彼に詳しい情報、現在の状況、必要な装備を伝えれば、すぐに即応部隊を動かしてくれるとのこと。


 準備が整い次第、彼らを召喚魔法で呼び出して制圧と行こうか。


 もちろん作戦にあたり、先行してダークフェアリーたちを呼び出して洞穴のマッピングも完了している。


 それじゃ、今回もエステライヒの精鋭たちの力を見せつけてやろうではないか───。








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