第33話 小型魔獣の脅威








  参ったね……ああ、子供たちの進路や反抗期の話じゃあないよ?


 過去の英雄の背中を追わなくても良いように、望んでいない過度な期待を背負わされないように、誰と比べるまでもなくたった一人の存在だからこそ、トラノスケとウィルヘルミナには、酸いも甘いも知りながら自由な人生を全うして欲しいからこそ、俺とウィラは表舞台から消えたんだ。


 適度な距離感でもって、必要な時こそ親としてもそうだが、人生の先輩としての出番はあるものの、家族関係で特に困ってはいないんだ。


 今度はそうだね、チャイニーズレストランでコース料理を食べたいね! HAHAHA!


 俺はウィラがいるからこそ、バカの上を行くアホをやらせてもらっているぐらいだから、最高の第二の人生を全うしているのさ。


 生きていれば何者にもなれる、そういう平和な時代が続くと良いね……って、今はそういう話ではなく、ようやくたどり着いたダンジョンの最深部で直面した、驚異というものに参っているんだ。


『TATATANG! TATATANG!』


『TANG! TATANG!』


『『『TANG!……click……TANG!……』』』


 ああ、倒しても倒してもキリがない、小型の魔獣の群れを相手に銃撃は止まず、アンポンタンの三人に対して実戦的な射撃訓練を施さなかったとしたら、間違いなく全員リスポーンだったのかもしれないぐらい、薄氷の上を進んでいるのだからね。


 相変わらずハローワーク(ギルド)の連中は、小型の魔物、魔族、魔獣に対する先入観を捨てきれていないのか、群れをなして連携を取りながら襲い来るさながら狼の群れのような、小型の魔獣たちの驚異と言うものをわかっていない。


 そりゃあ一対一であれば、容易いかもしれない。


 そうだな、画面の前のあなたに問う。


 例えば今、目の前にダルメシアンの仔犬が一匹いるとしよう。


 きっとあなたは、メロメロになって幸せなひとときを過ごせるかもしれない、もしかしたら犬アレルギーで大変かもしれない……それじゃ、どこかで見たことある101匹のダルメシアンが、一斉に飛び掛かって来たとしたらどうだい?


 ああ、じゃれあいでわちゃわちゃするのは最高だが、こちらの命を狙ってくるのであれば、だいぶ話しも違ってくるだろ?


 もちろんダルメシアンの仔犬的な生易しい話ではなく、101匹以上のおびただしい数で襲いかかる、殺意増し増しなホッキョクオオカミサイズ(成獣の平均体重45kg、最大80kgぐらい)の魔獣の群れ相手に、対抗できる人物、それこそムツゴロウ王国の主でないと無理な話であろう。


 果敢にも銃撃にて応戦し、火力をもってしてなんとか一時的に撃退出来たものの、これがBランク相当の依頼と言い張るハローワーク(ギルド)の職員を、今すぐ召喚したいぐらいに戦力評価を見誤っているね?


 一時的に撃退が出来たとなれば、追撃戦に移行するのがセオリーであるが、火力はともかく、まるで数が足りない。


 戦いは数だ、そうなれば俺のユニークスキルの出番であるが……狼型の小型魔獣の巣を掃討するにあたり、MP(マネーポイント)と相談だ。


 そうだな、もしかしたらあのときの『反魔王派魔獣戦線』と同じ方法を採らざるを得ないかもしれないね───。








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