第32話 前世・異世界の女性遍歴と子供たち








  ライフルを構えるアンポンタン三人の射撃訓練の標的と化した俺は、全力で駆け抜けながら時に緩急を加え、まるで怖くない鬼ごっこを繰り返していれば、ようやく連携して統制の取れた射撃も出来るようになったことで実戦レベルへと達した。


 時折、どさくさ紛れにナギ姐も俺に向かって撃ち込み、あわやリスポーンかに思われる一幕もあったが、この程度ならまだまだ問題ない。


 それよりもウィラに怒られる方が、よっぽど怖いぐらいだ。HAHAHA!


 相変わらずのタイトルが行方不明のダンジョン物語であるが、画面の前のあなたは、きっとこう思うのだろう。


 妻子持ちの浮気者、尚且つヒモであることに憤慨するか、あるいは他人の人生だからエンタメとして捉えるのかもしれない。


 ああ、本エピソードに至るまで、女神のジェニファー、放浪の魔女のクソチビポメ柴のヒナコ、そして鬼神の魔女であるナギ姐と深く複雑な関係であることに、疑問が生じることであろう。


 これについて結論から言えば、全員がハッピーになるただ一つの方法だからだ。


 まさかね、前世で深い関係になった女性たちが、この世界に集結する奇跡、同時にクソッタレな神様のいたずら心に対し、どのような抗議文を送ろうか悩んで10年以上の月日が経ってしまったからね?


 それについて、今から簡単に説明させてもらうと……前世の時系列的にはこんな感じだ。


 ナギ姐は人生で最初の相手であり、同じ部隊に所属し、彼女をサポートしていたことで共に生き残り、深い絆で結ばれていたのもあったが、当時少年だった俺に対する貞操観念の教育を敢行したり等の色々と事情はあった。


 少年兵が教育を受けなかった未来を想像すれば、妥当な判断であると考えられるし、互いに悪い気なんてなく、むしろ更に絆は深まった……それを笑って許したイナ中佐には、今でも絶対に頭が上がらないね?


 また、戦地から離れてからも特務機関、いわゆる諜報機関でバディを組んでいた関係上というものも大きい。


 その後、俺がヒナコと出会ったことで、そういった関係性から変わっていった……この世界で再会してから、第二のはじめましてもナギ姐であったこと、そして最愛のイナ中佐がこちらの世界に来る様子もないことから、彼女の寂しさをどうやって紛らわすんだって話になるわけだ。



 次にヒナコ・カザミだが、戦場とハイスクールライフを往き来した結果、四回留年して後がない時に出会った、性格の悪いクソチビに何故か懐かれ、そのうち一線を越えたことで恋人関係になった。


 彼女は前世で天涯孤独となり、戦地での事故もあったことで俺は重傷、ナギ姐は新しい世界へと飛び立ってしまったことで罪悪感に抗えず、動けぬ俺に一方的な別れを告げて数年間、音沙汰も無かった。


 その後、戦線復帰した俺は、当時アメリカ海兵隊で上等兵だった、ジェニファー=ズザンネ・サマーフィールドと出会い、戦地を共にして互いに生き残れば、深い信頼関係からやがて恋仲にもなった。


 しかし、彼女は運に見放され……戦死。


 私的な理由でテロリスト相手に報復をしていた俺のことは、本国の耳に入り問題となりかけたとき、音信不通だったヒナコが、俺を呼び戻すべくして迎えに来た訳だ。


 数年間のブランクはあったものの、恋人同士だった時間を取り戻すかのように、ヒナコとの二人きりの時間を満喫したあと……彼女は、戦地へと飛び立ち、俺はある機関へと転属となり……やがて、最愛の人と結ばれたのが、ウィラって訳だ。



 そんな訳で、前世の嫁と恋人たちが、全員揃ってしまう珍事により、誰か一人を選ぶことになるかと思われたが……当時の俺が、魔王であり、エステライヒの建国者であるとなると、更にややこしくなるって訳だ。


 最終的には、ウィラの鶴の一声により、今の関係性に落ち着いた。


 もちろん、ハーレムのように女性たちを侍らせることなんてことはないし、関係を持っている相手は前世と同じ。


 それぞれの事情が重なりあっているからこそ、成り立っている複雑な事情って訳さ。


 ああ、子供についてだが、俺とウィラの間に授かった、トラノスケ、ウィルヘルミナも随分と大きくなったものでね……久々に家族団欒のときを過ごしたいね。


 教育については、かつての部下たちに任せて変に口出しなんてせず、成長を見守りながら悠々自適な引退ライフを送らせてもらっている。


 平和な時代になったこともあり、少なくとも世襲をする必要もないし、好きな道を探し、やがて選んだ道で最高の人生を楽しんでくれることを願うのは、理解されなくても構わない、親心でもあるのさ───。








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