第29話 実戦的なブードキャンプ







  不意の遭遇戦から三人の捕虜を得たものの、未だダンジョンの攻略は完了していない。


 捕虜を抱えたまま攻略するのも手間なので、再武装化して戦力として組み込むことに同意を求め、応じてもらったことによる臨時の編成ということに相成った。


 もっとも、お互いランクでは計れることの出来ない実力差もあり、ハイエナ行為で楽をして来た分、実力の伴っていない彼女たちと模擬戦をすれば、ハローワーク(ギルド)のお役所仕事に対して、猛抗議する必要があるね。


「ナギ姐、こいつらの能力、どう思う?」


「あ? 片手で十分だろ。弱者の戦法でのし上がるのはいいけどさ、実力不足で頭打ちだ」


「過去の成功体験から転換期を見誤ったな。こいつらは限界に気付いているようだけど、リーダーが過去の成功体験に囚われたままだったようだね」


 ハイエナ行為の成功が積み重なり、ランクだけが成長してしまった結果、本当の実力の方はせいぜいCランク程度と言ったところ。


 消耗したパーティーを相手取る分には、実力が伴わなくても問題はなかった。


 リーダー格にバフをかけて、戦力の集中による一点突破という発想そのものは悪くない。


 しかし、目論見が外れた場合の修正は効かず、これまでは失敗しなかった故に、プランBに移行する機会が訪れず、そもそも相手が悪すぎたと言う訳だ。


 実力で言えば、勇者グリーンティの足元にすら及ばない奴らが、どうやって魔王と魔女のコンビに対抗するのやら?


 とりあえず、ここに至ってはプランBの実践を兼ねた、魔物の討伐で挽回してもらおう……ついでに、同盟国のボンクラの実家には、完全武装したエステライヒの外交団を送り付けておこうか! HAHAHA!



 ダンジョン攻略を進めながら、アンポンタンの三人に銃口を向けながら指示を出し、実戦的なブードキャンプでレベルアップを計り、ようやくまともに戦えるぐらいに成長してくれて嬉しい限り。


 やはり、無能なリーダーの下では苦労する訳ってもので、最初に見たときよりもいい表情をしているよ? HAHAHA!


 今度からは、お前らの意思でパーティーを組むようにすればいいさ……ハローワーク(ギルド)の方には、俺たちから言っておくからね。


 仕組み、制度的なものにもメスを入れていかなければ、この先どんどん問題が発生することだろうからね。


 さて、何だかんだでBランククラス相当のクエスト、ダンジョンだからか、大分深く潜ったものだけど、一旦休憩を挟みたいと思うのは、それなりにおっさん化した故だからだろうか?


 ナギ姐にアイコンタクトを送れば、全く老けることなく、前世との合算で後期高齢者並みの時を過ごした彼女もまた、少しばかり疲れが顔に見え隠れしていた。


 そして、おあつらえ向きというか、この癖強で個性的なダンジョンらしく、このフロアにはモンスターの出現しない休憩ポイントがあり、ピンク色のネオン輝く条例や景観的に淘汰されそうな、カップル向けの休憩所、および宿泊施設が聳え立つシュールな光景は、いかがなものだろうか?


「カスガ、ここ、結構コスパいいんじゃねえか?」


 有無を言わさずナギ姐に引っ張られ、中に入ればパネルの証明が光り、料金が表示されている訳であるが……いったい俺はどこから突っ込めばいい?


「突っ込みどころ満載って顔をしてるな?……おい、今から突っ込む相手ならさ、ここにいるだろ?」


 とても漢気溢れる誘い文句をいうナギ姐は、パネルを押せばアラームが鳴り、フロントでお会計をしてから、部屋の鍵を受け取った。


 この世界にも何故か存在するファッションホテル、あるいはカップルホテルのエレベーターに入ってからと言うもの、急速に顔を赤らめていくナギ姐の表情が、溶けるようにして崩れていくがままに顔を近付けば、部屋まで待ちきれない情熱的なご挨拶の時間だね───。







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