第28話 アンポンタン







  この世界においてのダンジョンは、基本的にモンスター、あるいはクリーチャーの無限湧きというものはなく、有限であり掃討が完了すれば、討ち漏らしのない限りはただのがらんどうとなる。


 当然、同じダンジョンに時間差で突入することになれば、俺とナギ姐の露払いでペンペン草すら生えない状態となり、後から入ってきた奴らは、ピクニック気分で楽できるって訳だ。


 通常であれば不用意なブッキングをしないよう、ハローワーク(ギルド)が上手く組んでくれるのだが……俺とナギ姐が出撃した後から、ハイエナ目的で無理やり入り込んで来たのが、件のパーティーって訳だ。


 ナギ姐の尋問により明らかとなったのが、リスポーンしたリーダー格の所属が、エステライヒの同盟国の中にある名家のご子息、または跡を継げないどら息子という訳だ。


 国際問題となるかはともかく、名家に転生したことをいいことに、各地で好き放題やってたらしく、ハローワークや各公的機関も手を焼いていたらしいとのこと……もっとも、エステライヒ国内で通じる訳ないんだけどね?


 早速、かつての部下達に携帯端末のようなもので連絡を取り、色々と動いてもらうよう取り計らってもらった。


 そして、残った三人のお供の処遇であるが、引き続きナギ姐に任せておくとしよう。


 とりあえず、ハイエナ行為を繰り返していた前科もあることだし、小賢しいリーダー格のことは、地上に帰ってから落とし前を付けよう。


 あとはそうだね、ダンジョンの攻略も進めて行きたいね……ああ、使えるかわからないが、こいつらを再武装させて先頭に立たせてみるのもありだね? HAHAHA!


「……タイヨウ(カスガ)、符丁はもう必要なさそうだ。あたしらが名乗ればさ、手出しされることもなさそうだ」


「そうか、じゃあ遅くなったけど自己紹介と行くか」


 必要な情報も得られたことで、今後の対応を吟味した結果、ナギ姐の判断は妥当と思われる。


 つまり、このパーティーの実力はお察しと言う訳だ。


 早速武装解除した三人のお供に対し、横一列で並んでもらうように伝え、状況を理解しているからか、素直に応じただけまともな判断だと思うよ?


「よしお前ら、名前とランクを言いな?」


 ナギ姐が銃剣付きのFN FALを向けながら、一人ずつ名乗るように促せば、各々が素直に応じた。


「……アンジェリカよ、職業は神官。冒険者ランクはAクラス」


「……ポンポニーア。白魔導師、冒険者ランクはBクラス」


「……タンディ、風水師。冒険者ランクはB」


 おお、三人揃えば『アン・ポン・タン』って訳だが、その称号はリスポーンしたリーダー格に贈ってやろう。


 さて、アンポンタンたちが、名乗ってくれた以上はさ、俺たちも名乗らないといけないよな?


 ナギ姐にアイコンタクトを送り、楽しい自己紹介の続きと行こうか。


「カイズ改め、ナギサ・コウサカ・イナだ。インペリアル・パシフィックの鬼神族の魔女で、同国の元棟梁だ。今は引退してDランクの白魔導師をやっている。よろしくな」


 身長2m近いナギ姐が、銃を向けて威圧的な眼光を放った上でこの情報量の多さに、アンポンタンは固まったまま動く気配すらない。


 蛇ににらまれた蛙よろしく、俺が自己紹介をすれば、更にもう一匹の蛇を追加と言ったところだ。


「タイヨウ改め、トラチヨ・カスガだ。エステライヒの建国者であり、元魔王をやっていた。今は訳あって引退してさ、Dランクのシーフをやっているよ?」───。








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