第13話 曰く付きのFランクの依頼
◇
今日のEランク用の依頼は、午前で締め切られてしまったらしく、仕方なく四人でのんびりランチタイムを満喫していた。
一応、一つ上のDランクの依頼を受ける事も可能であるが、条件としてEランクの依頼をいくつか経験し、Dランク以上の冒険者の同伴が必要とのこと……だが、こちらも締め切られてしまった。
参ったね、今日もなにもしないまま、ウィラのヒモで一日が終わってしまう……どうしたものかと悩んでいれば、掲示板に貼り出されたFランクの依頼が目に入ったのだ。
Fランクの依頼内容を確認する限りだが、Eランクの猫探しや野草探しに比べたら、桁違いの高額報酬であり、ランクで言えばB~Aランク帯の相場並み……であるにも関わらず、誰も興味を示さないのはどうしてなのだろう?
このまま仕事をせずに帰るのも気が引ける。
早速、ハローワーク(ギルド)の受付のお姉さんに訪ねてみたのだ。
「……あんた正気?」
しょうきと言ったら、二式単座戦闘機のことか。
今は脱ニートしたヒモに過ぎないが、元魔王という過去の栄光にすがれば、まさに厄除けの神、鍾馗そのものであろう。
「ああ、俺はまさに鍾馗だ」
「……イヤ、ソレショウキチガイトチャウカ?」「カスガダシナ、タブンナニカカンチガイシテル」「……カスガハバカダカラナ」
「……危険よ?」
「棄権? ああ、辞退するわけないだろ? お前はいったいなにをいっているのだ? いいから早く手続きを進めてくれ」
「ソッチノキケントチャウヤロ?」「ウィラ、アキラメロ」「……カスガハバカダケドタノシイカラモンダイナイ」
そしてさっきから後ろがうるさいけれど、俺はなにも気にしない。
女三人集まれば姦しいと言うか、この性格のキツイ三人が集まったら止める術なんてあるはずもない。
Fランクの依頼について、三人はなにも言ってこないので問題ないはずだ。
しかし、それ以外の冒険者たちからどよめきの声が上がり、さながらムービースターがお忍びで現れたかのようだね?
HAHAHA! 最高にいい気分だ、早速Fランクミッションとやらを攻略しようではないか。
「……では、フリー(F)ランクの依頼ですが、ダンジョン内に突然現れた、反魔王派魔獣戦線の残党軍の掃討を」
ちょっと待って、今、何て言った?
数年前に根絶したはずのテロリストの残党だって!?
流石に根絶そのものは無理として、ある程度の討ち漏らしなんて想定内だろう。
その後、野に下った残党たちは散り散りとなり、身分を隠し、口を閉ざして静かに墓場まで持っていくのだろうけれど……よりにもよって、ダンジョンに潜って再起の機会を伺っているのかよ!?
もう魔王は引退してニート、今はウィラのヒモだから大義名分の喪失した彼らが、振り上げた拳の落とし処に困っているって訳か……うん、最悪なパターンだな!
正規軍の訓練を受けた奴が、ダンジョンに潜っているとなると、そりゃあSランクでも無理なことは、既に証明されている。
仕方ない、ここは俺が引導を渡してやらないとな───。
◇
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