第14話 横綱不在
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チュートリアルダンジョンを攻略したことにより、元魔王のニートからEランクの依頼が解禁、晴れてウィラのヒモと化した俺だったが、そう簡単に仕事にありつける訳でもなく、低賃金ながらも危険度の少ない依頼は、大抵すぐに締め切られてしまう……その一方で、掲示板に貼り出されたFランクの依頼は、内容的に考えれば高ランク帯レベルにも関わらず、誰でもウェルカム。
Fラン=偏差値の話しかと思えば、この世界においては『Free』のFのことであり、それこそ危険を伴う依頼内容の割に、報酬がとても割安なので人気はなく、初見殺し、あるいは燻っている奴らの腕試し向けとのこと。
しかし、今回の内容は……普通に考えれば国軍を出動させる必要のある治安維持活動、下手すれば戒厳令を敷かれるレベルの話であり、ダンジョンに潜伏した『反魔王派魔獣戦線』の残党もかつては、我がエステライヒ軍の一員でもあり、強硬派に分類される彼らとの思想の違いによって袂を分けた果て、過激派テロリストへと身を落としたものだから……ああ、因縁の決着は、この俺の手にかかっているって訳だ。
報酬に関して物申したいところでもあるから、エステライヒ軍の空軍を依頼主のところに派遣しておくのもありだな。
さて、チュートリアルダンジョンは何度潜っても似たようなものであったが、今回は一味も二味も違う個性的なフロアのお出ましだ。
『No smo KING』
おい、ダンジョンって禁煙か?
ああ、確かに火気厳禁だからな?
しかし、前世でヤニカスだった俺からすれば、『No smoking』の表示を見る度、虫酸が走るって訳でさ、同じく喫煙者だったナギ姐も顔をしかめるぐらいだから気持ちはよくわかるよ?
もっとも、前世で頭を撃ち抜いて異世界へと転生してからと言うもの、ニコチン・タールが抜けたクリーンな身体になったおかげか、たばこを必要としなくなったからさ、とっても健康な毎日を送れるのさ!
正直なところ、1発ヤったあとの一服も欲しいけれど……この世界には、ナチュラルなアメリカンスピリットが存在しないことから、誠に残念な限りである。
これは蛇足であるが、クソチビポメ柴もちょっと変わっていてさ、タバコの匂いのないキスは、少々物足りないと残念がっていた……なんて話題を口にしたら、ウィラに怒られるので黙っておこう。
ともあれ、火気厳禁なダンジョンだけに、禁煙となるのも仕方ないことであろう。
「これ、なんか表記がおかしいんとちゃいますか? ナギ、見てみ?」
「ああ、不自然にスペースが空いているし、まるで相撲レスラーのKINGがいないかのような表記だな?」
おお、『No smo KING』だけに横綱不在ってか?
なかなかユニークなダンジョンと言うか、地面をよく見れば……ハッキョーイな土俵のような魔方陣が描かれている。
おいおい、☆を買ってまでもらおうなんて、八百長的な邪な考えなんてないけれどさ、画面の前の皆さん……この作品が面白いと思ったら、☆をよろしくな! HAHAHA!
ところでさ、土俵的な魔方陣があるってことは……。
「……ウィラさん、ナギさん、私たち三人は女性だから、神聖な土俵に足を踏み入れる訳にはいかない。神様に帰ってもらわないと駄目」
なるほど、そういうしきたりが、この世界においても共通か。
ま、『No smo KING(横綱不在)』ならばなんも問題はない。
強い女性三人の手を借りなくても、元魔王の俺にかかれば、どうにでもなろう───。
◇
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