2ー15.新年会2

「覚えてるか?初めてバンド組んだ日、」


「そりゃあな、俺のタバコデビューも兼ねてたし」


学生時代、バカみたいなことをしていた。ばれなけりゃいいと色んな物に手を出した。


「お前のせいで今もニコチン中毒だよ、どうしてくれるんだよ」


「しらん、止めたのにニコチンもタールもやばいやつをバカスカ吸ったからだろ」


「、、そんだけ逃げたかったんだよ」


重い沈黙が流れる。晴れた冬空に似合わない曇天の深夜のような雰囲気が舞っていた。


「まだ、ベースはやってるんだろ?」


「ああ、一応な。好きな曲は大体出きるようにした」


「ならよかった」


ほんの数回の問答を繰り返す。タバコの煙がベランダに充満する。一方は甘ったるく、一方は異常な煙を放つ。


「、、バンドはやらないのか」


「お前らとも、他のやつともやらないよ。"アイツ"が嫉妬しちまう」


「、、そっか、そりゃあ残念だ」


二本目をてにする古見、俺は残り少ないタバコを眺める。


「なぁ、どうしたらいいかな」


古見は俯いたまま返さない。それでも話し続ける。


「ここ最近、夢をみるんだ。まわりには水に溢れてて、革張りの椅子に座ってる。少しすると、"何か"がやってくるんだ」


チラりとこちらをみる。お互いに目が合う。


「俺のまえにきて、ゆっくり話すんだ。「あと48日」ってな。その数字はどんどん短くなって行くんだよ」


息を飲んだ古見がポツリと言った。


「それが、ただの夢だったらいいな」


「あぁ、本当にな」


今まででもっとも重い静寂が訪れた。廻りに何かいる気がする。ただ、それを打ち明けるほどの勇気も気概もなかった。


「よし、戻るか」


手を叩いて区切りをつける。少しでも気を紛らわそうと、、。


■■


先に戻ったあいつの背中は、ひどく小さく見えた。


「なんでこんなことにね、、」


原因不明の奇病。二重人格由来なのか、それ以前の物か、どこに行っても分からないの一言しか医者はしゃべらなかった。俺と出会う過去に何があったかは分からない。施設に居たらしいが、どんなことをしたかは分からない。


「ま、どんなお前になろうともついていくよ、」


いや、必ず食らいつく、離れろと言ってもて手放さない。そんなことを真っ昼間の冬空に誓い、リビングアイツのいる場所へ戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る