2ー14.新年会1

「「「お邪魔しまーす」」」


「うるさいな、さっさと入れや」


新年早々、騒がしい。が、餅を食って寝るだけの生活をしていた例年よりはましかと思う。スリッパに履きかえさせると、古見が喋りだす。


「あ、もう少ししたら雫も来るから、」


「なんで今居ないんだ?」


「車でメイクしてたよ」


そんなとこにも気を遣うのか、髪は乱雑に乱して寝癖のついたこのバカとは違ってやっぱ礼儀正しいな。


「じゃあ、早くリビングにいってくれ。狂ったファン母さんが待ってるからさ」


「了解ですっと、あと、ギターも持ってきたからな」


「背中みりゃわかるよ」


そう言うとぞろぞろとリビングに入る。


うっすら「サインください」と声が聞こえが、気にしないでおこう。


「あ、柴田さん。お久しぶりです」


「そんな久々じゃないけどね、明けましておめでとう」


「こっちこそ明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」


礼儀正しい。ロックばっか歌ってるやつの妹がこれとは、世の中わからないな。



■■

「で、その時に出場が決まったんですよ」


「なるー、パワーコードってらくだねー」


あれから数時間、出来上がった大人どもは声をあげて武勇伝を語り合い、未成年達はギターの練習に励んでいる。


「こんな騒がしくなるとは思ってなかったな、」


「久々で忘れちまったか?」


独り言を聞いた古見が話しかけてくる。頬が赤く染まり、酒臭い。


「酔っぱらい過ぎだ、少し外出るぞ」


「りょー」


回りに少し席を外すといい、ベランダに出た。二人してライターを取り出し、タバコに火をつける。


「おまえと吸うのは久々だな、悪やってたころ以来かい?」


「、、あぁ、そうだな」


少し明るすぎる空の下、二人の昔語が始まった。

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