2ー8.黄昏るには遅かった

「と、言うわけでこの人の妻で、あなたのお母さんになる「柴田千春」です。よろしくね~」


以前一度あった時と変わらない、老いを感じない肌をもつ目の前の美女が話かけてきた。金咲澪にしっかりと似ている顔立ちはやはり美しく、しかし金咲澪とはまた違う本物の"大人の色気"を持っていた。


「あっ、、はい。えっと、よろしく、、母さん?」


「ん~~~~~、ありがとう~~~~~~~」


「えっちょ、、離し、」


急に抱きついてきた手を振りほどけず、完全に埋もれていた。


「ちょっと、お母さん!、病人にそれは不味いよ」


金咲澪がいいところで止めに入った。お陰で迫り来る胸から離され、なんとか呼吸ができた。にしてもすごかった。多分G寄りのFと言ったところか、、。いや、よくないな。人妻(さっきなった)に対してこの考えはよくないな。


「そうだぞ、"オ・レ・の"だぞ、美人なのはわかるが人妻に手を出すなよ!」


そっち千春さんから出してきたんだろ、こっちは被害者だっての」


「んなもん知るか、俺の嫁によくも!」


「だからなんだ、それを言ったら俺の母さん(さっきなった)、を一人占めしないでくれるかい?」


「はは、一本取られたよ。こりゃ敗けだ」


そう言いながら拍手を始める親父バカ。この勝負?で相手を称えたってなんにもならないのにな、、。


「よし、それじゃあ自己紹介だ。まずは環、頼んだぞ!」


「何でだよ、そこは言い出した父さんがやれよ」


「おう、そうだな。俺は今話題突沸中のミステリー調小説家、柴田カイトだ。本名は柴田開人。この年で49になる。」


「話題突沸じゃあ危ないだろ。沸騰石でもいれてろよ」


軽く冗談をいうと父さんは「それじゃあつまらないだろ」と言って笑い、他二人もクスクスと笑ってくれた。


「じゃあ次は私ね、金咲改めて、柴田千春です。一応社長で~す。年齢は秘密だけど、40代前半とだけ」


「父さん」


「あぁ、言いたいことはわかる」


「「、、わっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっか!!」」


「そんな事ないよ~」と、否定しながらも照れる"母さん"を見て、鼻を伸ばすエロ親父父さん若く見えるが、明らかにそれ以上。頑張れば20代前半にも見える美貌は流石だが、どうして父さんを選んだのだか、、。


「えっと、、じゃあ私が」


そうして金咲(、、、でいいのか?)澪が話し始めた。


「金咲改め、柴田澪です。17歳で、高校生です。、、これでいいのかな?」


「いいよいいよ、じゃあ、最後に」


回りが注目してくる。おくさずに答えた。


「柴田環、20歳、大学生で小説家です。」


父さんがずっこけながらしゃべる。


「真面目かよ!」


「真面目じゃダメかよ」


「いんや?」


「じゃあ、いいじゃんかよ」


外を見ると夕日は沈み、夜が更けようとしていた。ジンジンと痛む脇腹を押さえながら物思いに更けるには少々暗くなりすぎたようだ。

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