2ー5.枯れたモミの木、残り続ける飾り付け

「ソーイやさー、最近敬語にもどってない?」


「いや、そんなこと無いよ。てか、イントネーションおかしくなってますけど、飲み過ぎなんじゃないですか?」


「ほら今も、堅苦しいからもっとフランクにしてくれよ」


「いや、今のは違うでしょ、、」


楽しかったパーティーは終わり、多少面倒な片付けをしていたとき、突然にそんな話題を振られてしまった。昔から相手に敬語を使いがちな性格なこともあり、なかなか抜けなかった。それに、、


「しょうがないじゃん、緊張しちゃうんだから、、。」


「あぁぁ?なんか言ったか」


「か、かんけーないです!!」


ついつい強く当たってしまったが、「そ~」といって鼻唄を歌いながら洗いものを再開した彼を見ると、無駄にかっこいいのが少しムカついていると、。


「明日は友達と遊びに行くんでしょ?早めに寝ときな。」


「んー、おやすみー」


「その調子!、おやすみ~」


■■


「はぁ、、はぁ、、ぁぁ、っつ、」


あんな体験の後、早めに寝る?できるわけがない。首に巻き付けたマフラーからは匂うはずのない彼を感じとれ、こっそり持ってきた彼の使用済み食器を口に入れる。


「はは、散々ヤって混ざっちゃったかな?」


あれから4回ほど致しただろうか、さすがにつかれてしまい、体を横にする。


「へへぇ、、"おかず"一つでこんな捗るとは、」


にやける顔を正そうと表情筋に力を入れる。


「メキ」


部屋の"外"から音がした。一瞬ビックリしたが、すぐにそれは恐怖に変わった。


「え、おと?、、確かこの壁って"防音壁"だったよね、しかもすごくいいやつ」


創作活動のため、なるべく音が必要ないようにと作られたらしいそれは日常生活において明らかなオーバースペックで鬱陶しく思うほどだ。


「メキメキ」


再び音がなる。


「メキ、メキ、メキメキ、メキ」


音は大きくなる。何がなっているのかはわからないが、明らかに「何か」が音をならしている事はわかった。そして、その「何か」が人ではないことも、直感で理解していた。


「、、ドコダ、」


くぐもっていて、大きい、「何か」が、扉を一枚挟んだ先にいる。漠然とした恐怖により呼吸が早くなり、身体から嫌な汗が流れる。咄嗟に布団を頭から被り、小さくまるまる。


「、、チガウ、、ココ、ジャ、ナカッタ」


そう話すと「何か」はメキメキと音を立てながらどこかに消えていった。外に何がいるかはわからなかったが消えて正直ホッとしていた。


「、、ひとまず柴田さんのところに行こう」


安心感がほしかった。「怖い夢を見たから少し一緒にいて欲しい」と言えばきっと暖かいココアでも用意してくれるはずだ。


「あの、柴田さん、、」


彼の部屋のドアをノックするが、返事がない。嫌な予感がして、ドアを開ける。


「、、え?」


窓は開き、12月の冷たい空気が流れた部屋。そこは"藻抜けの殻"だった。

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