14.シラを切るのは「多分」いいこと

「ほら、飯ができたぞ」


「っん、待ってましたー」


一言声をかけると古見バカがまたでかい声で反応した。最近人気になってきたバンドの一人なはずなのに、いくら酒を飲んでいるからと雰囲気が変わりすぎていて疲れる。いや、いつもも同じくらい疲れるのだが、、。


「ちなみにメニューはなんですか?」


「ビーフシチューパイ、雫ちゃんたちもどうぞ」


そう言って渡してみるが二人とも口をあんぐりと開けていた。


「もしかして苦手だった?」


「いや、そんなことはなくて、」


「なんか、お兄ちゃんからは料理上手だって聞いてたけど」


一度目の前に置かれた皿をみて、一言。


「「ここまでとは」」


2人は再び焼きたてのパイが乗った皿をみる。熱々のパイにナイフを入れると、実に美味しそうな匂いかが鼻を通る。2人に至っては目をつぶって香りだけを堪能していた。


「熱いうちに食べちゃいなよー、覚めてもうまいけどさ」


ヤジを飛ばす古見を一睨みし、古見の向かい側に座る。用意したアイスティーを一口飲んだ時、古見が話しかけてきた。


「急だけどさ、お前って彼女いるん?」


口に含んだ物をなんとか流し込み、呼吸を安定させる。


「急にどうしたよ、いや、マジで」


「イヤーね、有名作家さんは色々大変そうだからさ、パートナーはいるのかなって」


「いねーよ、てか忙しくて出きるわけがない」


「ならよかったよ、まだまだお互い独身やな」


「いや悲っし、てか、横に女子がいるのによくそんな会話をぶちこめるな」


「その度胸がなきゃバンドマンやってねーよ」


「そりゃそうか、」


一応横をみてみるが、女子2人は違う会話をしていた。おそらく大丈夫だろう、、。


■■


食事が終わり、古見兄妹を返すときが来た。


「雫ちゃんは、またきてねー」


「えー、おれは?」


「ダメだ、ひとまず酒を抜いたら考えてやる」


「ヘイヘイ、てか柴田、一ついいか?」


少し声色を変えて、古見が話しかけた。「なんだ」と返そうとしたとき、あいつから先に話した。


「最近、"症状"はでたか?」


一瞬ドキッとしたが、直ぐに動揺を隠して話す。


「送った方が良さそうだな、金咲さん、ちょっと2人を送ってくるよ」


「おい、ちょっ、お前」


「バカやってねーで行くぞ」


そう話して急いで玄関を出る。


「なんで急に話すんだよ、、」


相変わらず、"鋭い"奴だ。そう思いながら、古見を車にのせる。一発、首に手刀を喰らわせる。


「次はないからな」


そう、一言だけ呟いて、、。

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