9.夜に潜む黒い陰

料理を食べ終わりデザートを取ろうと動くと、彼女は話しかけてきた。


「あの、1ついいですか?」


「なんだいな、あ、もしかして不味かった?」


「いえ、料理は最高においしかったんですけど、何でこんなもてなしてくれるのかなと」


予想外の事を言われるものだから一瞬意味がわからなかったが、ここは正直に話しておくか。


「おもてなしをしているつもりは無いんだけどな。まぁ、美女の横にいれるとなると、自然と気合いが入っちゃうのかな」


「ふぇ、、」


一言鳴き声をあげると、彼女は真っ赤にした顔を手で隠してしまった。


「そんなお世辞を言ったって何も出ませんよ、、」


「別にお世辞じゃあないよ、かわいい子の前でカッコつけるのは男の常識、てか癖みたいなものだね」


「なんなんですかそれは!というか、かわいいとかあまり言わないでよ、、」


よし、相手の緊張が溶けてきたな。少し踏み込むか。


「口調変わってるよー、」


「あっ」と一言いってから口をおさえる。さっきと違って本気で焦っているようだ。


「職業柄、人が化けの皮を被っているかは直ぐわかるんだ。だから、"俺"の前で皮を被っても意味ないよ。無理にとは言わないから、この家の中ここくらいは楽にすれば?」


「、、わかりまし、、わかった」


「そうそう、そんなんでいいよ。俺に敬語なんてもったいないだけだよ。だいたい、年もあんまり離れてないしね」


「そんなことはない気が、、」


「そんなことあるんだよ、別に人に尊敬されるような人じゃあないしねー」


そう言って今度こそ立ち上がる。何か言いたげな女を黙らせるには、これが一番だと古見も言っていた。


「ま、話しは置いといて、デザートにしようか」


なんの本か忘れたが、夫婦円満の秘訣は口を聞かないことだと紹介していた。だったらこれがいいだろう、「口を聞けなくする」。災いのもとから封じるのが一番だとも紹介していたはずだ。


「うわ、、ワッフルなのにすごいオシャレ、、」


「ならよかった。いつもは父さん一人を相手に作っているから心配だったんだよ、盛り付けが上手く行っているか」


そういいながら、一口食べる。よかった。しっかり美味しい(はず)


「あぁ、すごい美味しいです」


「ならよかった、ゆっくり食べてくれ」


やっぱりデザートはいいな、自分含め緊張をほどいてくれるし、何より気分が楽になる。そんなことを考えながら美味しくデザートワッフルを食べていた。


■■


夕食後、用意してもらったお風呂を頂いてから自室でくつろいでいると、雫から連絡が来た。


「昼間言ってた同居人の人、どっかで見たことあると思ったけど、たしかお兄ちゃんの友達だった気がするよ!


たしかお兄ちゃんと悪やっててかつ、天然女たらしのクズのだったはず!!」


携帯の画面をみて固まっていると、再び着信があった。


「ミオちゃん気をつけてね、どうなるかはわからないけどお兄ちゃん曰く「ネジがぶっ飛んだというよりは初めから無いタイプの狂ったやつ」だって!ホントに気をつけてね!」


「、、、へ?」


頭の中が真っ白になると共に、訳がわからなくなった。あの優しさはなんだったのか。口説くかのような言葉使いはなんだったかのか、、。最初に出た言葉は自分の意識から零れるように口から放たれた。


「この人と一緒に、平和に暮らせるかな、、


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