8.夜の寒さにビーフシチューを
バン、と大きな音が玄関からしてきた。料理中だからなかなか手が離せないがおそらく同居人が帰ってきたのだろう。
「お帰り、」
と一言、数秒の間を空けて
「ただいま、、」
と返事が帰ってくる。ひとまず会話はできるようだ。昼に出掛けるとき見送るのを忘れたから怒っていなければいいのだが、、。少してリビングの扉が開く。そこには、おそらく昨日見た清楚系の可憐な美少女がいるはずだが、、。
「Oh........」
現れたのはダボっとした黒いズボンに黒シャツを着こなし、襟の隙間からはハイネックが垣間見え腕には上着に着ていたであろう革のジャケットを携えている。イヤリングをバチバチにつけながらも本質的なダウナーに雰囲気は崩さない。まさに『かっこいい女の子』のイメージにふさわしい見た目の人が立っていた。
「えっと、どうしたの?」
「いや、うん、昨日とは雰囲気が変わって驚いたただけだよ。あぁ、すごく似合っているから、
なぜか異国語が出てきたが、「あっそうですか、」と言わんばかりに頭を下げてソファーに座るのをみる限り悪い印象はないみたいだ。
「あと二十分くらいで夜ごはんできるから、もう少し待ってね」
「了解てす、ちなみに夜ごはんは何ですか?」
「ビーフシチューとガーリックトースト、あとサラダ。ちょっとしたデザートもあるよ」
そう話すと、彼女は目を明らかにキラキラさせてこちらを見てきた。ビーフシチューが好きなのだろうか、、。そうこうしていると、トースターが鳴った。今さらだが、同棲初日の女の子と初めてのマトモな食事にニンニクを使ったものを出してよかったのか、、。そんなことを気にしながら皿に盛り付ける。
「すまないが、パンとサラダをテーブルに持ってってくれないか?」
「あ、はい。わかりました」
一言声を掛けると、すぐにテキパキ作業を行ってくれた。ありがたい。
「よし、そろそろかな」
そう言って鍋の蓋をあける。
「「おーーー!」」
いつの間にか横にいた彼女は、目の錯覚か先ほどより更にキラキラした雰囲気を持っていた。
「この匂い、悪魔的だ~」
某有名地下賭博漫画の台詞を放つ彼女を背に、皿を戸棚からとりだし、盛り付ける。トロトロに溶けた肉や、スープに溶け込んだ玉ねぎ。普段なら同じ台詞を語っていただろう。
「これもって席に着いてて、今行くから」
盛り付けた皿を手渡しながら言うと、そそくさとテーブルに向かった。いや、どんだけ楽しみにしていたんだ。そんなことを気にしながら自分も席に着く。手を合わせ、一言、
「いただきます。」
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