7ー1、昼下がりの喫茶店にて

通っている高校から程近い喫茶店で、昼下がりの陽気を浴びながらテラスでミルクティーを飲んでいると、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。


「お待たせ、遅くなっちゃってごめんね」


声をかけてきたのは「古見 雫(ふるみ しずく)、私の親友で、よき理解者だ。


「ん、いいよ。5分くらいだし」


「ありがとー"ミオちゃん"、変わりに、パンケーキは私がおごるよ」


「いや、パンケーキはいいかな。朝食べたし」


「え、朝からパンケーキ食べたの?うらやましー」


「うん、昨日から同棲してる人が作ってくれたの。お店みたいにふわふわで、メープルシロップともあってたんだ。しかもソースも多分自作だと思うよ。いちごとブルーベリーの二種類を"好きにかけてね"なんてかいてたし、しかも美味しくて結構かけちゃったよ」


「すごい、食に厳しいミオちゃんがいうんだから、相当美味しいんだろうね」


「うん、お店レベルのご飯が朝から食べれて満足だよ」


実際、あのパンケーキはめちゃくちゃおいしかった。このお店のパンケーキもSNS で隠れた人気をもつお店だけど、それと変わらないくらいおいしかった。しかも、それは"電子レンジをかけたあと"でそのおいしさだ。出来立てはもっと美味しそうだ。


「そーだよ、その同棲相手だよ!なんか有名な小説家なんでしょ?」


「うん、柴田環さんね。ネットて小説を書き始めてたった2年で書籍化、しかも書籍化された本は100万部売れたっていうすごい人だよ」


「たしか、2月に新しい短編集を出すんだっけ?」


「うん、ぶっちゃけると、柴田先生の"ファン"だから、めちゃくちゃ嬉しい」


「いや、一週間でファンになったの?てか、そんなに面白いんだ」


「うん、雫は小説あんまり読まないんだっけ?、だったら4月から先生のデビュー作の「星の降る街、カナリア」のアニメが始まるから、そっちをみたら?なんなら、漫画もあるし、、」


「え、そんなすごい人なんだ。てか、そんなすごい人にパンケーキ作ってもらったんだね」


「というか、ファンでそんなことしてもらったのって私くらいなんじゃ、、」


「そーだよ、すごいじゃん!いや、ほんとにすごいんだよ!世界初だよ!」


世界初、そんな響きに浮かれながら、雫にメニュー表を渡す。どうやらカフェモカとパンケーキを頼むそうだ。私はフレンチトーストを指差し、「私はこれで」と一言だけ言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る