6."朝ちゅん"の方がましだった
「おはようございます」
「うぉぅ、おはようございます」
朝、時刻はまだ7時24分、突然話しかけられて驚いてしまった。普段は父さんがもっと遅くに起きるから朝っぱらから声をかけられたのは久々だった。
「えっと、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫、大丈夫。それより、今コーヒー飲んでるんだけど、君もなんか飲む?」
「えっと、コーヒーは飲めないので紅茶はありますか?」
「ええ、ありますよ。茶葉はなにが好きですか?」
「あればダージリンで、」
「わかりました。すぐに用意しますよ」
そう言ってダージリンの紅茶の缶を取り出し、茶葉をティーバッグに入れる。ケトルに残ったお湯をティーカップに入れる。
「ミルクや砂糖はいれるかい?」
「いえ、ストレートでお願いします」
ダージリンをストレート、随分珍しいタイプだ。(と、言いつつも俺も紅茶は大体ストレートで飲むのだが。)
「できましたよ、ダージリンのストレートです。あとこれはもらいもんですけど、クッキーです。」
「ありがとうございます」
「高校は何時に行けばいいの?」
「今日は授業も部活もないです。というか、今日は日曜日ですよ?」
そうだった。ここ最近は休日だろうと仕事が入り、曜日感覚がほとんどなくなっていた。
「あー、最近忙しくて曜日が完全に抜けてたよ。あ、この後はずっと部屋にいるから何かあったら気軽に呼んでくれ。」
「わかりました。あと、午後に友達と遊びに行きます。場所は、、」
「いや、そこまで言わなくていいよ。それじゃあ、楽しんでね」
そういうと、そそくさとリビングを出る。そして、言い忘れたことを言う。
「あぁ、朝ごはんは冷蔵庫の中に用意しているから。暖めて食べといて。」
一言いうと、そそくさとリビングを出る。今度こそ部屋に戻る。部屋の扉を閉めきると、大きなため息と共にベッドに沈み込んだ。
「反則だろ、あんなん」
声になるかならないかというほど小さい声で呟く。寝起きの女子の破壊力をなめていた。少し寝癖のついた黒髪に「とろんっ」と音かなりそうな瞳、おまけに半開きで指が3本入りそうな無気力な唇。言動はしっかりと敬語を使っていたこともあり、そのギャップがたまらなかった。また、ダボダボの寝間着から垣間見える白い肌は、これ以上なく理性を乱しにくる。
「あんな
そう自分に語りかけ、ベッド横の机に手を掛ける。起き上がり、ベランダのロッキングチェアに腰を掛ける。
「ほんと、大変な事になったな、、"朝ちゅん"で「全部夢でした」とは、なかなかならないな、、」
ため息と、これからの期待を同時に吐く。目の前に広がる空は、寒い息と重なってか、いつもより白く見えた。
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