5.水も呆れる美女を背に

「どうすんだよ、、これから、、、」


頭を抱えながらソファーに座ると、「金咲 澪(かなさき みお)」と名乗る"美少女"が話しかけてきた。


「えっと、大丈夫ですか?」


あぁ、なんてきれいな声なんだ。asmrでもやったら1つの動画あたり高評価が100万件くらい来そう。なんなら耳が孕むとはこの時のための言葉なのかと思った。


「あぁ、大丈夫ですよ。ただあのくそ親父父さんがすべて悪いんですから。あぁぁー、だいたい、息子に一声くらい声をかけろって話だろ、、」


ひとまず冷静になろう。そう思うと余計意識してしまうが、ひとまず落ち着いて落ち着いて、、ヒッヒッフー、、あっ違かった?スー、ハー、スー、ハー、これだこれだ。そんな馬鹿なことをしているとこの"美少女"は再び話かけてくれた。


「えっと、なにも聞かされていないんですか?」


「えぇ、なにも海外に行くってのも今日初めて聞きましたよ。ほんとこちらの確認不足でご迷惑を、、」


「あ、こちらこそすみません。私自身も一週間前に決まった時点で一度挨拶に行くべきでした。」


「そんな、謝らないでください。すべての責任はこちら側にありますから」


特にあのくそ親父くそ親父に、と思ったがこれを口に出すのはやめておいた。


「というか、私の自己紹介がまだでしたね。柴田 環(しばた めぐる)です。もうすぐ20歳になります。あと、小説を出させてもらっています。」


「小説に関してはここに来るまえに拝見しております。どの作品も心情を掴みに来るような展開と、キャラの魅力が引き立っていてちても面白かったです。」


うわぉ、めっちゃまっすぐな目で見てくる。黒い目のはずなのに眩しすぎて灰になりそ~。


「はは、ありがとうございます。」


よーし、落ち着くんだ。脳を並列に使って、、そうだ、二進数だ!親友古見が前に言っていた、二進数を数えると、かの有名な素数よりもさらに落ち着けると、、。ダメだ二進数がわからない!


「えっと、さっき名乗りましたが「金咲 澪(かなさき みお)」です。17歳の高校生です。学校はもとから近くの高校に通っていました」


あ、高校生、、。不味いな、年下好きにはたまらない。


「あー、ありがとうございます。ちなみに、夜食は食べましたか?」


「はい。先ほどいただきました。」


言われてみれば横にあるテーブルにはお皿がある。


「じゃあ、片付けはこちらでやりますので」


「いえ、そんなことまで」


「疲れているでしょうから、今日は休んでください。」


「わかりました。ありがとうございます」


美しいその声は淡々と、抑揚もほぼ無いにも関わらず美しいとしっかり感じた。


「この人と、ちゃんと暮らせるかな、、」


そんな不安を胸に秘め、目の前の階段を上がりきった彼女を背にテーブルの皿を手に取り、食洗機にいれた。

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