1.悪夢

布団を蹴飛ばしながら飛び起きる。時計を見ると時刻は午前5時、背中は汗で濡れており、手を見ると無意識に震えていたようだ。すぐに手首を掴み、うずくまる。そして自分に言い聞かせる。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、、


『自分はしっかり"眠っていた"、

            "踊って"なんかない』


、、少し落ち着いて、呼吸が戻ってくる。


「あん、な、、ところ、は、、二度と行くものか、、、あん、な、、"地獄"に、、」


いやな目覚めだったこともあり、朝から気分は優れないが、もう一度寝る気分にはなれなかった。部屋の扉を開けて、外に出る。廊下をわたり、階段を降りてリビングに向かう。テレビの横にかけている時計は5時36分を指していた。それを確認してリビングからキッチンへ向かう。普段はちゃんとドリップするが、この嫌な気分を早く変えたいため、インスタントコーヒーに手を出す。ケトルの電源をいれている間に、どうせ飲むならと素焼きのアーモンドを皿に移す。


「、、サラミあるかな、、」


冷蔵庫を空けると、義理の父父さんがつまみに買っていたサラミやジャーキー、チーズやピスタチオなどのナッツ類が大量にしまわれており、奥には「絶対飲むな」とかかれた高級ワインやレアなウイスキーが入っていた。


「1ヶ月後にゃ覚悟しとけよ、全部飲んでやらぁ」


冗談じみた言葉を吐いて冷蔵庫の扉を閉じる。後ろに振り向くとそこには義理の父父さん、がいた。


「あぁ、今日はずいぶん早起きだね、いつも日曜は昼間で寝てるのに。」


軽口を叩くと、「まあな、偶然だよ。」と返された。同じような雰囲気で、


「嫌な夢でも見たのか?」


と返された。なにも言わずに背を向けて、コクりとうなずいた。


「そうか、、」


そう一言だけ言って父はカップをもう1つ出した。


「コーヒーに関しては、おまえに作ってもらったほうがうまいからな。あと、これも食べてしまおう。」


そう言って冷蔵庫から生ハムを出すと、サラミと一緒に盛り始めた。


「先にリビングに行くからな。」


そう言うと一人キッチンに残してそそくさと歩いていく。コーヒーをカップに注ぎ、片方には大量に砂糖と牛乳を入れる。


「いま行くよ、」


そう一声かけて自分もリビングへと向かった。

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