sleep waker ~午前2時に、二人きりで~

数多怜悧

0.古い記憶

真っ白い壁に薬剤やアルコールの匂いが染み付いたその部屋で、医者は言った。


「お子さんはおそらく"夢遊病"でしょう。」


「ですが、あんなひどいものなんですか?」


横にいる母はあわただしく聞き返す。その顔は化粧をしていてもわかるくらい疲れきっていて目元には隠しきれない隈ができていた。


「私自身もここまでひどいものはあまり見ないですが、、少なくとも現状を見る限り、それがもっとも有力かと、、」


「これは、治るんでしょうか、、」


「通常は成長と共によくなるのですが、、、ここまでひどいと、、実際はわかりかねないというのが、、現状で、、」


私は訳がわからなかった。しかし、母の顔を見て何かが起きていることは容易に想像できた。


「、、お子さんにとっても、ご家族にとっても、彼を"施設"に向かわせるのがよいかと、、」


医者はなにかを決断したかのようにまえを向く。それに答えるように、なにかを決断したかのように、母は顔を上げて一言、


「お願いします」


そういった。

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