第39破 慎ましやかに爆破する!

 ひゅるるるるるぅ~~~パーン!


 独特な甲高い音を引いて竹の棒が空を飛び、乾いた音を立てて空中で破裂し、白い煙がたなびく。

 木陰の隙間から様子を見ると、空中のマキナが破裂音の方向に身体を向けている。うん、注意は引けている。ダメ押しをしておこう。


 ひゅるるるるるぅ~~~パーン!

 ひゅるるるるるぅ~~~パーン!

 ひゅるるるるるぅ~~~パーン!


 続けて3連射。正確な狙いはつけられないが、およそ同じ方向でまとめられた。マキナの羽に似たバーニアが火を吹き、音源に向かって飛んでいく。続いて、大勢がごとごとと蠢く音が聞こえてきた。


 よしっ、きっちり釣れたようだ。私たちはマキナとは反対の方向に向かって移動を開始した。


「いやー、こんなものの作り方まで知ってるとはさすがはニトロっすね!」

「先端に妙な細工があるが、鏑矢かぶらやの一種だったのか」


 トレードとハイヤーンさんの手には、先ほど飛ばしたものが握られていた。それは竹の棒を削ったもので、先端は笛のように加工してある。それに推進用と発破用のC4を装填し、ロケット花火のように飛ばしたのだ。


 C4の量は少なくしたので、実に慎ましい爆発だ。攻撃を目的としていないのだからこれでいい。


「ふむ、改めて観察すると様々な様式の建物があるのだな」


 広い通りの真ん中で、ハイヤーンさんがこめかみのネジをいじいじしながら辺りを見回す。言う通り、草木で覆われた建物にはあまり統一感がなかったようだ。ある建物はレンガ風、ある建物はコンクリート風、ある建物は鈍い青色の金属で出来ている。


「片っ端から探すしかないんすかねえ。結構な広さがありそうっすけど」

「推計によれば天空城の面積はサウスゲイトの約4倍だそうだ」

「げえっ、そんなの調べるって、一体何日がかりになるんすか……」


 ハイヤーンさんの言葉にトレードの犬耳がぺたりと折れる。あまり滞在できなかったからピンと来ないが、サウスゲイトはあちこちにつながる交易路を持つ街だ。結構な広さに違いない。


 そんなのの4倍となると……東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンの比ではないだろう。そんなバカげた大きさのテーマパークを作り、あまつさえ空に飛ばしちゃうなんて、この世界の古代人は何を考えていたんだろうか。


 だいたい、そんな無闇に広くては移動だって大変だろう。子供でなくても迷子になってしまいそうだ。せめて地図のひとつでもあれば……ん、待てよ、地図?


「あ、あの、看板の跡とか、ないかな?」

「看板? 何のっすか?」

「ち、地図の看板。こういうところには、だいたい地図の看板があったから」

「おお、なるほど、案内板っすね! そういえばニトロの故郷にもテーマパークってのがあったって言ってたっすね!」


 というわけで探すこと十数分、案内板は案外あっさりと見つかった。雑草や蔦に覆われていなければ、探すまでもなく見つかっていただろう。人に見てもらうためにあるのだから見つけやすいのは当然なのだけれども。


 絡んだ蔦を払うと、その下からカラフルな地図が姿を表す。古代の地図って言うと、物々しい象形文字が刻まれたそれっぽいものを想像するけれども、これにはデフォルメされたイラストが散りばめられていた。うーん、雰囲気がない……。


「往時はこの馬車に似たもので移動をしていたのか?」

「この広さを歩いてうろうろなんてできないっすもんねえ」


 ちょっぴりがっくり来ていた私とは裏腹に、ハイヤーンさんとトレードは興味深そうに地図を見ている。その視線の先には空中の線路にぶら下がった箱状の乗り物――モノレールのようなものが描かれていた。


「これが乗り物なら、これを辿っていけば出入り口に行けそうっすかねえ」

「む、なぜそう思う?」

「王都の市馬車を知らないっすか、二階建てのやつ。ああいうのは街の重要な場所な施設を結ぶんすよ」

「ほう、言われてみれば納得できるな」

「自分は冒険商人っすからね! 伊達に見聞は積んでないっすよ!」


 ふふんと薄い胸を反らすトレードの提案に従って、最寄りのモノレール駅を探して探検を再開した。

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