第30破 謎掛けは爆破しない?
地底湖の扉を下った先は石造りの部屋に通じていた。
部屋は五角形で、中央には一抱えもある黒い丸石が台座に乗せて飾ってある。五隅の柱にはコウモリの翼を持ち、威嚇する犬のような顔つきの人型の像が安置されていた。いわゆるガーゴイル像ってやつに似ている。
「水はどこに抜けたんすかねえ。どこも濡れてないっすよ」
「魔法的な仕掛けだろう。地底湖は地下を守るための仕掛けだろうからな。守るべきものをかえって侵すことがないよう設計されていたと考えてよいはずだ」
「守るべきものっすか。この黒曜石の石っころがそうなんすかね? まあ、お宝って言えばお宝っすけど……」
トレードは唇を尖らせて丸石をぺしぺし叩いている。
前世では黒曜石も一応は宝石の仲間ではあったけれど、希少性はなく価格は安かった。そのあたりの価値はこちらでも変わらないようだ。
「それ自体に何らかの魔法が込められているかもしれないし、あるいは本当に価値があるものの場所を隠しているのかもしれない。どれ、小生が調べてみよう」
「台座に碑文と飾りがあるっすよ。古代文字だから読めないっすけど」
「ふむ……どれどれ」
ハイヤーンさんが台座に刻まれた碑文を読み上げる。
内容はこんな感じだった。
【碑文】
我ら
二つに裂くこと
能うは己自身のみ
第二軍は
第四軍は敵諸共に勇壮に散る
第一、第三、第六軍は
第五軍を天覧の戦列に加えし時
玉門は開かれ王座への道が示される
過ち時は第二軍が愚か者に罰を下す
うーん、まったく何のことだかわからない。
けど、いわゆる
「飾りの方には何が書いてあるんすか?」
「ふむ、こちらは序数詞が書いてあるだけだな」
碑文の下には無数の穴が空いていて、そこに小さな黒曜石の玉が嵌められていた。図解するとこんな感じだ。
【台座の飾り】
第一:◉◉◉◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
第三:◉◉◉◉◉◉◉◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
第五:◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
第六:◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◎◎◎
※◉:黒曜石が嵌った穴
◎:空の穴
飾りの下には受け皿があり、そこに同じ大きさの黒曜石の玉がたくさん入っている。受け皿の横にはボタンがあり、全体の形としてはパチンコ台のようになっていた。
「空の穴に玉を詰めろってことっすかね?」
「そうなのだろうが、見当がつかんな……」
「こんなのとりあえずぜんぶ埋めちゃえばいいんじゃないっすか?」
「あっ、こら! 待て!」
トレードが空の穴に次々に玉を詰めていく。
何の取っ掛かりもない状況だし、ひとまず行動するのは間違ってないと思う。とはいえ、万一の備えも必要だ。
失敗したらペナルティがあるとして……王道なのはやっぱり
「よしっ! ぜんぶ埋まったっす。それでこのボタンを押せばいいっすよね」
「そ、そんな拙速にだな……」
――ゲギャギャギャギャギャーッ!!
トレードがボタンを押した瞬間、五隅のガーゴイル像が一斉に動き出し、けたたましい雄叫びを上げる。ばさりばさりとコウモリの羽が羽ばたき始めた。
「ぞ、像が動き始めたっす!?」
「だから言ったではないか! 守護のゴーレムだ!」
「発破ァッ!」
ぼっごぉぉぉおおおん!!✕5
グギャァァァアアアア!?✕5
その瞬間、私はあらかじめ貼り付けておいたC4を一斉に起爆した。ガーゴイルたちは粉微塵に爆発四散する。
「ふう、やっぱりだったなあ」
「み、耳がキーンとするっす……」
「ぬおお……聴覚ナットがきしみそうだ……」
「あ、ご、ごめんなさい……」
し、しまった。予告なしで爆破をしたせいで二人が耳を押さえて悶えている。距離があるから大丈夫だろうと高をくくっていたのだが、閉所だから予想以上に爆音が響いてしまった。
「い、いや、大丈夫っす……。自分こそ勝手に動いて申し訳なかったっす」
「古代遺跡のゴーレム五体を一瞬で破壊するとは……なんとすさまじい……」
どうやら緊急避難ということで許してもらえたようだ。とはいえ、最近は予告なし爆破がちょっと増えているので反省だ。発破の掛け声はしてるけど、他の合図も考えた方がいいかもしれない。
そんなことを考えていたら、台座からぼろぼろと玉が落ちて元の状態に戻った。五隅のガーゴイルも壁にぱかりと穴が空いて補充されている。謎掛けへの挑戦は何度でも可能なようだ。
これなら総当たりでもクリアできそうだけど……。何度もガーゴイルを爆破していたらトレードやハイヤーンさんの耳が持ちそうにない気がする。
穴は思わせぶりにたくさん空いてるけど、『第五軍を天覧の戦列に加えし時』という文言から察するに、ここに黒曜石の玉を詰めればいいと思うんだけど……。
一体、いくつ詰めればいいんだろう?
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【作者より】
更新遅くなりまして申し訳ありません。謎掛けがなかなか思いつかず止まってしまいました(汗
リドルの答えはいくつなのか、よかったら感想コメントなどで予想してみてください!
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