第23話 ハーディアス再び!そして気になる女の子に、2人との熱い夜
「偉大なる炎の精霊よ……我へかの敵を爆砕させし、豪炎の力を与えたまえ……」
丁寧な祝詞に、俺の魔力経路に乗る炎の精霊は、喜びの舞踊をしてみせた。
瞬間、経路が発火し、俺の体が太陽の様な強い熱に包まれた。
「ファイヤーボールっ!」
マグマのように煮えたぎり、灼熱を帯びた炎の球が飛び出した。
それはまっすぐと魔穴の枝道へ吸い込まれてゆく。
「「「「「ギギギギギがやああぁぁぁ!!!!!」」」」」
魔穴の枝道から、悍ましい断末魔が響き、暗色の渦が真っ赤な炎で彩られた。
おかげである程度の魔物は焼き尽くすことができた。
しかし数はまだまだ残っている。
「さて、ではこの次はーーーーっ!?」
『ワタシのチカラがホシイか……?』
急に俺の背後に現れたのは、またしても闇の精霊ハーディアス。
どことなく、ハーディアスから、期待感のようなもの感じられる。
それを見た炎の精霊サラマンダーは"やれやれ"といった雰囲気を醸し出し消えてゆく。
「またお力をお貸しいただけるので……?」
そう問いかけると、ハーディアスは大鎌が上下に振れるほど、何度も大きく頷いてくれる。
相変わらずハーディアスのするこのリアクションは、雰囲気とのギャップがあり、どことなく愛らしさ覚えるのだった。
「では遠慮なく! お力をお貸しください! ハーディアス!」
『イトシイお前にホッセラレルノ、ウレシい……! くくく……クカカカカカ!』
ハーディアスの闇の力で、俺の魔力経路が満たされてゆく。
俺は死と闇、そして破壊を司る偉大な精霊と一体化を成した。
「『さぁ、堕ちろ!
俺とハーディアスは声を重ね、発動の鍵たる言葉を発した。
目下に闇が広がり、そこから無数の手のようなものが現れる。
それらはあらゆる魔物を、物質としては存在しないはずの、魔空の枝道の入り口さえ掴み、そして闇の中へ飲み込んでゆく。
そうしてあっという間に、ハーディアスの闇は、ほとんど全ての魔物を暗黒の中へ落とし込む。
あとは残りの魔物を駆逐し、掃除は完了だ。
「ハーディアス、今少し貴方のお力を!」
『無論……! タノシイナァ……! クカカカカカ……!』
そう発言するハーディアスが妙に可愛く思えてしまう。
皆には恐れられ、扱いづらいと思われているこの精霊だが、案外お茶目で可愛い存在なのかもしれない。
⚫︎⚫︎⚫︎
「あーえー……今回の試験は色々とありましたが、死傷者も出ずなによりです。それではこれから、上位成績者の発表をしまーす」
魔空の枝道騒動はあったが、その後、試験は無事に再開されたのだった。
そして今は、終了のセレモニーの最中である。
「第三位……パル・パ・ルルさん」
万来の拍手に迎えられ、パルが登壇をする。
皆、パルがシフォン人だというのを忘れ、祝福の拍手を贈っている。
「第二位……ピル・パ・ルルさん」
一瞬、ソードライガーに乗っかって登壇するピルを見て、一同は息を呑む。
そりゃ、いきなり獰猛なソードライガーが目の前に現れりゃ、そうなるわな……。
「この子怖くないよー! ねー?」
「フワァァ〜」
ピルがそう言って首の辺りを撫でると、レオパルドくんは欠伸のようなものをして見せる。
なんともその様子が可愛く愛らしく、主に猫好きだろう候補者達からは熱い視線を浴びているのだった。
「そして今回の試験の第一位は……本試験史上最速時間での合格を果たし、魔穴の枝道さえも消滅させた……トーガ・ヒューズさん! みなさん、彼を拍手でお迎えください!」
なんだか、あの職員、妙に俺の時だけ扱いが違うな。
まだ俺に取り入って、自分の株を上げようとしているのだろうか……。
前の人生では絶対浴びることのなかっただろう、拍手と歓声の中、登壇してゆく。
しかし登壇してすぐさま、俺の気持ちは別の方向へと向かってしまう。
グレーの髪をした赤目の神官職の女の子。
幼なじみだった"エマ"にそっくりな、【モニカ】という子は、俺へ一際大きな拍手を贈ってくれているような気がしてならないのだった。
●●●
宿へ戻り、俺は合格認定書を見つめていた。
(これで一応準備は完了した。あとは……)
今後の行く末をベッドに身を投げながら思案していると、部屋の扉がノックされる。
「パルです! ピルも一緒です!」
「とーがさま、あけてぇー」
珍しく姉妹揃っての来訪だった。
「えへへ! トーガ様!」
「とーがさま、ぎゅー!」
「い、いきなりどうしたお前達!?」
扉を開けるなり、パルとピルの2人が俺へ抱きついてくる。
そしてそのまま部屋の奥へグイグイと連れてゆかれ、ベッドへ押し倒されてしまう。
この展開は……まさか!?
「お、おい、2人ともまさか……!?」
「ありがとうございます、トーガ様。あなたのおかげで、姉妹共々、合格を果たし、更に成績上位者という名誉をいただきました。だから、そのお礼をさせてください……!」
「とーがさま、ありがと……もし迷惑じゃなかったら、わたしとお姉ちゃんの気持ち、受け取ってもらえませんか?」
「今夜でその……良いのか? 試験もあって疲れているだろうし、お祝いはまた明日にでも……」
そう躊躇いがちに告げると、パルが妖艶な笑みを浮かべる。
「私たちは全然。むしろ久々に思いっきり野山を駆けて、すごく気分が良いんですよ。まぁ、トーガ様が体力的に無理だ、なんてちょっと可愛いことを仰るなら、無理強いはしませんけど?」
これは明らかに煽りだ。
おじさんの時だったら、無理だったが……今の俺の身体は体力が十分に備わっている10代のもの。
現に今だって、今の俺の身体はパルとピルに明確な反応を示している。
「ありがとう2人とも。なら遠慮なく!」
「トーガ様……」
「とーがさま……」
左右には美しい姉妹がそれぞれ甘い声で囁きかけてきてくれる。
……実際、こんな状況は初めてで、どうしたら良いのかわからない。
しかし迷っていても時間がもったいないのは確かだ。
なら、思うがままにやってみよう。
●●●
(しかし、想像以上に大変だったな、これは……)
これからも、こうした機会は絶対に巡ってくるだろう。
次回に備えて、しっかりと研究をせねばと思う。
「くぅ……すぅ……トーガ様っ……」
「にゃむにゃむ……とーがさま、だぁいすき……」
こちらの苦労などつゆ知らず、パルとピルは俺を左右で挟みつつ、穏やかな寝息を立てている。
(色々と頑張ろう。2人をより幸せにするためにも!)
俺もまた、2人を抱き寄せ、深い眠りに落ちて行くのだった。
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