「ピザ」、独自進化を遂げた日本のピッツァ

 いらっしゃいませ!

 今回のテーマはピザ、つまり「日本のピッツァ」です。


 日本人が「ジャンクフード」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、ピッツァとハンバーガーかもしれません。


 日本では、家庭でピッツァを作る機会はあまり多くありません。

 デリバリーに頼るほうが圧倒的に多いです。

 そしてデリバリー・ピッツァのお店は、新しもの好きの日本人に驚きを与えるメニューをたくさん産み出してきました。


 そんな日本に住むアメリカ人たちから、何度も聞かされた言葉があります。

 曰く。


 日本のピッツァは高すぎる!

 トッピングも変だ!


 はい、私もそう思います!

 とくに私はナポリ・ピッツァ職人だった経験があるので、デリバリー・ピッツァのカタログを見るたびに「面白いなぁ」と感じます。


 でも、どれもとっても美味しいんですよ!

 今日は、そんな日本のピッツァのお話をさせてもらいます。



# 日本のピッツァのルーツはどこ?


 ピッツァの元祖は、言うまでもなくイタリアのナポリです。

 日本でもナポリ・ピッツァは大人気で、ナポリのピッツァ・コンクールでも日本人のピッツァ職人は常連です。

 本格的な薪窯で焼かれる香ばしいマルゲリータやマリナーラを求めて、行列ができることも珍しくありません。


 しかし、大多数の日本人がピッツァと聞いて真っ先に思い出すのは、デリバリー・ピッツァでしょう。

 この場合のピッツァは、ナポリではなくアメリカのピッツァがベースとなっています。



 # 独自進化を遂げた日本のピッツァ


 他のコラムでも何度もお話した通り、日本には本場そのままのものを尊ぶ文化がある反面、それをめちゃくちゃ改造して自分好みにする文化もあり、それらが矛盾なく両立しています。


 だから、中途半端なピッツァ・マルゲリータを作ると「これは本場と違う」と文句を言い出す人(Snob)が現れる一方、テリヤキチキン(Teriyaki Chicken)や明太子(Spicy Cabier)、韓国風の焼き肉(Bulgogi Korean Barbecue)などが乗った、奇妙で美味しいピッツァが喜ばれます。

 マヨネーズやポテト、とうもろこし、海苔なども日本では定番のトッピングですが、これにも驚く外国人は多いようですね。


 でも、もしチャンスがあればぜひトライしてみてください。

 もしかすると、やっぱり「これはピッツァじゃない!」と思われるかもしれませんが、そうした体験も楽しいではありませんか。



 ところで、このコラムでも何度も「Pizza」と表記しています。

 日本では「ピッツァ」と「ピザ」、2つの発音があります。


 エビデンスがあるわけではありませんが、デリバリーのピザは、ピッツァではなくピザということが多い気がします。

 たとえば、夕食にデリバリーを頼む時に「今日はピッツァを頼もうと思うんだけど」と言うことはあまりないと思います。

 アメリカ風のペパロニ・ピッツァや、アレンジの効いたピッツァは大抵「ピザ」と発音されるように思います。

 推測になりますが、アメリカ式のピッツァが一般的だった時代の日本人には「ピッツァ」より「ピザ」のほうが発音しやすかったからだと思います。


 実際、私の義理の母は「ピッツァ」と発音するのが少し難しかったようです。

 子どもたちが遊びに行くと「ピ、ピッツァ」と少しはにかみながら口にしていました。

 かわいいでしょう?


 しかし、2000年ごろから本格的な薪窯焼きのナポリ・ピッツァが市民権を得ていきます。

 こちらに関しては明確に「ピッツァ」と呼ばれます。

「ナポリ・ピザ」とか「ピザ・マルゲリータ」とはあまり言いません。やっぱり「ナポリ・ピッツァ」「ピッツァ・マルゲリータ」のほうがしっくり来ます。


 こうした歴史もあり、日本のピッツァは発音も含めて独自の進化を遂げました。

 でも、良くない方向への独自進化もあります。


 それは、ちょっと高価すぎるということです。


 アメリカではピッツァは日常的な食事ですが、日本においては「ちょっと贅沢なパーティ・フード」というイメージが強いです。


 もっと身近な存在であって欲しいと思います。



# 日本風のピザを作る


 日本では、庭にピザ窯がある家庭はほとんどありません。

 土地が狭いことも理由の一つですが、市街地で薪を燃やすことが消防法で禁止されているのです。


 そんな理由もあって、日本では手作りピザといえばオーブンで焼くのが一般的です。

 ちょっと手間もかかりますし、デリバリーやチルドのピザでも十分に美味しいので、あまり家でピザを焼くのは一般的ではありませんでした。


 でも、ここ数年でようやくピッツァ専用オーブンが出回り始めました。

 フライパンと家庭用ガスバーナーや魚焼きグリル(日本の家庭の台所にはたいてい設置されています)を使ってピザを作るテクニックも良く知られるようになりました。

 ガスやペレットを使うピザ窯も安く手に入るようになりました(私の家の庭にも、小さなペレット式のピザ窯があります)。

 家でピッツァを楽しむ人も、徐々に増えてきています。


 日本人の思い浮かべる「ジャンクフード」の代表として、やっぱりピッツァは欠かせません。

 奇妙で楽しい、風変わりで美味しい日本のピッツァを紹介いたしましょう。


 - 日本のピッツァのレシピはこちら

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