第132話
朝、目を覚ますと、二人が気持ちよさそうに眠っている。
彼女たちの優しさに触れるたび、ふと自分がどれほど恵まれているか、心にしみるように感じる。
クルシュ、ルリ、メイ、アオ。
彼女たちの存在が俺の人生をどれほど豊かにしてくれているかは、言葉では言い尽くせないほどだ。
戦いが続く日々、緊張に満ちた冒険の中で、彼女たちはいつもそばにいて、俺を支え、そして癒してくれる。
その優しさがなければ、俺はきっともっと早くに心が折れていたかもしれない。
シンシアを追うことは自分の義務だと思っていた。だけど、何もなく途方にくれるような戦いよりも、彼女たちが支えてくれる戦いは、今、心も体も支えてくれている。
神殿での戦いが終わり、村での休息をとった後、夜も更けた頃、俺はふと一人静かに考えた。
彼女たちに、俺はどれほどの感謝を伝えていただろうか。戦いの後に労いの言葉を交わすことはあっても、心の底からの感謝を言葉にする機会は少なかったように思う。
「お礼がしたい…」
自然とそんな言葉が口から漏れた。
彼女たちには、いつも助けられてばかりだ。戦いだけじゃなく、日常でも、気づけば彼女たちが俺を支えてくれている。ルリは何かと気配りしてくれて、俺が疲れているときにはさりげなく気遣いの言葉をくれる。
クルシュは戦場で常に頼りになるだけじゃなく、その不器用ながらも真っ直ぐな心が、俺の背中を押してくれる。メイは明るく、無邪気な笑顔で俺の気持ちを軽くしてくれ、アオは一途で純粋な心で俺を癒してくれる。四人それぞれが、俺にとってかけがえのない存在だ。
俺は彼女たちの部屋へと向かうことにした。夜も遅いが、これ以上この気持ちを胸に秘めておくことはできなかった。そっとドアをノックすると、ルリがすぐに応じてくれた。彼女は優しい微笑みを浮かべ、眠る準備を整えた他の三人を起こさないようにと、静かに俺を部屋に招き入れた。
「ご主人様、どうかなさいましたか?」
ルリの小声に頷き、俺は思いを込めて話し始めた。
「みんなに…伝えたいことがあるんだ」
俺の言葉に気づいたのか、メイやアオ、クルシュも静かに目を開け、こちらを見ていた。四人の視線を感じて、俺は一瞬ためらったが、心の底からの感謝を伝えたいという気持ちは揺らがなかった。
「いつもありがとう。俺がここまでやってこれたのは、みんなのおかげだ」
彼女たちの顔を順に見つめながら、言葉を続ける。
「戦いの中で、俺が前を向いて戦えたのは、君たちが支えてくれていたからだ。ルリ、君の温かい気遣いが、俺を何度も救ってくれた。料理にしても、疲れた俺を励ましてくれる言葉にしても、君がいるだけで安心できる。ありがとう」
ルリは少し恥ずかしそうに笑みを浮かべながら、そっと頷いた。
「クルシュ、君の真っ直ぐな姿勢には何度も勇気をもらったよ。君が戦場で前に出てくれるたび、俺は安心して後ろから支援できた。君の強さがなければ、きっと俺はもっと早くに心が折れていた」
クルシュは真剣な表情で俺の言葉を受け止め、静かに頷いてくれた。その表情には、彼女の誇りと信頼がにじんでいるようだった。
「メイ、君の明るい笑顔には、本当に癒されてる。どんな時でも君がそばにいてくれると、重い気持ちが少しだけ軽くなるんだ。君の無邪気さに救われたことが何度もあった。ありがとう」
メイは少し照れたように笑いながら、「ソルトさん…」と小さく呟いた。
「アオ、君の純粋な心に触れるたび、俺も頑張ろうって思える。君が主様って呼んでくれるたび、俺ももっと君のために強くなりたいと思うんだ」
アオは小さく頷き、俺に向かって真っ直ぐな目で微笑んでくれた。
四人に向かって言葉を尽くしたものの、まだ心の中に何かが残っている。感謝の気持ちだけでは、まだ伝えきれない大切な想いがあるように感じた。
「本当に、君たちがいなければ、俺はここまでやってこれなかった。俺にとって、君たちは…ただの仲間以上の存在だ」
静かな部屋の中、彼女たちはじっと俺の言葉に耳を傾けていた。そして、ルリが静かに口を開いた。
「ご主人様、私たちも同じです」
ルリの言葉に続き、クルシュもゆっくりと頷いた。
「ソルト、私たちはみんな、君がいるからここに集まってるんだ。君がいるから、私はもっと強くなりたいって思えるし、君のために戦いたいって思う」
メイも笑顔で頷きながら言葉を続ける。
「ソルトさん、私たちはあなたがいるからこそ、ここにいるんです。ソルトさんが私たちを必要としてくれるから、私たちも全力で応えたいんです」
アオも小さな声で、それでもしっかりとした口調で言葉を重ねる。
「主様、私も主様のそばにいたいの。主様が私を受け入れてくれたから、私はここにいられるの」
彼女たちの言葉が、俺の心に深く響いた。
俺は感謝しているばかりだと思っていたが、彼女たちも俺のそばにいることで安心し、支えられていると感じてくれている。そのことが、俺にとって何よりも嬉しかった。
「ありがとう、みんな。本当に、俺は…君たちに出会えて幸せだ」
俺の言葉に、四人は微笑みを浮かべて頷き、静かに寄り添ってくれた。部屋の中は、温かな静けさに包まれ、互いの心が通じ合っているのを感じた。
「これからも、一緒に冒険を続けよう。俺は君たちを絶対に守る。君たちがいるから、俺も強くなれるんだ」
四人はそれぞれ、「はい」「もちろんです」「当たり前なの!」と微笑みながら返してくれた。
この瞬間、俺たちの絆がさらに強まった気がした。
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