第131話

 ソルトが風呂場での癒しの時間を終え、寝室でゆっくりとしていると、扉がノックされ、そこにはメイとアオが並んで立っていた。


 二人は枕を抱き、その姿はネグリジェを身に纏い、微笑みながらこちらを見つめている。


「ソルトさん、お風呂を上がって、寝巻きに着替えてみましたよ!」

「主様! アオのパジャマ可愛い?」


 メイが少し照れくさそうに笑う。


 その顔は赤らんでいて、彼女の小柄な体にシンプルな寝巻きが良く似合っていた。ルリが準備してくれた寝巻きらしく、二人ともふんわりとした雰囲気が漂っている。


 アオはメイと対照的に高身長でグラマラスな体をしているのに、対応が無邪気で、微笑ましい。


「うん、二人とも似合ってるよ。可愛いな」

「ふふ、ありがとうございます」

「嬉しいの!」


 俺の言葉に、メイはさらに照れて俯き、アオは嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「ソルトさん。今日は、私たちも一緒に寝てもいいですか?」

「主様と一緒に寝たいの!」


 メイが遠慮がちに尋ね、アオの無邪気で、あどけなさを残した表情が可愛らしい。


「もちろん、一緒に寝ようか」


 王都にいる時には、四人とも俺に気を遣ってくれたのか、こうして王都を離れて、別の場所に移動すると甘えてくれる。


 ちょっと気恥ずかしくはあるが、嬉しい気持ちになるのも事実だ。


 二人は嬉しそうにベッドへと駆け寄り、俺を挟むように座った。ふかふかの布団が二人の体を包み込み、眠りの準備が整った。


「今日の冒険は本当に疲れたけど、ソルトさんと一緒にいられてよかったです。やっぱり私たち五人は最高のパーティーですね」

「ああ、メイも索敵ご苦労様、みんなが無事でいられたのは君のおかげだよ」

「ぬふ〜、当然のことをしたまでなのです! でも、もっと褒めてもいいですよ」


 メイが可愛らしく上目遣いに頭を差し出すので、頭を撫でてあげる。


「アオも! アオも!」

「ああ、アオも、相当に強くなったな。エンチャントを付与してからは、アオの素早さが、ゴーストを薙ぎ倒していたな」

「へへへ、嬉しいの! 主様に褒められたの! 私も頭を撫でて欲しいの!」

「ああ、もちろんだ」


 右手にメイ、左手にアオ。


 二人の頭を撫でてやりながら、メイが顔を上げて、キスをしてきた。


「メイ?」

「あれ以来ですね」

「アオも」


 そう言ってメイが離れるとアオもキスをしてきた。


「私たちは、一人一人では、まだまだ半人前です。ソルトさんに頼りにされていないことはわかっています。ですが、女として、二人でソルトさんを満足させて見せます」

「メイ」

「お母さんにたくさんエッチな技術を教えてもらったの!

「ルリが?」


 アオはあまり隠し事ができないので、俺は苦笑いを浮かべてしまう。


 だが、二人だけじゃない。クルシュやルリが俺のことを思ってくれているのが伝わってくる。


「ありがとう、二人とも。今日はみんなのおかげで、無事に終えることができたよ。メイ、アオ」


 俺は二人の名前を呼んでキスのお返しをする。そのままベッドへ倒れ込んだ。


 小ぶりで細身な可愛らしいメイ。肉付きの良いアオの対照的な二人を優しく受け止める。


「まずは、二人に今日の疲れを取るために回復魔法をかけるね。ヒール!」

「ああああ!!」

「んんんん!! 気持ちいいの!」


 二人から艶のある声が漏れて、俺は二人にもう一度キスをした。


 お風呂に入ったのに、二人と眠ると汗が流れる。


 リラックスした空気に包まれ、しばしの間、彼らは静かな夜のひとときを楽しんだ。


 衣類はベッドから落ちて、メイとアオがそれぞれ俺の腕枕で左右に眠っている。


 二人とも満足して、楽しげに微笑んだ。


「今日は、ソルトさんがいっぱい頑張ったから、私たちで幸せにして上げます!」


 メイが軽く手を握りしめ、やる気に満ちた声で言った。それに続いて、アオも頷き、ソルトの肩に優しく手を置く。


「主様、少しでも幸せになってほしいの!」


 俺は驚きながらも、二人の気持ちが嬉しく、素直に任せることにした。


「ありがとう、二人とも。もう少しお願いしようかな」


 メイは俺の肩に指を滑らせ、アオは背中から下半身の筋肉に沿って手を滑らせる。


 二人の手のひらが丁寧に体を癒していくたび、疲れがじわじわと解けていくような感覚が広がっていく。


「ふふ、ソルトさん、ここが少し硬いですね。戦いのときに力が入ってたんでしょうか」


 メイが柔らかい声で問いかけ、ソルトも頷く。


「そうかもな。あのレイスとの戦いは…なかなかの緊張感だったから」

「大丈夫なの、主様。私たちでしっかりとほぐしていくの!」


 アオは優しい声でそう言いながら、少し力を込めていく。


 華奢な手つきだが、その一生懸命さが伝わってきて、俺の心にも温かさが広がった。


「ふふ、どうですか? 気持ちいいですか?」


 メイがソルトの表情を気にしながら尋ねると、ソルトは安心したように微笑んだ。


「ああ、二人の手は本当に優しくて、すごく気持ちいいよ」


 その言葉に、二人は少し誇らしげな表情を浮かべ、さらに気持ちを集中させる。


 メイは丁寧にほぐし、アオは足元に移動して大胆なようで繊細に指先で優しく圧をかけていく。


「これでソルトさんも、もっと元気になれますね」

「うん、メイ、アオ…ありがとう。本当に助かるよ」


 ソルトの心と体が、二人によってじんわりと癒され、疲れがゆっくりと溶けていく。温かく安らかな気持ちに包まれたソルトは、二人の優しい手つきに感謝しながら、静かな夜の癒しのひとときを楽しんだ。

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