第126話

 夜が明けた。昨夜の出来事が頭の中をよぎる。


 ルリとの対話を通して、俺は今まで抑えていた自分の感情や力に気づき、そして何より、自信を取り戻した。


 これから、仲間たちと共に新たな冒険へと踏み出す覚悟を決めた。


 俺は部屋を出ると、屋敷の広間に向かった。


 すでにルリ、クルシュ、メイ、アオが集まっているのが見えた。彼女たちはそれぞれに雑談をしていたが、俺が姿を現すと、一斉にこちらを向き、笑顔を浮かべた。


「おはよう、みんな。ちょっといいかな?」


 俺は少し緊張しながらも、しっかりとした声で挨拶をした。彼女たちは嬉しそうに返事を返してくれる。


「おはようございます、ご主人様」

「ソルトさん、おはようございます」

「主様! おはよう!」

「ソルト、今日は何か特別なことがあるのかしら?」


 アオが少し首をかしげながら尋ねてきた。俺は頷き、彼女たちの前に立って話し始めた。


「今日は少し話をしたいんだけど、いいかな?」

「どうかされましたか? ご主人様?」


「まずは、これまでいろんなことがあったけど、俺についてきてくれてありがとう。今まで自分自身に自信が持てなくて、みんなを引っ張っていく力が足りないと感じていたんだ」


 昨夜、ルリに励ましてもらったおかげで、自信を持つことができた。


「でも、これからはもっと自分の力を信じて、みんなを守り導いていくべきだって思ったんだ」


 ルリが優しく微笑みながら頷いてくれる。その目には、俺を信じているという強い意志が感じられた。


 クルシュも告白してくれた時と同じように、嬉しそうに頷いてくれた。それはメイやアオも同じで、四人から寄せられる信頼の視線に少し照れくさくなってしまう。


「ソルトはいつも私たちを守ってくれていたぞ。今後は自信を持って、リーダーとして導いてほしい」


 クルシュの言葉に、メイも楽しそうに頷く。


「ソルトさん、今更ですよ。十分にリーダーとして頼りにしています。精神的にも肉体的にも、ソルトさんの虜です」


 アオも元気よく手を挙げて同意した。


「主様が決めたことなら、私もついていくの。主様の決断を信じてるから、大丈夫!」


 その言葉を聞き、俺はさらに自信を深めた。今ここにいる彼女たち全員が、俺を信じ、ついてきてくれる。なら、俺には迷うことはない。


「ありがとう、みんな。本当に感謝してる」


 ちょっと感動して、泣きそうになってしまう。


「えっと、今日は一つ提案があるんだ。今日はみんなで一緒に冒険に出ようと思う。俺も一緒に行ってもいいかな?」


「もちろんです、ご主人様」

「ああ、一緒に行こう」

「ソルトさんと一緒の冒険、楽しみです!」

「主様と冒険、嬉しいの!」


 四人が笑顔で返事をしてくれて、俺はもっと広い世界を見て、まだ知らない土地で新しい経験を積もうと決意した。みんなと一緒に、これまで以上に強くなりたい。


 その提案に、彼女たちは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに顔を輝かせた。


「ご主人様と一緒に世界を巡るなんて素敵です。私も全力でお支えします」


 ルリはにっこりと微笑んだ。彼女はいつも俺を支えてくれている。そんなルリがいるなら、どんな困難な冒険でも乗り越えられる。


「私もぜひ、ソルトと共に冒険したいぞ。これからの旅が楽しみだ!」


 クルシュも少し目を輝かせながら頷く。彼女の成長を見てきた俺にとって、クルシュが自信を持って発言してくれることは心強い。


「ソルトさん、どこにでも行きましょう! 新しい場所、たくさん見てみたいです!」


 メイは楽しそうに跳ねながら、まるで子供のような無邪気さで喜びを表していた。アオも少し照れくさそうに微笑んで頷く。


「私も一緒に行くの、主様。今まで以上に強くなって、もっと役に立ちたい!」


 俺は彼女たち全員の顔を見渡して、深く頷いた。


「ありがとう。実は、王家の墓の情報が入ってきたんだ。みんながいてくれれば、どんな場所でも切り抜けられる。これからも一緒に、冒険を続けよう」

「やっとなのですね」

「ああ、その前に調査を重ねたい。みんなの力を借りて、必ず成功させよう」


 俺の言葉に全員が納得してくれる。


「さあ、準備を整えて、新たな冒険に出発しよう!」


 俺は拳を握りしめ、力強く宣言した。そして、彼女たちと共に冒険の第一歩を踏み出すために、準備を始めた。


 情報を持っているミリアさんの元へ向かうことにした。ミリアさんは、古代の遺物や歴史について調べてくれた。


「ミリアさんは信頼できる情報を提供してくれるはずだ。彼女なら」


 ミリアさんが指定した建物だが、中には彼女が集めた古代の遺物や文献が所狭しと並んでいた。


 俺たちが到着すると、ミリアさんはちょうど何かの研究に没頭していたようだ。

 彼女の背中が、机の上に広げられた地図や巻物に覆われている。


「ミリアさん、来たよ。王家の墓について話を聞きたいんだ」


 俺が声をかけると、ミリアさんは顔を上げて微笑んだ。

 彼女は少し乱れた髪を直しながら立ち上がり、俺たちに近づいてきた。


「ソルト君、よく来てくれたわね。ちょうどいいタイミングよ。王家の墓についてやっと調べが終わったところなの」

「本当ですか? それなら助かります!」


 俺は思わず前のめりになる。ミリアさんは冒険者ギルドで一番の美人受付嬢であると同時に高ランク冒険者専属の情報を扱っている。


 彼女の知識は受付で一番になるだけの価値がある。


「もちろん、情報はすべて伝えるけど…その前に、一つお願いがあるの」


 ミリアさんは意味ありげに俺たちを見回し、笑みを浮かべた。


「お願い?」


 俺は首をかしげたが、ミリアさんの言葉に耳を傾けた。


「そう、実は、王家の墓に関する情報をもっと深く掘り下げるために、古い封印を解く儀式が必要なの。その儀式を行うには、私一人ではできない。あなたたちの力が必要なのよ」

「具体的に何をすればいいんですか?」


 ルリが一歩前に出て尋ねると、ミリアさんは指を一本立て、笑みを浮かべた。


「簡単なことよ。古代の力を宿す遺物を集めてきてほしいの。その遺物を使って封印を解けば、王家の墓についての詳細な情報が手に入るわ」

「遺物か…どこにあるんですか?」


 俺は眉をひそめながら尋ねた。古代の遺物となると、危険な場所に隠されていることが多い。


「心配しないで。場所は既に分かっているわ。遺物は三つ必要で、どれもこの近くに眠っているの」


 ミリアさんは机の上にあった地図を広げ、俺たちに場所を指し示した。三か所、それぞれが異なる場所に点在している。


「ここが一つ目の遺物が眠る場所、古代の神殿よ。二つ目は、沼地の奥にある遺跡。そして三つ目は、この山脈のふもとにある洞窟の中に隠されているわ」

「それじゃあ、私たちでその遺物を集めれば、王家の墓の情報が手に入るんですね」


 クルシュが確認すると、ミリアさんはうなずいた。


「そうよ。遺物を集め終わったら、ここに戻ってきてくれれば儀式を始めるわ。そうすれば、王家の墓の正確な位置と、その中に隠されたものの詳細が分かるはず」

「なるほど。よし、みんな、まずは遺物を集めに行こう」


 俺は拳を握り、仲間たちに声をかけた。ルリ、クルシュ、メイ、アオもそれぞれ頷き、冒険の準備を整える。


「それじゃあ、気をつけてね。私はここで待っているわ。遺物を手に入れたら、すぐに戻ってきて」


 ミリアさんが手を振り見送る中、俺たちはまず最初の目的地、古代の神殿へ向かって出発した。

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