第109話
四人との絆を深めることができた俺にとって、怖いものは何もない!
ようやく到着した王都の門をくぐると、広大な街並みが目の前に広がった。
高い石造りの建物が並び、舗装された道には商人や市民、そして冒険者たちが忙しく行き交っている。王都はいつ来てもその活気に圧倒される。
一年ほど離れただけなのに、随分と久しぶりに感じてしまう。
「すごい……本当に立派な街なの!」
アオが目を見開き、感嘆の声を漏らす。彼女にとって、ここまで大きな街に来るのは初めてだろう。他の3人も同様に、目を輝かせながら辺りを見渡していた。
「ソルトさん、これが王都ですかぁ。ほんとに大きいんですね!」
メイも興奮を隠せない様子で、あちこちを見回している。
「ねぇ、ソルトさん! これからどうするんだ?」
クルシュさんも目を色々なところに向けてキラキラと輝かさせて、今にも走り出しそうな勢いだ。
「皆、落ち着いて。まずは俺が案内するから、ゆっくり見て回ろう。ここは広いから、一度に全部見るのは無理だよ。それにしばらくは王都に滞在するつもりだから拠点を見つけよう」
俺は笑いながら彼女たちを落ち着かせる。王都の大きさと活気に圧倒されるのも無理はない。俺も初めて来たときは、同じように驚いたものだ。
あの頃は、シンシアとアーシャの二人を守るために必死だった。
だけど、四人のように王都を楽しんでいる姿を見ていると、こちらも嬉しくなる。
「まずは、冒険者ギルドに行こう。ここが俺たちの活動拠点になる。必要な情報や依頼もここで確認できるし、冒険者にとっては欠かせない場所だ」
そう言って、俺たちは大通りを歩き始めた。商店が立ち並ぶ通りは賑わいを見せ、さまざまな品物が並んでいる。雑貨屋、武器屋、防具屋、食料品店など、何でも揃っている。
「ここが王都の冒険者ギルドだ。俺たちの新しい拠点になる場所だよ。さあ、中に入ろう」
俺たちは元々王都の冒険者ギルドで活動していた。中に足を踏み入れると馴染みのある風景が広がっていた。
広々としたホールには、数多くの掲示板が設置されており、冒険者たちが次々と依頼を確認している。受付には見覚えのある顔があった。
「ミリアさん!」
俺は嬉しそうに声をかけた。彼女は俺の声に気づき、顔を上げて微笑んだ。
「ソルトさん! お帰りなさい」
コーリアスのお祭り以来ミリアさんは、相変わらず双子山を誇っている。
冒険者たちを出迎える王都で一番人気の受付さんだ。
俺にとっても頼りになる協力者だ。
「久しぶりです、ミリアさん。王都にはしばらく滞在する予定なんですが、仲間たちと一緒に過ごせる借家を探しているんです」
俺が事情を話すと、ミリアさんは少し考え込んだ後、にっこりと笑った。
「それなら、ちょうどいい場所がありますよ。ギルドの近くに、しっかりした造りの借家があります。冒険者たちがパーティーで借りれるように大家さんもご理解があります。住むには十分な広さもありますし、きっと気に入ると思います」
彼女の提案に、俺は喜んで感謝の意を表した。
「ありがとうございます、ミリアさん。ぜひその家を見せてもらいたいです」
「こちらこそ、ソルトさんがまた王都で活動してくれるのは嬉しいです。あなたならきっと、この街に貢献してくれると信じていますから」
ミリアさんは鍵と住所を書いた紙を手渡してくれた。
「この鍵を持っていってください。住所も書いてありますし、何かあればいつでもギルドに来てくださいね」
「ありがとうございます、ミリアさん。頼りにしています」
俺たちはギルドを出て、ミリアさんが紹介してくれた借家へと向かった。
到着した家は、広々とした庭と二階建ての建物が特徴的だった。中に入ると、温かみのある家具が揃っており、居心地の良さが感じられる。
「ここが俺たちの新しい住まいだ。どうだ、気に入ったか?」
仲間たちは驚きと喜びの表情を浮かべていた。
「ソルトさん、ここ素敵ですね!」
「ここでまた新しい冒険が始まるの!」
「ここでならお料理を主人様に作ってあげられますね」
「風呂もあるじゃないか!? 凄く良い家だな!」
四人が満足そうにしている声に、俺も笑顔を返した。
「そうだな、これからここが俺たちの拠点になる。まずはゆっくり休んで、明日からまた活動を再開しよう」
俺たちは新しい家を拠点に生活を開始することになった。
シンシアさんが、伝えた王家の墓がどんな意味があるのか、まだミリアさんが集めてくれた情報も聞いていないので、何が待っているのかわからないが、まずは王都での生活を整えることから始める。
「まずは、買い物に行って必要な物を揃えよう」
王都に来るまでの、討伐した魔物の素材なども冒険者ギルドで販売する必要がある。
コーリアスとアザマーンで稼いだお金があるので、5人で暮らしていても数年は余裕で暮らせる費用は持参している。
だからこそ、今回の王都は俺の中でも余裕を持って楽しみにしながら、次なる冒険に向けて準備を進めることにした。
王都での新たな生活が、俺たちにどんな試練と喜びをもたらすのか、それを考えるだけで心が弾んでしまう。
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