第92話

 ズーンと、俺の内心ではライラに対して、物凄い反省と嫌われてしまったことへの悲しさが胸を占めている。


 コーリアス領に来てから、自分でも驚くぐらいに女性に対して好意を寄せてもらうことが多かった。


 今までの俺はシンシアと、アーシャの二人しか女性と接する機会がなかった。

 二人は妹のような存在だったために、シンシアのことを女性として見ながらも自分なりにブレーキをかけていた。


 だから、コーリアス領に来てからも、色々と気を使っている間にたくさんの女性から好意を寄せられるようになった。


 シンシアと一線を超えたことで、女性から受ける気持ちに対して不安になり、ルリによってそれは解消され、ラーナやフレイナなどに好意を寄せられていることを知って、さらにハニー様やミーアからも言い寄られて、勘違いしてモテるのだと天狗になっていた。


 ライラから受けた辛辣な言葉は、冷や水を頭からかけられたような思いだった。


 ライラの言葉は、俺にとっての目覚めだった。


 彼女の厳しい言葉が、俺の天狗になった鼻をへし折り、現実を直視させたんだ。


 彼女から向けられる嫌悪の表情と怯えたような視線。それを思い出すたびに、心が痛む。


 あの瞬間、俺は女性の敵だった。

 これまでの自分の振る舞いがいかに軽率であったかを深く反省してしまう。


「ご主人様、帰られているのですか?」


 ルリが扉をノックして、声をかけてくれる。


「ああ、帰っているよ」

「皆さんと夕食を食べに行こうと思うのですが、どうされますか?」

「いや、俺はいいよ」

「……少し入ってもよろしいですか?」

「ああ」

 

 ルリは何か気になることがあったのか、部屋の中へと入ってきた。


「失礼します」


 そう言って入ってきたルリに顔をあげて笑顔を向ける。


「やぁ、どうかしたのかい?」

「……どうかされましたか?」

「えっ?」

「お顔の色があまりよろしくありません」

「あ〜いや」


 俺はライラの一件を話すべきなのか悩んでしまう。


「ご主人様、私はご主人様よりも年長者です。ご相談してくれれば、良い案を出せると思うのです」

「……ありがとう」


 俺はライラのことを伝えることにした。

 

 回復魔法が強化されたこと、それによってライラに不快な思いをさせてしまったこと、怯えて恐怖を与えてしまったことを伝えた。


 これからはもっと誠実で、紳士的な態度を心がけるように決意したい。


 ライラに対してだけでなく、全ての女性に対して尊敬の念を持って接しよう。

 彼女たちは単なる好意の対象ではなく、一人一人が尊重されるべき存在なんだ。


「ご主人様」

「うん?」

「ご主人様は相変わらず、おバカなぐらいに人が良いのですね」

「えっ!?」


 ルリから言われたことに驚いてしまう。


「良いですか? 女性の心は単純ではありません。嫌い嫌いも好きなうちと言います。ただ、本当に嫌いな相手に対しては、生理的に合わないので、近づきたくないし無関心になってしまうものです。ですが、そのライラさんは自分の体に起きた現象が理解できなくて戸惑っただけではないでしょうか?」

「戸惑っただけ?」

「そうです」


 ルリの言葉にライラの態度を思い浮かべるが、イマイチ俺にはわからない。

 今は彼女に対してきちんと謝り、改めて信頼を築けるよう努力したいと思うだけだ。


「そうなのかな?」

「自信がありませんか?」

「ああ」

「わかりました。少しお待ちください」

「えっ?」


 ルリは、部屋を出ていくと三人に先に行ってくれと伝えて、戻ってきた。


「ルリ?」

「私が自信をつけさせて差し上げます」

「えっ?!」


 そういうとルリは、俺の顔を自分の大きな爆乳へと導いた。

 柔らかくて、良い匂いがする爆乳に顔が埋められて、俺は戸惑いながらを身を委ねてしまう。


「ご主人様はもっとご自身に自信を持ってください。私やラーナ様、そして、シンシアさんもご主人様に心を救われ、身を捧げたいと思ったのです。アオやクルシュさんなどはまだまだ心の成長が追いついていませんが、これからきっとご主人様を好きになることでしょう」


 優しいルリが、耳元から脳へ語りかけるように囁いてくれる言葉は、俺の心を溶かしていくように甘い。


「しかし……」

「ふふ、むしろ、ご主人様は変態紳士への道を歩もうとしております」

「なっ! そんなつもりは!」

「ですが、すべての女性から好かれたいと思うのは、欲張りとだとは思いませんか?」

「あっ!」


 確かにそうなのかもしれない。


 俺はラーナやフレイナに帰ってきて欲しいと言われ、ルリから一生側にいたいと言ってもらえた。


 それだけでもこれまでの自分にとっては奇跡のようなものだ。


 そして、ハニー様からも好いていることを伝えてもらって、浮かれていたんだ。


 彼女たちだけでも十分に、俺には手に余るほどの極上の女性たちだ。


 それをライラさんも含めてすべての女性に好かれると思い込んでいる俺自身がバカなんだ。


 人はどうしても合う合わないがあるのだから、中にはライラさんのように俺を嫌う人も出てくることだろう。


「ふふ、どうやら気持ちが少し軽くなられたようですね」

「あっ、いや。うん、ありがとう。ルリ」

「どういたしまして。ですが、ご褒美が欲しいのです」

「えっ?」

「最近はご主人様はハニー様やミーア様にかまけてばかりで、私たちを蔑ろにしていると思うのです」

「うっ!」

「ですから、今は」


 そう言ってルリが唇を合わせてくる。


 爆乳に捕えられて、キスをしながら甘く耳元で囁かれる。


 そして、ワンピースを着ているルリのスカートの中へ俺は手を入れてしまった。


「ふふ、召し上がれ」


 そう言ってルリは妖艶な笑みを浮かべた。


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 あとがき


 どうも作者のイコです。


 次回更新予定は日曜日です!多分w

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