聖属性ヒーラーは女騎士団の助っ人回復術師をやってます

第90話

　巨大な目玉の魔物が睨みつけるようにこちらを見据えた瞬間、強烈なプレッシャーが周囲に放たれた。

　ミーアと俺は即座に身構え、戦闘態勢に入る。

「ミーア、準備はいいか？」

「もちろんにゃ。あんな奴、すぐにぶっ倒すにゃ」

　俺は聖属性の魔法を手に集め、ミーアは鋭い爪を構える。

　目玉の魔物は、その巨大な眼球をこちらに向けて、目玉が光を放って魔力を放出させる攻撃を仕掛けてきた。

「ホーリーシールド！」

　俺は聖なる防御で目玉の魔力を遮断する。

「エリス、敵を逃さないために結界の強化だ」

「了解しました、マスター」

　エリスが結界を強化して攻撃を防ぎつつ、俺たちは前進する。

　目玉の魔物は次々と魔力波の攻撃を繰り出してくるが、俺の聖属性魔法を突破することはできない。

　こっちは聖属性魔法を使って、回復術師にシーフ、それにタンクまでやってきたんだ。簡単に突破できると思うなよ

「ミーア、今だ！」

「わかったにゃ！」

　ミーアが素早い動きで目玉の魔物の後ろに回り込んで注意を引きつける。

　その間に、俺は聖属性魔法を防御から反射に切り替えて、相手の攻撃を反射する。

「グアアアアアア！！！」

　叫び声をあげて、魔物がこちらを睨みつける。

「よそ見してていいのかにゃ！」

　ミーアは、獣人特有の強化された爪で、背後から巨大な目玉を攻撃してダメージを与える。どうやら寄生型の魔物だったようで、それほど強くはない。

　俺は聖属性魔法で作り出した光の刃を形成して、一気に目玉の魔物に向かって突進する。

「浄化の光よ、悪しき者を滅せよ！」

　巨大な眼球は体から大量の触手を生み出して、俺の突進を阻んだ。

　聖属性魔法の光に魔物は苦悶の声を上げながら、俺を遠ざけるように触手が倒れていた獣人たちを捕まえ始める。

「なっ！」

「こいつ何するつもりにゃ！」

　背後に回っていたミーアが大きく飛び退いて、触手を避けた。

　だが、意識を失っていた獣人の大半は奴の触手に捕えられてしまう。

「何をするつもりだ？！」

　巨大な目玉の魔物が触手で獣人たちのきていた服を溶かして、体に触手を絡めさせて操り始めた。

「体内から操作するだけでなく、直接的に捕まえて操るというのか？！」

　なんて卑猥な光景なんだ！　これは絵面的にヤバいことになるんじゃないか？　

　エリスと数匹のスライムによって弾かれた触手によって、助かった獣人たちを結界の外へと運び出す。

「これ以上、操られる者を増やすわけにはいかない」

「だけど、あれはどうするにゃ？」

「難しいな」

　操られている者たちを盾に取られて、こちらの攻撃が難しくなった。

　魔属性だと思われる巨大な目玉の魔物を消滅させるために、だが、俺たちがどうするのか悩んでいると、巨大な目玉の魔物は触手を捕まえている獣人たちに絡めるだけでなく、体内へと侵食を開始して、寄生する準備に入ってしまう。

「悩んでいる暇はない！」

「わかったにゃ！　多少の犠牲は覚悟するにゃ！」

　手段を選んでいられなくなって、俺は聖なる属性魔法を放つ決意をする。

「私が時間を稼ぐにゃ！」

　ミーアが囮になって迫る触手と短剣で切り裂いていく。

「あいつ！」

　ライラを標的に寄生する速度を始めた巨大な目玉の魔物に対して、ミーアが迫るが追いつかない。

「マスター。任せてください」

　俺の横を通り抜けたエリスが体をスライム化させて、ライラの体に飛び込んだ。

　巨大な目玉の魔物とエンペラースライムのエリスを取り込んだライラ。

　捕まっていた獣人たちが解き放たれる。

「ミーア、他の者たちを結界の外へ！」

「わかったにゃ！」

　エリスを信じて、奴が飛び出してくるタイミングに全てをかける。

「マスター！」

　エリスは巨大な目玉の魔物を体内に取り込んで、ライアの体内から飛び出してきた。

　もしも、今のまま聖属性魔法を放てば、巨大な目玉の魔物を倒せるが、エリスも一緒に！

「信じて！」

　だが、俺の懸念を払拭するように、エリスが俺に魔法を打てという。

　俺がやることは決まっている。

「ああ、信じるぞ！」

　俺は一瞬を見逃さないために、聖属性魔法を放った。

「ホーリークロス！」

　聖属性最大火力で放つ魔法はエリスを飲み込んだ。

　青白い光の放流が消えると、そこには女体化したエリスが立っていた。

「エリス！」

「マスター。信じてくれてありがとう」

　聖属性に染まっているエリスは、俺の攻撃を受けても最小のダメージで済んだ。

　しかし、魔属性であった巨大な目玉の魔物は消滅して姿を消していた。

「ソルト、ありがとうにゃ。本当に助かったにゃ」

　ミーアに感謝しながら俺に抱きついて何度も頬へキスをする。

　周りには触手によって服を溶かされて全裸になった獣人たちが寝たままだ。

　俺は目のやり場に困りながら、愛棒が元気になってしまう罪悪感に目を閉じるのが限界だった。

　♢

　未来のアザマーン領主、ライラが目を覚まし、俺たちに感謝の言葉を述べた。

　彼女の瞳には、戸惑いと恥じらいが見てとれる。

「あなたはソルト？」

「ええ、冒険者ソルトです」

「あなたが助けてくれたのよね？」

「いえ、ミーアですよ」

「嘘、ミーアが教えてくれたもの」

　どこか子供っぽい印象を受けるライラは、ミーアよりも幼い。

「そうですか？　元々は回復術師なんです。体調が悪いところはありませんか？」

「少し気分が悪いぐらい」

「少し回復魔法をかけても？」

「お願いするわ」

「それでは『ヒール』」

　青白い光がライラの体を包み込む。

　だが、それまでの放っていたヒールよりも強力な光が発生して、ライラの体を包みこむ。

「ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンはぁああああああああああああ！！！！！！！」

　なぜか物凄く身悶えて恍惚とした表情をするライラがそこにいた。

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　あとがき

　どうもイコです。

　水曜日と言っていたのですが、思いついてかけたので、投稿します。

　次は日曜日の予定ですが、また書けそうなら早めに投稿しますね。

　季節の変わり目なので、体調にお気をつけてご自愛ください。

　今後もよろしくお願いします(๑>◡<๑)