第88話

 室内は柔らかな灯りに照らされ、静けさの中に微かな緊張感が漂っていた。ふすまが静かに閉じられ、灯りに照らされたハニーの姿は遊女というのに相応しい妖艶さを含んでいた。


 彼女の長い耳が垂れて、着崩された着物は肩が顕になって、豊満な爆乳が溢れ落ちそうだ。


 赤い瞳が潤んでこちらを見つめている。


「ハニー」


 彼女の名前を呼ぶと、妖艶な笑みを浮かべた。


 二人が作り出す雰囲気は、これまでとは違ってこちらが導かれるような。それでいてこちらがリードするような不思議な感覚。


 そっと俺にしなだれかかる彼女の耳にキスをする。


「あん。耳は敏感やねん」

「嫌か?」

「ソルトにされることは嫌やないよ。好きにしたらええ。せやけど、反応せいへんわけにはいかんやろ。好きな男にふれてもらえるんや」


 そういってハニーの指が俺の胸をなぞった。


 俺は彼女の下半身へと手を伸ばして、丸くて柔らかな尻尾へ触れる。

 獣人特有の特徴が、俺をいつもとは違う興奮へと誘う。


「なんや、耳に尻尾って、そないに珍しい?」

「ああ、ハニーの特徴で、とても魅力的だと思う」

「おおきに」


 お礼を言いながらキスをする。


「なんや優しいやね。もっと男はがっついてくるんかとおもっとったわ」

「そういうのが好みかい?」

「紳士さまに任せるよって好きにして」


 ハニーの甘い声が耳に心地よく、しなだれかかった身体を抱き寄せる。

 彼女の香りがふわりと鼻先をくすぐる。


「なら、好きにさせてもらうよ」


 この雰囲気で変態紳士の説明は無粋だな。


「ふふ」


 ハニーは微笑みを浮かべ、彼女の肩に手を回せば肌はひんやりとしていて、その冷たさが妙に心地よかった。


「気に入るかどうかは、これから次第だな」


 ハニーは目を潤ませ、俺の耳元で囁く


「今夜は、ソルトを最高に興奮させたるわ」


 そう言うと、ハニーが俺の腕の中を抜け出して、目の前で着物の帯を外していく。


 はだけた着物の前が外れて、ショーツが現れる。


 蝋燭の灯りだけで照らされたその姿は美しくて見惚れてしまう。


「綺麗だ」

「ふふ、男に見せるん初めてやで。嬉しい?」

「ああ、ハニーの初めての男になれて嬉しい」


 俺は手を伸ばして、ハニーの爆乳に手を埋めていく。


 ゆっくりとだが指先を巧妙に動かして快感を与える。


 指先に快感を増幅させるバフ効果を施しながら、ゆっくりと丁寧にハニーを刺激していく。


 ハニーの息が荒くなって、彼女の体をゆっくりと弄んでいく。


「慣れすぎちゃう? そんなに経験積んだん?」

「いいや、それほどだ」

「それにしても気持ち良すぎひん?」


 顔を悪して、トロトロの笑顔を浮かべるハニーは物欲しそうな顔をする


「聖属性には無限の可能性があるだけだ」

「なんやそれ? 聖属性やなくて、それなら《性》属性やん。変態やな」


 彼女の挑発的な言葉に、俺は笑みを浮かべる。


 ハニーの兎の耳を持ち上げて囁いた。


「君を興奮させるために変態紳士になったんだ。さあ、始めようか」


 俺もまたハニーに向けて挑発的な笑みを浮かべ、彼女の手を引いて着物を脱がせた。


 布団に彼女を寝かせて、蝋燭の火を消してしまう。


 ここからは月明かりに照らされた彼女の姿だけが映し出される。


「ふふ、さすが変態紳士さまやな。もっと楽しませてや」


 彼女の声は甘く、しかしその中には一層の興奮が込められていた。

 俺は彼女の誘いに乗り、さらに大胆な行動に出る。


 今夜は変態紳士の兎狩りだ。


 他の者たちとは違う新たな興奮が、夜の静けさを破り、二人の世界を一層深く結びつける。


 ♢


《sideハニー》


 目を覚ましたウチはソルトの腕の中で眠っとった。

 

 なんやろな。もっと嫌なことやとホンマは思っとった。

 男と肌を重ねる。

 それを商売にして、客を呼んでいる以上は割り切って商売やと思っとった。


 せやけど、ウチは今幸福やと思ってしまっとる。


 好きな男に抱かれて、肌を合わせることがこんなにも幸せでええことやと知らんかった。


 もちろん、世の中には嫌な奴はなんぼでもおる。


 獣人は特に鼻が効くから、匂いで男を嫌やと判断してしまう。


 フィーリングみたいなもんやろな。


 ええ匂いやと思える相手を好きになる。


 ソルトは初めて会った時からええ匂いがした。

 せやから、ソルトの側におるんがごっつ幸せで好きや。


 まさかウチがこないな気持ちになる日が来るとは思いもしいひんかった。


 なぁ、ソルト。


 あんたはたくさんの女を侍らせとる。


 きっとウチは一緒にはいかれへん。

 せやけど、あんたのことが好きやんねん。


 ホンマにずっとウチの側にいて、ウチの旦那になって欲しい。


 絶対に無理やってわかっとるけど我儘言いたくなってまうわ。

 

 ウチは物凄く寂しがりややからな。


 ほったらかしにしたら承知せいへん。


 そん時は追いかけて行って、家族になるんや。


 子供もたくさん作って、幸せにしてもらう。


 泣き寝入りは絶対にせいへんよ! 絶対にウチが幸せにしたるからな。


「おい、聞いとるんか」


 寝とるソルトにキスをする。


 せやけど、これはウチの心だけの話や、本人を縛るつもりはあらへん。

 そういう男を好きになったウチの問題やからな。


「あんまりほったらかししとったら、他の男作ったるからな」


 もう一度キスをして、ウチは幸せなこの時間にニヤニヤしてまう。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 お知らせです。


 来週から忙しくなるので、こちらの作品投稿を水曜と日曜に固定しようと思います。ですので、明日は休んで次の話は日曜日です。


 新作江戸時代で藩経営、可愛い姫様の教育は推し活です。は来週いっぱい毎日投稿をする予定です。よければ読んでみてくださいね(๑>◡<๑)


 皆さんの忙しい日々に少しでも癒しと、暇つぶしになれば幸いです。


 どうぞ今後もよろしくお願いします(๑>◡<๑)

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