第86話
事件解決まで走り回っていたことで、疲れて眠りについていた俺が目を覚ますとプルプルで弾力ある心地よい感触が手に感じられる。
「うん?」
最近は、肉感がある人肌の温もりにも慣れて、またかと思って手に役得感を味わおうと思ったが、その弾力はひんやりとしていて温かみを感じられない。
「んん?」
眠い目を擦りながら手の中を見て見れば、小さくて白いスライムが収まっていた。
「えっ?!」
そして、隣には女体化して、爆乳を曝け出しているエリスが寝ていた。
「え〜と、どういう状況だ?」
エリス以外にも数体のスライムが周りで寝ていた。
どうやら、昨日の事件で助けたスライムたちが、全て俺のテイムモンスターになったようだ。
「わけがわからないが、スライムテイマーになったのか?」
異常にスライムばかりに懐かれるので、不思議に思うがとりあえずは目を覚まして、出かける準備に入る。
エリスも体を起こして俺をみた。
「マスター?」
「今日はルリと留守番をしておいてくれ。俺はハニー様へ報告に行ってくる」
「はい!」
準備もそこそこに部屋から出れば、ルリや他の者たちも出かけるところだった。
「うん? みんなどこかに行くのか?」
「ご主人様、目が覚めたのですね。体調はいかがですか?」
どうやら俺が仕事で走り回っていたから気を遣ってくれていたらしい。
ルリが心配して聞いてくれるが、他の三人も心配している顔が窺える。
「大丈夫だ。昨日は気持ち良い睡眠が取れたみたいで、今日は凄く体が軽いんだ。それにこちらの事件は解決したから、何かあったなら付き合うぞ」
「あまり働きすぎないようにお願いします」
ルリの言葉に三人が頷くが、四人の相手をしていないことも申し訳ない。
せっかく冒険者としてパーティーを組んだのに、俺だけ別行動をとってしまっているからだ。
「大丈夫だよ。それよりも冒険者の仕事か?」
「はい。なんでも街道沿いに奇妙な一団が現れて、ミーア様も駆り出されているそうなのです。それに協力しようと思っています」
「そうか、ミーアも忙しそうだな。わかった。報告は夜に行けばいい。手伝うよ」
「ありがとうございます」
俺はエリスに声をかけて、六人でダウトの街からアザマーン領の街道に向かう。
「そっちに行ったにゃ!」
街道では、ミーアが陣頭指揮をとって数名の冒険者が走り回っていた。
「ミーア」
「うん? あっ! ソルトにゃ! 久しぶりにゃ!」
「ああ、久しぶりだな。今日は仕事の手伝いに来たんだ」
「そうにゃ! 助かるにゃ! うんんん? ソルト! DTじゃなくなっているにゃ! ミーアのサービスを受けるにゃ?」
可愛く首を傾げるミーアに苦笑いを浮かべてしまう。
仕事中でも、この雰囲気を崩さないミーアは流石だな。
「いや、今は仕事だろ」
「にゃはは。DTじゃなくてもソルトは変わらないにゃ。う〜ん、今回の依頼は特殊なのにゃ」
「特殊?」
「そうにゃ。保護がメインなのにゃ」
「保護?」
「見て欲しいにゃ」
そう言われて視線の先には素早く動き回る獣人たちが分散して逃げていく。
「獣人なのか?」
「そうにゃ。盗賊とはではないにゃ。ただ、ちょっと厄介なのにゃ」
「うん?」
「どうにも自らの意思がないというか、混乱状態のような、とにかく難しい状態なのにゃ」
つまりは、獣人たちが何かしらの原因で、意識を失いながらも襲撃を仕掛けてくる。それをミーアたちは捕まえて保護したいということだった。
まぁこういうことは俺の得意な分野だ。
「なら、俺に任せてくれるか?」
「良いのかにゃ?」
「ああ」
ミーアに話を聞いた俺は早速作戦を仲間たちに伝えていく。
「なるほど、そういう仕事だったのですね」
「私たちはどうするのだ?」
「アオが捕まえるの?」
「風魔法で追い込みも可能です!」
四人に俺が考えた作戦を実行してもらうことにして、それぞれの役割を説明していく。
獣人たちは意識を持たずにこちらに襲いかかってくる。
動きは早いかもしれないが、そこまで複雑な動きができるとは思えない。
だからこそ、彼女たちの力を借りれば、簡単に解決できるはずだ。
アオとルリの機動力で獣人たちを追い込んでもらい。
メイの風魔法と逃げ場を奪いながら囲い込んでいく。
クルシュさんには追い込んだ獣人たちを逃さないように待ち構えてもらい。
エリスとスライムたちにはクルシュさんの補助をしてもらった。
全員が獣人を囲い込んだところで、俺が結界を張って「ヒーリング!」獣人たちの意識を刈り取った。
意識を奪った獣人はミーアさんに預けて、俺たちは次の相手を同じ要領で集めて捕獲していく。
30名ほどの獣人を捕えることができた。
「ミーア、どうですか?」
「ありがとうにゃ」
「それで? こいつらはなんなんですか?」
「あ〜、ちょっと訳ありにゃ。アザマーン内で捜索願いが出ていた一団にゃ」
「捜索願い?」
「そうにゃ、今回の件は内密に頼むにゃ」
ミーアが上目遣いに口に一本指を立てて、内緒というので、俺たちは今回の捕獲作戦で捕まえた者たちをミーアに預けて、そのまま立ち去ることにした。
「よろしかったのですか?」
「まぁ、領地で起きている問題にあまり口を出さないというのは、冒険者にとって暗黙のルールだからね。それよりも朝食を食べ損ねているんだ。みんなでランチに行こう」
「やった〜! ご飯嬉しいの!」
アオの喜びで和みはしたが、ミーアは誤魔化していたが、真剣な顔をしていたから何かあると感じてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます