第74話

 あれ〜どうして、こうなったんだろう? 途中までは覚えている。


 だが、途中からは祭の祝い酒だと思って飲み過ぎてしまった。


 記憶がない。


 少し酔いを冷まそうと思って、トイレに立って水を飲み戻ってきて意識が戻った。


 だけど、フレイナ様がテーブルの上に部屋のカギを置いていた。


「実は、ホテルの部屋をとってあるんだ。ソルト殿が頷いてくれてよかった」


 俺は何に同意したんだ? フレイナ様と一緒に酔う約束をしたところまでは覚えているが、それ以上の記憶がない。


「あなたが前に泊まっていたスイートルームの部屋を取った。この間みたいな気遣いはいらないぞ。恥ずかしい話だが、私はこういうことに疎い。あなたへ気を許した理由としては、ラーナ様から聞いてしまったんだ」

「聞いてしまった?」


 ラーナは昨日のことをフレイナ様に話したのだろうか? いったい何を話したのか、めちゃくちゃ気になる。


 俺も変態紳士であろうと色々頑張ったが、なんて言われたんだ?


「ふふ、君は経験豊富な変態紳士なのだろ?」


 ちょっと待て! 確かに変態紳士であることはラーナに伝えた。

 だが、経験豊富なんて一度も言ってない!


 むしろ、この三日間で三人の女性とそういう関係になってしまったばかりの初心者です。


「ラーナ様が、ソルト殿には他にも女性がたくさんいることだろうから、正妻としては望まない。ただ、出来ることならば子を授けてくれるだけでいいとラーナ様はおっしゃっていた」


 ……女性同士ってそんな話をするんですね。


 夫として望まれないのは、ちょっと悲しいと思うのは俺だけなのだろうか? しかもたくさんの女性なんて知りません。


 強引に襲われたシンシアと、優しく手ほどきをしてくれたルリだけです。


「私はそれも望まぬ。女性として初めてを、経験豊富で好意が持てるソルト殿にお願いしたいだけなのだ」

 

 話の流れでなんとなく察しはついた。


 ホテルのスイートルームの鍵、経験豊富だと誤解された俺、女性としての初めて。


 フレイナ様ほどの魅力的な女性に頼られて、断れるはずがない。


「わかりました。フレイナ様の期待に添えるのかわかりませんが、俺も男です。美しく可愛い女性に頼られて悪い気はしません」

「美しくて可愛いって! そんなことを言うのはソルト殿ぐらいだ。それと……この場だけでもいい。私のことはフレイナと呼び捨てにしてくれ」

「ならば、俺のこともソルトと呼んでください」

「わかった」


 ここからは俺が彼女をエスコートしなくてはいけないな。


 彼女は女性として扱われることを望んでいる。

 

「それじゃフレイナ、行こうか」


 ラウンジの料金を払い、カギを持ってフレイナに手を差し出した。


「えっ? いや、ここの払いは私が」

「いいや、先にホテルの部屋を取ってくれたんだ。これぐらいはさせてくれ。それに今日は」


 俺はそっとフレイナの耳元に顔を近づける。


「君は俺の女だ。男としてメンツを立ててくれないか?」

「そっ、そう言うことなら」


 そう言って俺の手を取ったフレイナを立たせて、俺たちは手を繋いだままスイートルームへ向かった。

 フレイナは、部屋に向かっている間、恥ずかしそうに手を見つめて無言だった。


 部屋に入って俺は前に過ごしていた流れで風呂に向かってしまう。


「お風呂に入るのか?」


 フレイナをエスコートして、自然に風呂が溜まっていることを確認していた。


「ああ、そうだな」

「ならば服を脱いだ方がいいか?」

「待ってくれ」

「どうした?」


 可愛いと言った時や、手を繋いだ時は恥じらいがあるが、肌を見せることや服を脱ぐことには恥じらいがない。


 きっと兄であるガイン殿などの男性と過ごす時間が長くて疎くなっているのだろう。


 そういう行為が男性をその気にさせている自覚すらない。


 だからこそ、俺が変態紳士として彼女に教えることは決まっている。


「フレイナ、君のことは全て俺がする」

「ソルトが私のことをする?」


 意味がわからなくて首を傾げるフレイナに、俺は近づいて彼女が来ている服に手をかけた。


 脱がすわけではない、そっと触れるだけだ。


「んん。脱がすのではないのか?」

「ああ、フレイナ。あなたは自分が女であることを自覚していない」

「なっ! そんなことはない! 私は女で」


 フレイナの言葉を遮るように俺は彼女の首筋にキスをする。


「なっ!?」

 

 俺の行動に驚いて、首を抑えて逃げようとするが、今度は、彼女の体にヒーリングをかけて体を弛緩させる。


「うっ」

「男は、好きな女の肌ならば、どこを見ても興奮するのだ」

「何を言っている?」

「胸が好きな男、お尻が好きな男、足が好きな男、顔が好きだと言う男。結局、それらは後付けだ。好きな女にその特徴がついていただけだ」


 俺は自らの指先に聖属性の魔法を付与して、フレイナの肌を滑らせるように見えている場所に触れていく。


「んん、くすぐったいじゃないか」

「本当にそうか?」

「えっ?」

「今日のフレイナはラーナを守るために、パンツスーツを着ているから露出が少ない」


 それでも鍛えられた腹部や、腕は動きやすいように見えている。


「あなたが恥ずかしく思っていない場所でも、俺はあなたの肌を見るだけで興奮してしまう」

「なっ!? なんだか、変態すぎないか?」

「そうです! それが変態紳士である俺です」


 今回は、紳士の部分を強調するんじゃない。


 変態の部分を強調することで、フレイナに羞恥心を持ってもらう。


「これからあなたは男という変態を味わうことになる。それを知る夜を味わってください」

「そんなことを望んだ覚えはないが、全く、貴殿には驚かされてばかりだ。だが、貴殿の言うことならば信じよう。この身、任せる。私を幸せにしてくれ」

「それはもちろん、極上の一晩と、あなたが女性であることをたっぷりと教えて差し上げます」


 俺はフレイナを必要以上に女性として、扱うことを決めた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 落ちていたランキングが皆さんのおかげでまた浮上しました。


 ドラノベランキング13位

 総合週間ランキング47位

 異世界週間ランキング30位


 になれました。本当にありがとうございます。

 本日もご協力よろしくお願いします。

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