第67話
俺は聖属性の力を高めるために集中する。
デスヘドロスライムは部屋全体に広がっていく動きを見せる。
その腐敗臭と共に、暗く重い雰囲気がさらに増していく。
「オーバーオール! ルリ、アオ、頼んだぞ」
俺は二人に全能力向上の聖属性魔法をかける。
ルリとアオは即座に動き出し、スライムの触手をかわしながら距離を取る。
アオの俊敏さは見事で、触手が届く前に回避してデスヘドロスライムのヘイトを貯めていく。
ルリはハルバートを駆使して、触手を切り裂いて防御を固めて俺を守る動きを見せた。
「ご主人様、我々が止めている間に浄化をお願いします!」
ルリの声が響く。
俺は集中して聖属性の魔力をかき集めると、空気が光を帯び始める。
青白いエネルギーが溢れ出す。
デスヘドロスライムは触手を伸ばし、攻撃を繰り出すが、アオがその攻撃を引き受けながら華麗に舞うようにかわす。
「ハァハァ! 主人様には私が守るの!!」
触手だけでなく、冷気がアオのメイド服を凍らせて動きを鈍らせる。
だが、アオはメイド服が砕けようとも、氷を砕いて避け続ける。
だが、冷気によって部屋の温度が下がって動きが鈍くなっていく。
ルリもまた、俺の前で身動きが取れないまま冷気を浴び続けることで、その体は固まってハルバートを振り回すことで、防波堤としての役目を続けていた。
「浄化の光よ、闇を祓え! キリエエレイソン」
俺の声と共に、強力な聖魔法が放たれる。
青白い光が部屋全体を照らし、デスヘドロスライムに直撃する。
スライムは叫び声を上げ、腐敗臭を放っていた体が縮んでいく。
死属性の浄化は成された! 部屋全体に包み込んでいた冷気も浄化していく。
「アオ! ルリ! 今だ! セイクリッドクロス」
俺は、聖属性拘束魔法でスライムの動きを制限する。
そこにハルバートを持ったルリと、走り回ってデスヘドロスライムを惹きつけていたアオが飛びかかる。
俺はさらに集中し、聖属性の力を増幅させる。
完全に腐敗を浄化できていなかったデスヘドロスライムが再び体を膨らませようとしている。
俺はそれを許さない。
「これで終わりだ! インディグネーション」
俺は最後の力を振り絞り、聖魔法を最大火力で発揮する。
眩しい光が部屋全体を包み込み、デスヘドロスライムの体が小さなスライムに戻った。
腐敗臭も完全に消え去り、静寂が戻った。
「やった……」
俺は肩の力を抜き、深呼吸をする。
霧も晴れてルリとアオも疲れた表情を見せながら、微笑んでいる。
「ご主人様、素晴らしい浄化でした」
「うん、主人様! すごいの!」
二人の笑顔で勝利を喜んで抱きついてきた。
戦闘によって、アオのメイド服は上半身だけになって下はパンツだけ。
ルリも俺を守るためにメイド服の全面部分が全てなくなって、ブラとショーツが顕になっている。
俺はアオにローブを、ルリに着ていた上着を渡した。
「ありがとうございます」
「ありがとうなの」
「ああ、まだスライムが残っているな」
「殺しますか?」
「いや、ちょっと確認したいことがある」
先ほどまでは死属性として、真っ黒だったスライムは青白い光を放っていた。
それは俺が放った聖属性の魔力のようで、近づいてみる。
「キュピ?」
かなり小さくなったスライムを突いてみれば、返事をして反応を返した。
スライムをヒールで回復させると気持ちよさそうに鳴いている。
「お前も来るか?」
「キュピ!」
スライムは俺の呼びかけに応じるように小さな体を俺の肩へ乗せた。
「よろしいのですか?」
「ああ、聖属性に染まったスライムは珍しいからな。死属性を吸収することで、吸収の力を強めたのかもな」
「そんなことがあるのですね」
「スライムも仲間にしてしまうご主人様凄いの!」
二人も服を工夫して、恥ずかしい姿を隠してくれたので、俺たちは下水道を後にする。
「さて、ラーナ様たちの方がどうなっているだろうな?」
「騎士団の皆様が対処してくれていると思うのですが」
街に戻ると、霧はすでに薄れ始めていた。
だが、警戒を怠るわけにはいかない。
ラーナ様たちの元に戻り、全てが無事であることを確認する必要がある。
俺たちは足早に屋敷へ向かった。
「ソルトさん!」
屋敷に戻ると、メイが迎えてくれる。
「メイ、大丈夫か?」
メイは傷を負っていて、俺はすぐにヒールをかけてやる。
「んんはぁ!」
艶かしい息を吐くメイだが、どうやら回復してくれたようだ。
「もう大丈夫です。ありがとうございます」
「よかった。それでラーナ様は?」
「霧の発生と同時に不審な動きがあって、そのまま行方がわからないのです」
やはり、霧は誘導だったようだな。
俺たちは急いでラーナ様がおられる元へ向かう。
「ラーナ様!」
扉を開いた先に、広がっていたのは屋敷の扉が破壊されて外の景色だった。
「クルシュさん!」
「ソルト殿、すまない。衝撃で吹き飛ばされて動くことができなかった」
フレイナ様の姿がなく、壁の破壊によって、クルシュさんが倒れて部屋の中に残っていた。
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あとがき
どうも作者のイコです。
体調不良のため、執筆が上手くできなくなっております。
少しずつ執筆をしながらリハビリをしております。
頭がボーとして、考えがまとまらないという症状です(^◇^;)
更新が不定期になったり、出来ない状態に陥っております。
あまり頑張り過ぎてはいけないということなので、ゆっくりと休みながら執筆できる時にしていきます。
どうぞ、今後もよろしくお願いします。
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