第55話
ミリアさんに抱きつかれて、猛烈に目を引く双子山の胸部が俺の腹に当たって、心地よい感触を味わってしまう。
「久しぶりね、ソルトさん」
王都で一番の美人受付嬢と言えば、ミリアさんというほどに有名な方です。
俺も王都にいるときはお世話になっていて、だけどどうしてミリアさんが?
「ミリアさん、どうしてここに?」
「決まっているじゃないですか! ソルトさんに会いにですよ」
「えっ?」
「ふふ、冗談です」
「冗談?」
そう言って抱きついていたのをそっと離れてくれる。
双子山の胸部が離れていくのは名残惜しいが、俺とミリアさんの間にルリが割り込む。アオも同じように俺の前に立ちはだかった。
「我々のご主人様に気安く触らないでいただきたいです」
「そうなの! 突然、抱きついていいのはアオだけなの」
いや、アオもやめておこうな。ビックリするから。
「む〜! ソルトさん、もう新しい仲間を見つけたんですか?! トワからは第四騎士団だけだって聞いてたのに!」
再会を喜びたいところではあるが、まずはルリとアオの誤解をなんとかしないとな。
「二人とも落ち着いてくれ。彼女は王都の冒険者ギルドで受付をしているミリアさんで、俺もお世話になっていた人なんだ」
「お知り合いなのはなんとなくわかります。ですが、お久しぶりに会うのに馴れ馴れしすぎませんか?」
ルリは俺を守ろうと思って怒ってくれているんだろうな。
「すみませんすみません。ソルトさん、ミリア姉さんが、ご迷惑をおかけしました! ミリア姉さん、勝手に動かないでってお願いしたじゃないですか?!」
「もう、トワはうるさいわね」
トワさんは、赤茶色の髪を頭の上で束ねたお団子ヘアーに、メガネをかけた知的美人なので、ミリアさんとは雰囲気が違うのだが、造形は確かに似ているように思える。
どっちも美人で、どっちも立派な双子山をお持ちなのは変わりない。
「ソルトさんに迷惑をかけないでくださいって言ったじゃないですか!」
「別に迷惑かけてないわよ! ねぇ、ソルトさん!」
「えっ! まぁ、役得ではありましたね」
俺はお腹に当たっていたOPの感触を思い出してしまう。
「ほら、ソルトさんも満更でもないじゃない」
「そういうことではありません。それに、ソルトさんのお仲間の方々ですね。姉がご迷惑をおかけしました」
「我々もご主人様を差し置いて出過ぎた真似をしました」
トワさんの登場によって、ルリも冷静になってくれたようだ。
俺は改めて、仕事の報告と、ルリとアオの紹介をすることができる。
「まずは仕事の報告をしたいんだけどいいかな?」
「かしこまりました。すでにダウトの街で報告はされているのと、冒険者登録もされているので、こちらでは帰還時に討伐していただいた魔物の買取ですね」
トワさんがテキパキと受付業務を行ってくれるので、俺は魔物の解体を待つことになった。
「前と同じで帰還時の報酬はクルシュさんとメイにも分配をお願いします」
「かしこまりました」
俺がトワに処理をしてもらっている間に、ミリアさんはルリと、アオに話かけていた。どんな会話をしているのか気になるところだ。
♢
《sideミリア》
私はソルトさんがトワと話している間に、フードを脱いで獣人を表す耳を晒した二人に話しかけました。
お二人ともとてもお綺麗な方々で、冒険者ギルドでは目を引いてしまうので、フードを被っていただいて、飲食ができるスペースに移動します。
「改めて、王都冒険者ギルドで受付をしています。ミリアと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。先ほどは失礼しました」
「いえいえ、私もソルトさんに会えたことで興奮して恥ずかしい姿をお見せしました」
「いえ、その気持ちは私たちも理解できるので、私は狼獣人で、現在はご主人様と主従関係を結んでおります、ルリです。そして、娘のアオです」
「アオなの」
二人の挨拶で、私は主従関係という言葉に意外感を覚えました。
魔術的な主従関係は、存在していますが、隷属のような扱いなので、あまり好まれません。
ソルトさんが人から好まれないようなことをする人物とは思えなかったからです。
「意外に思われていると思いますが、主従関係を望んだのは我々です」
「そうなんですね!」
女性側から望んだことなら、ソルトさんは受け入れるかもしれない。
深い事情がありそうなので、突っ込んで聞くことはできないけれど、ソルトさんは常に厄介事を抱え込むような人だ。
「相変わらずですね。ソルトさんは」
「相変わらずというのは?」
「少しだけ、ソルトさんの昔話をしましょうか?」
「お願いします!」
「聞きたいの!」
私は王都で受付嬢をしながら、多くの冒険者の方と関わってきました。
その中で冒険者の方は、それぞれの個性が強く、粗暴で、礼儀やルールを守らない方が多いです。
その中で、目を引く男性が現れました。
それがソルトさんです。
彼が初めて王都の冒険者ギルドにやってきたのは今から五年ほど前です。
村で普通の生活をしていた彼は、魔物の襲撃を受けて、二人の女性を守るために冒険者になったそうです。
最初は何も知らない青年でしたが、彼は真面目な態度で確実に力をつけていきました。
聖属性という特殊性もあったと思います。
回復魔法で日銭を稼いで、丁寧な物腰と、紳士的な態度。
行動一つ一つが他の方々を惹きつけ、味方につけていきました。
彼が守っている少女たちも、彼の存在があったからこそ守られている状況でした。
実際に、二人に才能があったというのもありますが、ソルトさんが守る少女ということで、冒険者の方も守るべき存在として認識していたようです。
そんな彼が《聖光》と呼ばれる事件が起きました。
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