第53話
前書き
どうも作者のイコです。
前話を見るのが躊躇う方のために簡単なあらすじです。
道化師がソルトの寝室に侵入した。
道化師の正体は、幼馴染のシンシアだった。
シンシアの暗示によって、ソルトは心の枷をかけられていた。
シンシアは目的を持ち行動している。
シンシアはソルトの枷を外し、瘴気を生み出す闇に堕ちた自分を追いかけるように、ヤンデレヒロインとして愛の告白をする。
という話でした。
それではどうぞ続きをお楽しみください。
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自分の身に起きた出来事が信じられなかった。
道化師がシンシアで、シンシアは何か目的を持って瘴気を生み出している。
しかも、それは俺に関与しているような口ぶりだった。
ベッドに残る真っ赤な痕跡を見つめ、俺はただただ呆然とすることしかできなかった。
シンシアがいなくなって、両手両足の拘束は解かれ、全てが夢であったのではないかと思うほどに現実離れしていた。
ーーコンコン
「ご主人様! 夜分遅くに申し訳ありません。目を覚まされておりますか?」
ルリの声が外から聞こえてきた。
きっとこちらの気配で起きているのに気づいて声をかけたのだろう。
「ルリ、すまない。起きているが、少し待ってくれるか?」
部屋に残るシンシアの痕跡、それをルリにバレたくないと思った。
だから、部屋を消臭するためにクリーンをかけて、全てを綺麗にする。
「お待たせ。どうかしたのかい?」
「申し訳ありません。先ほどまでご主人様以外の気配を感じたのです。それになんだか胸騒ぎがして、居ても立ってもおられずに……」
本当に慌てていたのだろう。寝巻きにしているネグリジェだけで、髪も乱れたままやってきていた。
惜しげもなく披露される爆乳を防備する物が何もない。
そんな俺の考えなど気遣う余裕がない様子で、ルリは俺の部屋の中を覗き込んだ。
「誰もいない?」
「ああ、大丈夫だ。心配をかけてすまない。ありがとう、ルリ」
「いえ、何故か物凄く嫌な勘が働いたのですが、どうやら違ったようです」
「ルリ」
「えっ?」
俺は自分でも驚くが、体が自然に動いていた。
そっとルリを抱きしめて頭を撫でる。
「本当にありがとう。ルリとアオには感謝している」
「ごっ、ご主人様!」
「嫌だったか?」
「いっ、いえ、アオの頭を撫でている姿を見て、うっ、羨ましいと思っておりました」
フェンリルも狼や犬と同じく、頭を撫でられるのが好きだろうと思っていた。
娘のアオが、とても気持ち良さそうな顔をしていたのを羨ましそうに見ていたから、やってみてよかったようだ。
「大丈夫だから、ゆっくり休んでくれ」
「はい! ご主人様もゆっくりお休みください」
「ああ」
俺が抱きしめるのをやめると、ルリは名残惜しそうな顔をしていた。
「また後で」と声をかけると自分の部屋へ戻っていく。
ルリを見送った俺は、コップに水を注いで窓際の椅子に腰を下ろした。
「現実なのだな」
自分の身に起きた出来事に呆然とする。
ずっとシンシアへ恋心を抱いていた。
それは嘘偽りがないものだと、今でもシンシアを好きな気持ちに変わりはない。
だが、シンシアがいうように心にあった引っ掛かりが取れたような感覚はある。
そして、ルリを見てそれは確信に変わった。
今までルリを見るたびに女性に対して罪悪感がついて回っていた。
彼女たちは心に傷を負っているから守るべき存在で、体に触れたり、エッチなことをするのは持ってのほかだと思ってきた。
先ほど、ルリを抱きしめることに躊躇うことはなかった。
むしろ、あのおおきOPに触れてみたいと心から思っている自分がいた。
「ハァ〜ダメだな。気持ちが昂って自分自身すら制御ができていない」
シンシアのことは道化師だとわかっているのに、今でも好きだと思ってしまっている。そして、他の女性たちに対しても心の中でダメだとわかっているのに、好意を抱いていることが実感できる。
「なんだこれは? 今までしてきたことは嘘ではない。嘘ではないが、なぜ我慢していたのだろう?」
紳士的な振る舞いを止めるわけではないが、女性に対しての遠慮というのか、一線を越える覚悟が生まれたような気がする。
「体が熱い。もしも、シンシアが瘴気を生み出す犯人なのだとしたら、俺はシンシアを止めなくちゃならない。何より、シンシアの目的を聞き出す必要がある」
常温ではあるが、水を一気に喉へ流し込めば、胃がキュッと冷たく引き締まったような気がする。
明け方を迎えようとしている城郭都市コーリアスは、祭りの初日を迎える。
「もしかしたら、シンシアも時空属性を使ってどこか遠くから来たんじゃなくて、コーリアスの街にいるのか?」
これだけの人が集まっている中で見つけることは困難だろう。
だが、もしも見つけることができるなら、もう一度シンシアと話がしたい。
何を考え何を思っているのか知りたい。
シンシアの思惑通り、俺はシンシアを追いかけたいと思っていた。
「ふぅ、もう一度眠れるのかわからないが、横になろう」
不意に消臭をかけたはずなのに、シンシアの匂いがしたような気がした。
だが、残り香というよりも、思い出の中のシンシアを感じたような気がして自分自身の精神を安定させるためにヒーリングをかけて眠りについた。
♢
《side道化師シンシア》
屋敷の上空から、ソルト兄さんが窓の外を見つめている姿を見て、私はお腹を撫でた。
あ〜なんて幸せなんだろう。
「アハっ! ソルト兄さんの子種をもらっちゃった。きっと二人の子供は最高に可愛いだろうなぁ〜。それに私の子供なら時空属性になるんだろうから、しっかり守らなくちゃ。お母さんもそうだったもん」
あの日、村を襲った魔物はお母さんを奪うためにやってきた。
だから、私も一つのところに留まるわけにはいかないんだ。
「ねぇ、ソルト兄さん。きっとソルト兄さんの側にずっといられたら幸せだったと思う。だけど、それは凄くソルト兄さんに迷惑をかけてしまうから。私は世界の敵になって自由に生きるね。その代わり、ソルト兄さんが追いかけきてくれるのを待っているからね」
ふふ、これは私が考えた最高に幸せな二人の関係。
だから、いつまでも一生愛していますね。
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あとがき
どうも作者のイコです。
月曜日がやってきて、仕事に学業にお忙しいと思います。
私も頑張りますのでお互いに励まし合っていきましょう!!(๑>◡<๑)
ドラノベコンテストもなんとか2位をキープできていますが、あと一ヶ月! たくさんの応援をお待ちしております(๑>◡<๑)
☆、♡、ブクマにて応援をお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします!
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