第52話
前書き
どうも作者のイコです。
暴力的で、エッチなシーンが含まれます。
苦手な方は読まれる際にはご注意ください。
飛ばしても次の話で理解できるように、書かせていただきます。
いつも応援ありがとうございます。
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誰だ? 暗くてよく見えない。
こんな時間にベッドに潜り込む相手などいるだろうか? アオが子犬になって一緒に寝たことを思い出す。
アオかと思って手を伸ばした。
しかし、その感触はやわらかくて、人肌の温もりだった。
「アハっ! 大胆だね。いきなり胸を鷲掴みにするなんて」
「なっ!?」
俺はすぐに手を離した。
その声に聞き覚えがあって、一気に意識を覚醒させる。
「おっと、勝手に動くのは面倒だから、片手以外は拘束させてもらっているよ。当然の処置だね」
言われて自身の体を見ると、不思議な光景が広がっていた。
そこには片手と両足がなくなっていた。
だが、この場には存在しないだけで感触はある、何とも言えない不思議な感覚だ。
「お前は道化師?!?」
次第に暗闇に目がなれると、シルクハットにタキシード、顔には仮面をつけてピエロの化粧をした道化師が俺の上に跨っていた。
「くっ?! 俺を殺しに来たのか!」
おかしい! 俺の部屋だけなく、この屋敷全体に結界が貼られているはずだ。
魔術結界の中には、許可された者しか入れない。
どうしてこいつがここにいる?!
「アハっ! 不思議そうな顔をしているね。だけど、私には結界なんて関係ないんだよ」
「時空属性」
本来は解析が済んでいる属性に対して、結界は機能する。
だが、無属性と時空属性だけは例外に入る。
無属性は、そのまま属性がないと判断されて結界の対象から外された。
時空属性は、その数が少なく、その時代に一人いるのかいないのか? 存在しないとまで言われており、解析しようがないということだ。
「正解! その通りだよ。幻の存在と言われ続けた時空属性が私だよ。空間を飛び越すことなんてお手のものだよ」
胸を張って自慢する道化師に、こちらとしてはどう対処するべきか……。
「何が目的だ? 殺すなら、さっさとしろ」
「アハっ! そんなことしないよ」
道化師が何をするのかと思えば、着ていたタキシードのボタンを一つずつ外していく。
「なっ! 何をしている」
「うん? 決まっているじゃないか、君とするんだよ。大人の運動をね」
「何だと!」
上着を全て脱ぎ捨てた道化師の体が晒される。
その服装から想像ができないほどに美しい体が晒される。
「アハっ! あっ、先に言っておくけど、これでも初めてだからね」
「なんでこんなことをするんだ!」
「これは君の呪いを解くための儀式さ」
「呪い? 俺は呪われてなんていない! 聖属性の俺は呪いが効かない体質なんだぞ」
「ふふ、これは魔術的な呪いじゃないんだよ。これは私が長年暗示と誘導であなたにかけた呪い」
長い年月? どういうことだ? シルクハットで髪が見えない。
仮面や化粧で顔もわからない。
声も……
「お前は誰だ?」
「アハっ! やっと二人きりになれたね。どこにいるのかわからなくて、たくさん探したよ」
「何を言っている?!」
どんどんその声は聞き覚えのあるものへと変わっていく。
とても懐かしくて、愛おしい。
「アハっ! 忘れたのかな? ううん。忘れたんですか? ソルト兄さん」
そう言ってシルクハットを取った道化師の髪が顕になる。
くすんだ黄色い髪を肩まで切り揃えて、誰よりも長く見てきた綺麗な体。
仮面を外して映る瞳、そして、胸の谷間から見えるホクロは彼女の物で間違いない。
「シンシア?」
そう、王都の冒険者ギルドで別れたはずのシンシアだった。
シンシアは俺の知らない誰かと結婚したはずだ。
事前に紹介をしてもらえず、突然結婚するからパーティーを解散して欲しいと言われ薄情に思うこともあったが、シンシアが幸せになるなら構わないと思った。
そのシンシアが道化師? どういうことだ? 頭が追いつかない!
「アハっ! ソルト兄さん。ねぇ、覚えていますか?」
「何を?」
「ソルト兄さんのお嫁さんになりたいって言ったことをです」
本当にこいつがシンシアなのかわからない。
わからないが覚えがある。
「ああ、昔言っていた。アーシャとシンシアは二人とも俺のお嫁さんになりたいって」
「アハっ! 思い出してくれてよかった。本当に本当にアーシャが邪魔で」
「何を言っているんだ?」
それは恐ろしく冷たい瞳をしていた。
俺の知らないシンシアがいた。
「昔、ソルト兄さんに言ったことがあります。結婚するまでは女性と子供を作ってはいけない。本当に好きな人としかそういうことをしてはいけない。誰かを好きになっても、ちゃんと相手と相思相愛でなければしてはいけない」
シンシアの顔をした道化師は、ズボンも脱ぎ捨てて、裸で俺の耳元で囁きかける。それはどこかで聞いたような、それでいて自分で決めていた心の枷に思えた。
顔を拭いて化粧を落としたシンシアは、俺が知るシンシアそのものだった。
「なっ!?」
「呪い。いいえ、正確には暗示です。幼い頃から、ソルト兄さんにずっと暗示をかけ続けてきました」
「何のために!?」
「決まっているじゃないですか。ソルト兄さんを私の物にするためです」
「何を言っている?」
「ふふ、長かったです。私たちはずっと仲良し三人組でした。だけど、私はアーシャが邪魔だった。だから、あの子に騎士団から声がかかったタイミングで兄さんから離れることにしたんです」
シンシアが何を考えているのか、何を言っているのか全くわからない。
「結婚は?」
「もちろん嘘です」
「シンシアは時空属性じゃない!」
「それも偽っていたんですよ。危なくなった時には使っていましたが、誤魔化すのは苦労しましたよ。だけど、幼い私はソルト兄さんを独り占めするために、色々と頑張っていたんです。たくさん実験も行いました」
そうだ。道化師はルリとアオに酷いことをした。
それに瘴気を溢れさせて、もしも本当にシンシアなら目的は何だ?
「アハっ! 本当はソルト兄さんを独り占めしたかったけど、もういいんです。私も大人になって、ソルト兄さんの初めてをもらって、心を解放してあげようと思うのです」
道化師が何を言いたいのかわからない。
だが、俺の衣類は全て剥ぎ取られて、愛棒が曝け出される。
こんな状況でも、今まで我慢をさせ続けた影響で勇気100倍に!!!
「アハっ! 私に興奮してくれたんですね、嬉しい。ソルト兄さん」
「本当にシンシアなんだよな? なら、こんなことはやめてくれ。俺が欲しいなら全て捧ぐ。だから瘴気を止めてくれないか?」
「アハっ!? あはははははっはははははははははハッハハハハハ!!! 本当にどこまでも、兄さんは、ソルト兄さんなのね。だけど、ごめんなさい」
そうして一気に突き入れられる。
真っ赤な鮮血が流れ、シンシアの体が串刺しにされる。
「ハァアアアア!!! いい。こんなにもソルト兄さんを感じられるなら、もっと早くすればよかった」
「ぐっ! シンシア! どうして?」
「ソルト兄さん、私は生涯あなたしか愛しません。ですが、もっとあなたに穢れてほしい。堕ちて、どこまでも堕ちてください。その先でお待ちしています」
激しく上下する体は恍惚の表情を浮かべ、我慢の限界を迎える。
「アハっ! ソルト兄さんをいただきました」
その表情は見たことがないほど妖艶で、俺が知らないシンシアの顔だった。
「たくさんの女性に求め、たくさんの経験をしてどんどん穢れて、そんなソルト兄さんを見たいの。どこまで堕ちても一生私を追いかけてきてね。愛しているわ、ソルト兄さん」
最後にシンシアから口付けをされた。
それは夢か幻か、現実に起きたことなのかわからないほどに、闇の深いシンシアの姿に呆然とする俺に残されたのは、真っ赤に汚れたシーツだった。
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