第50話
《sideメイ》
タオルでグルグル巻きにされた獣人の母娘に、気付け薬を嗅がせることで目覚めさせました。
「はっ!? ここは? ご主人様は?!」
「あれ〜おはようなの。主人様いないの」
キョロキョロとソルトさんを探す二人に、私は事情を説明します。
「おはようございます。ルリさん、アオさん。ソルトさんはお二人に魔法をかけて、寝かせてしまいました。お二人は私が運ぶとお伝えして、風呂場から離れていただきました」
「そうですか、色々と気を遣わせてしまったようで申し訳ありません」
「それは……」
説明の途中で、脱衣所の扉が開きました。
「あら、メイ。まだ入っていなかったの?」
「申し訳ありません。こちらのお二人がのぼせたようで、休まれていたので介抱しておりました」
「そうなの? あら、私は初めましてですね」
ラーナ様が、その豊かな爆乳を薄いワンピースで隠しただけの姿で、床に座っていたルリさん、アオさんに声をかけます。
お二人はラーナ様がどういう方なのかわかっていない様子だったので、私がルリさんの耳元に、ラーナ様が家令として領主代行を務める方だと説明をしました。
「これは失礼しました。ソルト様の従者で共にお世話になっております。ルリと申します。ご挨拶が遅れてしまい申しわけありません。隣にいるのは、娘のアオです」
「あっ、アオなのです」
あまり敬語が得意ではないアオさんも、ルリさんの雰囲気を察して敬語を心がけています。
「クルシュから話は聞いております。コーリアス領領主代行ラーナ・コーリアスと申します。今後はソルト様共々よろしくお願いします」
「こちらこそ獣人の身で差別なくご挨拶をしていただきありがとうございます」
ラーナ様に握手を求められたルリさんが立ち上がると、爆乳と爆乳が今にも引っ付きそうな距離で会話をしています。
私も胸には自信がありましたが、このお二人には勝てそうにありませんね。
「体調が優れないということでしたが、大丈夫ですか?」
「はい。もうなんともありません」
「アオも大丈夫なの」
「そうですか! でしたら、一緒にお風呂に入りませんか? こうして一つ屋根の下にいるのです。裸の付き合いというのも良いと思います。もちろん、のぼせるようでしたらすぐに出ても構いませんので」
ラーナ様は新たにやってきたお二人を見極めようとされているのかもしれません。
見ず知らずの人と裸の付き合いをしようとは、なかなか思わないでしょう。
「大丈夫です。我々もまだ体を洗えていませんので、大きなお風呂に興奮してしまってお恥ずかしいです」
「ふふ、お風呂は母の代から物で自慢の逸品なんです」
ルリさんが同意したことで、全員が衣類を脱ぎ始めました。
五人の裸は圧巻の光景が広がっています。
私は自分が小柄で、この中で一番小さいからこそ、全員のお姿を見上げるような形になってしまいます。
「ほら、メイもいくぞ」
「くっ、クルシュ様!」
一番年上であるルリさんは、その巨大な胸を支えるだけの筋力を持つ体をされています。ただ、女性らしい丸みもあり、お尻も大きめで形がとても綺麗でした。
次に胸の大きなラーナ様は、領主のかたわらに、我々の訓練に混ざって体を動かされておられるので余計な脂肪はなく。
二十歳という若さの肌に、腰やお尻の小ささが、ルリさんとはまた別の女性らしさを感じます。
高身長で一番胸はありませんが、それでもプロポーションでは一番の美しさを持つフレイナ様は、堂々と腰に手を当てて立たれる姿が様になっていて、見惚れてしまいます。
さらに、銀色の髪の毛が輝き、顔の汚れを落としたクルシュ様は女神のような美しさを放っています。肌も白く身長は中ぐらいで、この中では最もバランスが取れている女性だと思います。
そして、最後にアオさんは、高身長で胸も大きく。私としては理想の体型ですが、同い年だと聞いたので、少しだけ嫉妬してしまいます。
「メイ、何をジロジロとみんなのことを見ているの?」
「アオさんは、他の方の体は気になりませんか?」
「えっ? う〜ん、あっ! フレイナさんはお母さんに負けないぐらい綺麗で強そう。クルシュさんも、私よりも背が低いけど物凄く強くて綺麗。ラーナ様はお母さんに負けないぐらい胸が大きい。メイは身長が小さい」
「最後のは余計です!」
身長が低いことはコンプレックスなので、あまりいじらないで欲しいですね。
「みんな違うからいいと思う」
「えっ?」
「みんな一緒だったら、主人様は誰も選んでくれないような気がするの。だけど、全員違うから、主人様も全員を選んでくれると思うの!」
「全員を選んでくれる?」
何を言っているのだろう? ソルトさんは潔癖なまでに誘惑に屈しません。
アオさんとルリさんをけしかけたのは私です。
ソルトさんがお風呂に向かう姿を見て、二人にお風呂にソルトさんが向かったことを教えました。
どういう行動を取るのか監視して、二人の誘惑が成功していたら、私も混ぜてと言えたのに、ソルトさんは頑なに拒んでいました。
あれは何か一種の呪いにでもかかっているのではないでしょうか? そう思いたくなるほどの拒み方だと思います。
普通の男性であれば、これだけの美人や美少女が揃っていて、しかも体を密着させたり、肌を見せていれば気持ちが折れてしまうはずなのに、ソルトさんは一向に折れません。
鉄の心でできているのでしょうか?
「主人様は優しいから一人を選ばないといけないって思っているんだと思うの」
「一人を選ぶ?」
「そう、ちゃんと好きになった人じゃなくちゃ選んじゃいけないって。だけど、ここにいる人はみんな主人様が好きでしょ?」
「うっ?! そっ、そんな純粋な目で見られると恥ずかしいけど、そうよ。好きよ」
私がアオさんと会話をしていると、聞き耳を立てていたのか、他の四人から視線を向けられる。
「あら、メイはソルトさんが好きなのね」
「ラーナ様!」
「ふふ、いいのよ。ソルトさんには第四騎士団の中からお嫁さんを探してもらって構わないって伝えてあるから。メイでも、フレイナでも、クルシュでも、ソルトさんと添い遂げたいなら、私は応援するわよ」
ラーナ様の言葉にフレイナ様の顔が真っ赤に染まる。
クルシュ様は、首を傾げて話を理解されていない様子なので、ちょっとだけホッとしてしまった。
「なるほど、皆さんもご主人様のことをお好きだったのですね。それは素晴らしいことです。我々以外にも獣人の方で、ご主人様に惚れている女性がいるのですが、彼女からご主人様を女好きにして、ハーレムを作って欲しいと頼まれているのです。皆さんが協力してくれるなら心強いです!」
ルリさんまで! ハーレムって……いいのかな?
私は独り占めしたいけど、ソルトさんはきっと誰にでも優しいから独り占めはできない。だけど、最初から他の人と共有すると決まっていれば……。
多少は我慢できるだろうか?
「みんなで主人様を愛するの!」
無邪気にソルトさんを思えるアオさんを心から羨ましいと思ってしまう。
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