第47話
ダウト方面の瘴気調査を終えることができた。
そこで、コーリアス領へ戻って、別の瘴気情報を確認する必要があるため、ダウトの街を離れようと思い、顔合わせを行うことになった。
「改めて紹介をさせてもらう」
六人がけのテーブルに、俺を挟むように座ったアオとルリ。
そして、俺の向かいにクルシュさんが座って、メイがルリの前に座った。
「彼女たちはアザマーン領で仲間になったルリとアオだ」
「ご主人様と主従関係を結んでおります。ルリです」
「アオなの!」
「彼女たちは狼獣人の親子なんだ。そして、こちらの二人はコーリアス領第四騎士団所属クルシュ副団長と、団員のメイだ」
新たな仲間として、ルリとアオを先に紹介させてもらった。
「うむ、紹介感謝する。私は第四騎士団副団長のクルシュと申す! ソルト殿のお仲間なら信用できる。どうぞよろしく頼む」
快活な人物であるクルシュさんは、すぐに二人を受け入れるような言葉を発してくれたことで、二人の緊張も解けた。
「第四騎士団団員のメイです。ソルトさん、随分とお綺麗な親子ですね」
「ああ、色々とあってね。彼女たちの主人として世話をすることになったんだ」
「主人ですか? ふ〜ん」
メイの瞳が怪しく光ったように思うのは気のせいだろうか?
「メイ、あまり詮索するものじゃないぞ。ソルト殿は我々の助っ人であって、第四騎士団に所属しているわけじゃない」
「クルシュ様、大丈夫です。わかっています」
わかっているといった後なのに、メイがじっとルリの爆乳に視線を向けているのはどうしてなんだろう?
「お二人はどれくらい強いのだろうか?」
剣に生きているクルシュさんは、二人の強さの方が興味があるようだ。
「そうですね。ご主人様を守れるほどには強いつもりです」
「アオも、主人様を守るの!」
「む〜、ソルトさんをご主人様って、いいなぁ〜」
メイが何やらブツブツ呟いているのが気になる。
「そうか、コーリアスに戻るにあたって、共に移動することになる。どこかで一手願えないだろうか? 私はまだまだ未熟な身で剣を鍛えたいのだ」
「ふふ、構いませんよ。どちらがご主人様に相応しいのか、格付けは必要ですからね」
んん? ルリ? 今、変なこと言わなかった。
クルシュさんは相変わらず真面目だな。
「いいの! ボコボコにしてあげるの!」
アオ? どうした? なんでいきなりそんなことを言うんだ。
「いいですね! 私とクルシュ様チーム、ルリさんアオさんチームでやりましょう」
なぜ、メイまでノリノリなんだ? 女性たちが好戦的すぎる。
「あはははは、血気盛んなのはいいな。私としても第四騎士団に引き抜きたいほどだ。ソルト殿、仲間が増えるのは良いことだ。安全を確保しやすくなるからな。ありがたい」
クルシュさんだけは、他の三人と違って楽しそうに笑っている。
三人の間にバチバチと火花が散っているような気がしたのは気のせいだろうか?
雰囲気が悪くなったわけじゃないのでいいが、なぜメイは二人と睨み合いのようになっているんだ。
「改めて、メイのことでは世話になった! ソルト殿に感謝を」
「あっ、ありがとうございます」
クルシュさんが話題を変えてくれて、メイが慌てて頭を下げる。
「いや、俺がしたくてしたことだから」
「それでもだ。ソルト殿が機転が利かせてくれたから、刑を確定させる前にメイを助けることができた。感謝する」
クルシュさんも、メイもまだまだ若い。
二人はこれから多くのことを学んでいくだろう。
メイの未来を摘むことなく、役に立てたならよかった。
「いえ、俺は第四騎士団の助っ人なんでしょ? 助っ人が助けるのは当たり前では?」
「はは、そう言ってくれると助かる。だが、ラーナ様には報告して正式な礼をしたいと思う。私たちの命だけでなく、今回もまた助けられてしまった。返し切れるかわからないほどの恩だが、精一杯のことをさせてもらうつもりだ」
律儀と言えばいいのか、真面目なクルシュさんの言葉で、完全に雰囲気は穏やかなものになってくれた。
「まぁ、気を使いすぎない程度でお願いします。気楽なぐらいが良いので」
「ソルト殿は相変わらずだな」
俺たちは顔を合わせと自己紹介、それにメイの事件についてをクルシュさんから聞いて、ダウトの街を後にすることにした。
ガイン殿は、間者に関与することで忙しいと言うことで、挨拶はまたこちらに来た時にすることにした。
文官が配置されることになってビシバシと扱かれているそうだ。
行きよりも人数が増えたため、馬車は大きい荷馬車を借りて、馬も四頭を用意してもらった。
旅の間は四人の模擬戦が行われた。
メイとアオは年齢も同い年なので、友人になって欲しいと思っていたが……。
戦いの順位は……
1位、ルリ
2位、クルシュ
3位、メイ
4位、アオ
という意外な順位だった。
もちろん、獣化はしないで人の姿で戦ったわけだが。
ルリは多くの経験からクルシュさんを圧倒するほど強く。
クルシュさんは、単純に力量の差でメイを倒して、戦い慣れていないアオに勝った。
そして、メイとアオは相性が悪かった。
犬のように追いかけますだけのアオに対して、それを翻弄するように振り回すメイの勝利だった。風属性の魔法を上手く使って回避に専念したメイは、ルリさんでも捕まえるのに苦労していたほどだ。
「うむ。良い戦いだった」
「ふふん。私の勝ちですね」
「ぐぬぬぬ! まだ負けてないの! 私も強くなるの!」
「そうね。アオ、これから頑張りましょう」
意外だったのは、ルリがハルバートと呼ばれる長い持ち手がある斧を得意としていたことだ。軽々と斧を振り回して戦っていた。
ダウトの街を出る前に購入して欲しいと言われて買ったものだが、ここまでの使い手だとは思わなかった。
アオは戦いに慣れていないので、これからルリの指導を受けて強くなっていくことだろう。
ヒールをかけながら走らせると、馬たちは元気に走ってくれるので、行きは四日かけて向かった道のりが一日短縮できてしまった。
「ソルトさんの回復魔法はなんでもありだな」
「あまり使いすぎて馬たちの体に悪い影響がないのか心配だよ」
久しぶりに戻ってきたコーリアスの街は、お祭りの準備で賑やかな雰囲気に変わっていた。
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