第38話

 デジャブ……。


 なぜか、ホテルのベッドにルリとアオが寝ている。

 しかも、裸になっていて、三人でベッドの上に川の字で……。


 もしかして俺はとんでもないことをしてしまったんじゃないだろうか? 

 腕に当たる二人から伝わる温もりと柔らかさ、今朝と全く同じだ。


 二度目でも、愛棒が異常に元気なのは、おかしい。


 いつもならヒーリングをかければ落ち着いてくれるのに、一向に治らない。


「ヒーリング」


 俺は二人を起こさないように、ヒーリングをかけて体を起こした。


 昨日に続いて、今日も裸で寝ていたら、本当に俺は理性が持たない。と言うか部屋は別々にとっているのに、なんで一緒に寝ているんだ? 


「とにかく強制的に、鎮めるしかないだろうな」


 俺は瞑想を行いながら、愛棒を魔力で抑え込む。


 これをするとしばらくの間は、元気にならなくなってしまうので、男としては悲しいが、女性と旅をする以上は必要な処置だろう。


 前に、シンシアに欲情した時に使って以来で加減が難しいが……致し方あるまい。


 今朝のように鼻血を出して二人に心配をかけるわけにはいかない。


「欲望封印!? アンチヒール!」


 本来回復させて元気にさせるヒールだが、力の出力をマイナスにすることで、元気な体から力を吸収するドレインのような効果を発揮するのだ。


「ふぅ、体の熱さが取れた。ちょっと水風呂を浴びて頭を冷やそう」


 これまで幼馴染たちと旅をするために多くの我慢をしてきた。

 確かに、それからは解放されたと思っていたが。


 ルリさんは、これまで多くの絶望の中で生きてきたんだ。

 それを救うために、俺がルリさんを求めて絶望の上書きをするわけにはいかない。


 あくまで紳士的で、信頼できる男性として、接するように心がけないとな。


 俺は服を全て整えて、二人の目が覚めるのをロビーでまった。


「おはようございます。ご主人様。起こしてくださればよかったのに」

「おはようなの! どうしてこんなところにいるの?」

「あ、ああ。二人が気持ちよさそうに寝ていたからね。起こすのは可哀想だと思ったんだよ。それよりも、すまないが俺は何かしてしまっただろうか?」


 また、俺はクルシュさんやメイの時のようにいかがわしいことをしてしまったんじゃないだろうか?


「いえ、昨日は、お酒を飲まれていたので、お風呂に入れさせていただいて、そのあとは我々にヒールをかけてくださいました」

「えっ? ヒール?」

「はい」

「むっ、胸を揉んだりだとか、君たちを襲ったとかはしてないかな?」


 クルシュさんやメイの胸を揉むという不貞行為をしてしまった前科があるからな。

 酔ったからと言って許されるようなことではない。


「いえ、本当にヒールをかけてくださっただけです。そのあとは、ヒールをかけていただいた影響で気持ち良くなってしまって、体が熱くなったので、そのまま服を脱いで寝てしまいました」

「そうなの! ご主人様のヒールは凄く気持ちいいの」


 まぁ、ヒールをかけただけならいいのか? 二人に対して不貞行為をしていないならセーフだろうか? ただ、ワインの五本目を飲んだ時点でもう記憶がない。


 三本目を飲み干した時に、ハニー様から一番使えない者を調べてみろと言われたが、使えない者とはどういう意味なのか? あまりにもアバウトな言葉すぎて皆目見当もつかない。


「二人が気持ちよかったならいいか」

「はい! スッキリ致しました」

「元気いっぱいなの!」

「ここでの仕事を終えたのでコーリアス領に戻ろうと思う。いいかい?」

「どこまでもお供いたします」

「主人様についていくの!」


 獣人の冒険者がいないわけじゃない。

 何よりも冒険者という存在は、どこの国を拠点にしているのかは定めるが、本来はどこの国に行くことができる自由な存在だ。


 獣人だからといっても、冒険者である以上はどこに行っても構わない。


「わかった。獣人が多くない地域に行くから目立ってしまう」

「それは問題ありません。このホテルの従業員の方に伺ったのですが、ハニー様がご用意してくれた服の中に認識阻害のローブが含まれていました。我々はそれを纏って移動しようと思います」

「そんな便利な物が?」

「多分、我々の存在に対して配慮してくださったのだと思います」


 ハニー様に借りが増えるばかりだな。


 出来ることがあれば、何かしら返したいものだ。


「わかった。二人には窮屈かもしれないが、街を歩くときはそのローブを纏ってくれ」

「かしこまりました」

「はいなの!」


 俺たちは旅行用のバッグを用意してもらって、服を詰めてホテルのチェックアウトに行った。

 

 ハニー様には昨日の内に出ていくことは告げられていると思うので、冒険者ギルドに行ってミーアに挨拶をする。


「よく来たにゃ。ソルトがいなくなると思うと寂しくなるにゃ」

「色々とお世話になりました」

「何を言っているにゃ! こっちの方がたくさん助けられたにゃ。ソルトならいつでも歓迎にゃ」

「そう言ってもらえると助かるよ」


 そっとミーアが耳元へ口を寄せる。


「それとな」

「うん?」

「私は本気でソルトに惚れてるにゃ」

「なっ!」

「もしも、ソルトが私を恋人にしたいなら迎えに来てほしいにゃ! まぁ、ソルトにも色々とあると思うにゃ。諸々のことが片付いたら考えてみて欲しいにゃ」


 それだけを告げてミーアは、俺から距離をとった。


「私は遠回しは苦手にゃ。ただ急がないといっても若い内の方がいいにゃ。そっちの二人がついてきても問題ないにゃ。考えてみて欲しいにゃ」


 まさか直球で告白をされる日が俺に来るなんて思わなくて、呆然としていたが、ミーアはしてやったりという顔をしているので、どこまでか本気かわからない。


 だけど、正直に本気だと思って受け止めたい。


「ありがとう。考えさせてもらうよ」

「にゃはは、そういうところも真面目なのにゃ。即答で断られないってことは、ちょっとは期待するにゃ」


 最後に上目遣いに覗き込んだ顔は本当に可愛くて、ミーアの雰囲気とのギャップにクラッと来てしまう。


 こうして俺たちはアズマーン方面のダウト街を後にした。


 得られた情報は、領主が何かしらの画策を行なっていること。

 ハニー様たちは女性を助ける街作りをしていること。

 瘴気を使って悪事を働く者がいること。

 そして、一番使えない者をアザマーン領主は引き入れるのが上手いということ。


 俺にはさっぱりだが、クルシュさんとメイ、もしくはラーナ様に報告が出来れば、理解を得られるかもしれない。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき。


 どうも作者のイコです。


 第1章は、ここまでです。


 次の話から第二章です。


 どうぞ今後も応援よろしくお願いします(๑>◡<๑)

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