第37話

《sideルリ》


 ご主人様ゴシュジンサマが、この街を治める方の元へご挨拶に行かれると言うことで、私は久しぶりに娘のアオと二人きりになり、食事を終えてホッと息を吐きました。


「お母さん大丈夫なの?」

「ええ、心配をかけてごめんなさい。大丈夫よ。ご主人様にお救い頂いた一昨日から、どうしても体が熱く火照ってしまっているのよ」


 熱がある……そんな感じではなく、下腹部がギュッと締め付けられるような、ずっと忘れていた感覚が刺激されているように感じるのです。


「火照る?」

「そう、ご主人様が私を救うために、瘴気を払おうと魔法を使ってくださるたびに私の体が刺激されているような心地よさを感じたのよ」


 この熱はなんなのでしょうか? ですが、それでもご主人様の側にいる間は幸福に感じて、ずっとこの火照りを感じていたいと思ってしまいます。


「う〜ん、ちょっと分かるような気がするの」

「そうなのですか?」


 娘も同じ感覚を味わっているということに不思議な親近感と、少しばかりの嫉妬を感じてしまいます。


「うん。私も初めて主人様アルジサマに助けてもらった日に、凄く体が熱くなったの。主人様は子狼の姿をしている私も関係なく助けてくれる優しい人で、回復魔法をかけて助けてくれたの」


 その後はゆっくり寝かせて、ご飯まで食べさせてくれたという。

 本当に優しいご主人様。

 

 体の熱さを解放したくて、アオはご主人様のベッドに入り込んで、上に乗って眠ると安心できたという。


 その気持ちがよくわかってしまいます。

 今朝、ご主人様の腕を抱いている時間が、どれほど幸福な時間であったことかわからない。


 私も人生でここまでの安心を感じたのは初めてのことです。


「アオは、ご主人様が好きですか?」

「大好きなの! でも、不思議なの」

「不思議ですか?」

「そうなの。お話をしたこともないのに、主人様の側にいくと気持ちが温かくなって、良い匂いのする主人様の側にいるともっとお鼻を近づけて主人様の匂いを嗅ぎたくなるの」


 まだまだ未熟な我が娘の発言に、理解が及んでしまう自らもはしたないと感じてしまいますが、その気持ちはわかります。


 我々、フェンリルは普通の獣人よりもさらに鼻が利きます。


 そのため、嫌な匂いに溢れたこの世界で、ご主人様のおられる空間だけが、息がしやすくなります。


 空気が清浄に保たれ、ニオイも浄化されているように感じられるのです。


「私もそれはわかります。アオ、今後も我々はご主人様をお支えして、愛していただけるように努めましょう」

「はいなの! お母さんも、主人様を好き?」

「ええ。とてもご立派なお方だと思っているわ」

「ふふ、嬉しいの。二人で主人様にいっぱい大好きをいうの」


 可愛い娘とご主人様。

 

 もしも二人が結ばれてくれるなら一番の幸福です。


 ご主人様が、もしよければ私もと……。


 卑しくも欲張りなことを考えてしまう……。


 いくらフェンリルが若い時を長く生きる種族であっても年上である私など、ご主人様も相手をしてはくれないでしょう。


 何よりも、アオに比べれば胸は大きくはありますが、肌のハリは負けています。


 細身で均整の取れたアオの体を見ていると、どうしても若さを羨ましいと感じてしまうのです。


 廊下から足音が聞こえてきて、どうやらご主人様が戻られたようです。


 アオには言っておりませんでしたが、もしかしたら本日はお帰りにならないかと思っておりました。


 大人の男女が夜に会うのです。

 そういうことに発展しても致し方ないと思っておりました。


「主人様だ!」

「そうね。ご挨拶をしてから休みましょうか?」

「うん!」


 冒険者としてご主人様をお助けしてご恩返しをしたいと思います。


 フェンリル種としての力を、このような形で使えるようになるなんて夢にも思いませんでした。


 これも全てご主人様のおかげですね。


「ご主人様!」

「主人様!」


 私たちが部屋を出て、ご主人様に声をかけると真っ赤な顔でお疲れのご様子であるご主人様がおられました。


「二人とも、ただいま」

「随分と飲まれたのですか?」

「はは、うん。ちょっとね。今日はもう寝るよ」

「お一人は危ないのではないですか? お風呂が沸いております。もしよろしければご主人様をお風呂に入れさせてはくれませんか?」


 洗体業を呼ぶには遅く。

 また、ご主人様のお身体を洗ってあげたいという私の卑しい考えが見透かされないのか、不安ではあります。

 

 ですが、酔っているご主人様にしかこんなことは言えません。


「あ〜、そんな悪いよ。いいの?」

「はい! 喜んで!」

「アオも洗う!」

「そうね。二人でご主人様を綺麗にして差し上げましょう」


 娘と二人でご主人様をお風呂に入れて差し上げる。

 ふふ、少しだけ背徳的な意味合いを含んではいますが、従者としての役得ですね。


「さぁ、服を脱ぎましょうね」

「じっ、自分で出来ますよ」

「今日も見たばかりです。お気になさらずに」


 私はそう言ってご主人様の服を脱がせました。

 アオにはお湯の確認に行ってもらって、私たちも服を脱ぎます。


 プロの方々は、服を着たまま洗いますが、我々の服は全てご主人様に買っていただいた物です。あまり汚すわけにいきませんからね。


 下着だけになった我々はご主人様の体を洗って差し上げて湯船に浸かって、髪の毛を洗います。


「あわわわ」

「ふふ、ご主人様は逞しいのですね」

「主人様、かっこいいの」

「えっと、二人ともありがとう。多分、お酒を飲んでいるから明日には忘れているかもしれないけど、先にお礼を言っておくね」


 酔っていてもお優しいご主人様のお身体は男らしくて、ご立派でした。


 私はご主人様の愛棒を凝視してしまいましたが、酔っていて本当によかったです。


「さぁ拭き終わりました。どうぞベッドでゆっくりおやすみください」


 本当は最後までご奉仕したいところではありますが、お疲れのご主人様に望まれないまま致すわけにはいきません。


「二人ともありがとう。僕からも二人に労いをさせてほしい」

「そんな労いなど」

「主人様とお風呂楽しかったの」

「簡単なことさ。二人にヒールをかけて回復をしたいだけだよ。二人も、街に来て色々と疲れているだろうからね」

「ありがとうございます。それでは」

「わかったの」


 瘴気を失っている間に、何度も回復魔法をかけていただきましたが、確かにまだ疲れは取れきれていないので、嬉しいです。


「それじゃいくよ。ヒール」

「えっ?」

「うん?」


 温かなご主人様の手から回復魔法が放たれて……。


 あっ、これです! ずっと体の中で疼いていた火照り!


 ダメです!


「ンンンンンンンンンンンンンン!!!あはん」

「気持ちいいいの!!!」


 気づいたら私たちは裸でベッドに寝ていました。


 久しぶりに感じるこの感覚は、私の女性を呼び覚ましていたのですね。


 ご主人様は、優しいだけの男性ではなかったのですね。


 女性を喜ばせられる素晴らしい特技をお持ちで……。


 これは私がしっかりしないと様々な女性がご主人様を求めて、危険なことになるのではないでしょうか?


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あとがき


どうも作者のイコです。


ふと、思った。

書籍化したら、過激に描写してもよいのかな?


バカな作者の妄想でした(^◇^;)

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