第33話 

 フカフカなベッドの感触に心地よい温かみが伝わって、柔らかな……?


 ん? なんだこの柔らかな感触?


「えっ?」

 

 俺は目が覚めて自分の体が何が起きているのか確かめようとして……、両方から何か柔らかなものによって拘束されていることに気づいた。


 ぼんやりとする思考の中で、魔狼と戦って魔力を使い果たして意識を失ったことを思い出す。


「んんん」

「むふ〜」


 俺の位置から見えるのは左右に青い髪に犬のような耳。

 腕に当たる爆乳と巨乳の温もりという名の乳圧だった?!


 俺の愛棒が異常な反応を示しているので、浄化させるために最強のヒーリングを行使する。

 それはハンマーで愛棒を殴りつけたのと同じ衝撃で、とてつもなく痛い。


 それでもなんとか鎮めることができた。


「っ!?」

「あら、起きましたか?」


 そう言って爆乳の持ち主である青髪の女性が顔を上げて俺を見た。


「えっと、状況がわからないんですが、説明をお願いしてもよろしいですか?」

「かしこまりました。ご主人様」

「えっ?!」


 ご主人様? こんな美人で、爆乳な人に、なんでそんな呼ばれ方をされているんだ?! ただ、どこかで見たことがあるような……。


「まずは自己紹介からさせていただきます。私はルリ。アオの母です」


 なるほど! どこかで見たことがあると思っていたが、あの精神世界であった女性だ。あの精神世界ではボロボロの姿で常に疲れた顔をしていた。


 今は綺麗に整えられて、儚げな美人が俺を見上げている。


 ただ、先ほどからラーナ様にも負けない爆乳に、俺の腕が完全に埋められている。


「えっと、冒険者のソルトです」

「ふふ、知っております。この度は娘だけでなく、私も助けていただきありがとうございます」

「あっ、いえ。だけど、意識を失って……最後までは助けられなかったような……」


 リジェネレイトをかけた覚えはあるが、意識を失った後どうなったのかわからない。


「いえ、ご主人様は意識を失った後も、私に対して浄化と回復を行う魔法をかけ続けてくれました。それは傷ついた私の心を優しく包み込むような魔力で、ご自身の命も危うくなるほどの魔法を命を削って使ってくださいました」


 キラキラとした俺を見上げる瞳は、濁って絶望していた頃とは別人のようだ。


 命を削るつもりはなかったんですよ。

 

 ただ、意識を失ったから、魔法が暴走して……。


 言えない……。絶対に言ってはいけない気がする。


「それで? どうしてこのような状況に?」

「回復した私とアオの魔力をご主人様にお返ししているのです。体が冷たくなっておられたので、人肌で温めておりました」


 だから三人とも裸なんですね?!


「あっ、あの。もしそういうことがお望みでしたら私はいつでも構いません」

「なっ?!」


 ルリさんの指が俺の胸板を滑ってお腹で円を描く。


「ご主人様は言ってくださいました。自分が生きている限りは私たちの居場所になってくれると」


 えっと、俺は冒険者仲間になりましょうって言ったと思うんですが……。


「ギルドマスター様にも聞きました。アオを冒険者登録させて普通に生きられるように準備をするために身分証を作ってくれたと」


 うん。そうですね。それはしました。

 だけど、正直普通に生きられるとか、そんなことは考えてませんでした。


「私たちは身分もなく、流浪の存在でした。そんな流浪の生活に、安住の地など一生訪れないと思っていたのです。ですが、時代が変わり、冒険者ならば私たちにも普通の生活が送れる。それをご主人様は教えてくれたのですね」


 すみません。そんな大袈裟なことをしたつもりはありません。


「ですから、私の身、そしてアオの身は全てご主人様の物です。お好きなように」

「ひっ、人を物のように扱うつもりはありません。ルリさんも、アオさんも自由に生きられるお手伝いをさせてもらいます」


 面倒を見るつもりはありますが、物っていうのは……。


「まぁ! 私たちのことをそこまで考えてくださっているんですね。ですが、私の心は不安定なのです」

「えっ?」

「今の私はご主人様なしでは生きていくことが不安です。この世界に私を繋ぎ止めているのは、娘との絆と、ご主人様との契約によるものです」


 契約? ちょっと待て、俺は契約を結んだ覚えはないぞ。


「どういう?」

「私は魔狼フェンリル種です。魔物の一種とされています。実際に属性は魔に生まれたことで、普通の生活はできないと思ってきました」


 魔属性と死属性からは、瘴気が溢れ出ていると言われている。


 昔、魔族と戦ったことがあるが、倒した後は瘴気が溢れ出して、浄化が大変だった。


「ですが、ご主人様が私たち二人を仲間だと言って、主従契約をしてくださったことで、私たちをテイムした状態になりました」


 俺が冒険者に誘って二人が応じたことで主従契約が結ばれた? これは……二人にとっては良いことなのか?


「どうか私たちを救ってくださったことへの心からの感謝と、そして私たち二人を従者としてご主人様のお側に末長くいさせてください」


 そう言ってギュッと抱きしめられる。

 ただただボリュームがあって、柔らかな感触が、肌と肌が触れ合うことで伝わってくる。


「そろそろ話をしても良いですか?」


 今度は反対側にいた、アオが顔を上げる。


 ルリさんが美人お姉さん雰囲気に対して、アオはフレッシュな若々しさを感じる美少女に成長していた。


「アオ、起きていたのですね」

「お母さんとご主人様がお話ししている声で目が覚めたんだよ」

「ふふ、それはごめんなさいね」

「ううん。ご主人様が起きてくれて嬉しいの」


 そう言って成長途中の少し硬くて張りのある巨乳が押し当てられる。


「ご主人様! 大好きなの!!」


 アオの素直な言葉に俺は二人の言葉を受け止めることにした。


「えっと、つまり、魔狼フェンリルは、魔物扱いで。俺は二人をテイムしたご主人様になったってことでいいのかな?」

「「はい!!」」

「そして、俺が死にかけていたから、二人で魔力を俺に与えながら、冷えた体を温めてくれていたと」

「「はい!!」」


 声を揃えて嬉しそうに返事をする二人に、俺は途方もない幸せ感とどうやって抜け出そうか考えてしまう。


 二人の弱みに付け込んで主従契約を結んでしまったことへの反省が今は強い。


「えっと、色々とありがとう。だけど、大丈夫だからそろそろ起きようか?」

「かしこまりました。ご主人様」

「わかったの。ご主人様」


 二人が俺の言うことを聞いて起き上がってくれるが、一糸纏わぬ姿が二人同時だったので、ヒーリングで強引に抑え込んだリビドーが、鼻からの出血と共に放出される。


「「ご主人様!?」」


 二人がビックリした様子で、俺を覗き込むが、その態勢がまた俺を幸福にして、さらに出血をさせる。


 出血多量で死ねる。

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