第21話

 俺はクルシュさんとメイから昨日の出来事を聞いて頭を抱えてしまう。


 自分のしでかしたことに、穴があったら入りたい。


「ソルト殿、あれは事故だ。気にしないでくれ」

「そうですよ! ソルトさんが酔って胸を揉んで、魔法を使っただけです! 凄く気持ちいいだけです」


 俺は二人の前で床に座って土下座をしている。


 記憶を思い返してみれば、シンシアやアーシャも、俺が酔って帰ると何度か一緒に寝ていたことがある。


 当時は二人のことを妹だと思っていたので、二人も家族が恋しくて一緒に寝たかったのかなって、微笑ましく思っていた。


 だけど、実際は、俺が魔法を使って強引に寝かしつけていたとは……。


 酒は恐ろしい。


 浄化できるキャパを超えた時に、こんな恐ろしいことをしていたなんて。


「本当にすまない! 俺が出来ることであれば、謝罪をしたい」

「何を言っているんだ! それを言うのであれば、ソルト殿が酔うほどに酒を飲ませるような状況を作ってしまった私の方が悪い。フレイナ様から、ソルト殿は相当に酒が強いと聞いていたから」


 フレイナ様からクルシュさんは聞いていたのか、だから、賭けにも乗ったのか?


「クルシュ様は悪くありません! 私の父が問題を起こしたことが原因ですから。私が悪いんです!」


 ベッドの上にいる二人からも謝られて変な構図になってしまった。


「二人が気にしていないと言ってくれるなら、ありがたいけど。本当に俺が出来ることであればなんでもするつもりだ。言ってくれよ」

「そこまで気にしないで良いのだが」

「そうです! 悪いのは私の父ですから」


 この話を続けていると、誰が悪いという話になってしまうので、話を打ち切ることにした。


「もうやめておこう。結局は、第二騎士団が悪いんだ。門番の教育も、酒の席での賭け事も」

「あ〜それなんだが」

「うん?」

「ガイン殿は、フレイナ様の兄君なのだ」

「フレイナ団長の兄?」


 だからあんなに酒好きだったのか、フレイナ様はもう少し上品に飲んでいたが、酒好きだと分かった瞬間の反応は確かに同じだったかもしれない。


「ああ、私も何度か稽古をつけてもらったことがある昔馴染みで、酒場にいた者たちもガイン殿の側近で、騎士たちだと思う。酒に酔って悪ノリはするかもしれないが、根は悪い人たちではないんだ。多分」


 クルシュさんが申し訳なさそうに第二騎士団のフォローをするので、これ以上彼らを悪くいう事は、クルシュさんを悲しませてしまうことになるだろう。

 

 自分の知り合いを悪く言われて良い気分をする者はいない。


「昨日の言葉も、よくお酒の場でお酌をするのに付き合わさせられていたから、一晩酒を飲むのに付き合えという事だと思う」


 あまりにも紛らわしい言い方ではあるが、それが本当なら多少は溜飲も下がってくれる。


「わかりました。とりあえず、昨日のことは置いておくとして、今後はしばらくこちらで活動をするので、改めてご挨拶に向かいましょう」

「ああ、助かる」


 クルシュさんが納得してくれたので、俺たちはそれぞれの部屋に戻って支度をする。今後は酒を飲む機会にはほどほどにしなくてはいけないな。


 浄化の精度が下がってしまうほど飲むのはダメだ。


「ソルト殿、準備ができたぞ」

「ああ。うん? メイ、どうしたんだ?」


 今日のメイはフードを被った魔導士風の装備を身につけていた。


「また、家族に会ってお二人にご迷惑をかけたくないので、今日は変装をさせてください」


 変装と言うほどではないが、本人が気にしていることを咎める事はしない。


「メイがそれで心が落ち着くなら、それでいい。あまり無理をするなよ」

「ありがとうございます」

「俺も問題ない。服装なんて自由だからな」


 現在の二人は第四騎士団の所属として、騎士の姿をする必要はない。

 冒険者として自由な服装を選んでいい。


「ありがとうございます」


 ホテルを出て、酒場に行くと騎士たちは誰もいなかった。

 流石に、全員家に帰ったようだ。


「あっ! 昨日のお客さん、凄かったですね!」


 そう言って声をかけてきたのは、給仕をしている女性だった。


 昨日は気にしていなかったが、若くて可愛い女の子だった。


 これだけ若くて可愛い女性が安心して働いていられるってことは、第二騎士団の者たちも節度は守っているのかもしれないな。


「いや、昨日は迷惑をかけてすまない」

「いえいえ、あのガイン団長に勝っちゃう人なんて初めて見ましたよ」

「はは、団長は帰ったのか?」

「いえ、団長さんは一番飲まれていたので、上で寝てますよ」

「えっ?! そうなのか?」

「いつもは一番強いので、誰かに介抱されているのは珍しい事なんですよ」


 給仕をしてくれはる女性アンナさんと言って、ガイン団長がいる部屋まで案内してもらった。


 2階の部屋に入れば、酒の匂いが充満していた。


 俺はクリーンで部屋の匂いを消臭して、ガイン殿には酒を飛ばすように浄化をかける。


「うっ! ああ、おはよ〜う!!」


 大きなあくびをしながら起き上がったガイン殿が俺とクルシュさんたちを見る。


「なんだ? もう種明かしをしたのか、クルシュ」

「はい。ガイン殿、あまり悪ふざけはおやめください」

「ふぁ〜。そうだな。ソルト殿、改めて昨日はすまなかった。俺の負けだ! なんでも言うことを聞くから許してくれ」


 昨日の堅い話し方ではなく、今日のガイン殿は人懐っこい笑みと、砕けた話し方をする御仁で、どうやらクルシュさんが言っていた事は嘘ではないようだ。


「謝罪を受け入れます。今後は女性を物のように賭けるを俺の前ではやめてくださいね」

「う〜ん、それは難しいな。この街はそう言うのもあり得る。女だけじゃねぇ。男も人も関係ない。命なんてものにそこまでの価値はねぇ。あるのは能力と度胸だけだ」


 鋭い瞳で俺を見定めようとしているように感じる。


「わかりました。郷に入れば郷に従えと言いますからね。これ以上は言いません。ですが、こちらが目につくと思えば、注意はさせてもらいます」

「くくく、頑固なこった。だが、それは好きにしろ。この街は自由の街ダウトだ。アザマーンと交流を強くすることで、アンダーグラウンドな者たちが集まる場所になった。注意するなら、その覚悟を持ってやってくれ。それも自由だ」


 両手を広げ、大きな声で語るガイン殿はこの街を治めるのに相応しい人物なのだろう。


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 あとがき


 どうも作者のイコです。


 本日は地元の友人と飲みに行ってくるので、明日の更新は1話だけになると思います。


 皆様からのたくさん応援ありがとうございます!


 今作品は、ドラゴンノベルコンテスト用の執筆作品です。


 現在は、


 ドラノベ週刊ランキング5位。

 総合週刊ランキング17位

 異世界ファンタジーランキング10位


 にランキングすることができました。

 本当にありがとうございます!


 レビューコメントなどいただければ歓喜しますので、書いてやってもいいぜって方はどうぞご協力お願いします(๑>◡<๑)


 ☆や♡での応援はいつでもお待ちしておりますので、面白いと思っていただけたなら、今後も頑張っていきますので応援をよろしくお願いします。

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