第13話
ラーナ様が用意してくれた正装に着替えて、屋敷へとやってきた。
騎士として、動きやすいながらも上品な服装をしたフレイナ様が出迎えてくれる。
ワンピースを着ていた時は、可愛く見えたが、やっぱり今は凛々しい姿をしていた。
「今日は凛々しくてかっこいいですね」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。このあいだの私は忘れてくれ」
「あの時は可愛かったです」
「なっ!? ソルト殿、そういうことは軽々しく言わないでもらいたい」
「そうですか? 言わないと伝わらないと思って」
凛々しい姿をしているのに、顔を赤くしているフレイナ様は親しみやすくて、とてもいいな。
「とにかく、こちらへ」
「今日は護衛が少ないんですね?」
「いや、屋敷の至る所にいるよ。近頃は少し物騒なのでな」
瘴気が増えているということは、魔物の襲来も考えられる。
城郭都市として、門や塀がいくら守ってくれていても、空を飛んでくる魔物にはどうしても対処が遅れてしまう。
「瘴気のこともあるが、ラーナ様の身を狙う者がいる噂があるのだ」
「ラーナ様の身を狙う者ですか?」
「ああ、ラーナ様は辺境でも有名な美貌の持ち主だ。王都の貴族だけでなく、地方の貴族たちも家令などしないで自分の嫁や妾にと狙っている貴族が多くてな」
お貴族様同士というだけでなく、男女のいざこざというわけだ。
どこにでもある話だが、貴族同士となると規模が大きくなるので、厄介だな。
「こちらだ」
フレイナ様が扉をノックすれば、ラーナ様が入るように返事をしてくれる。
開かれた扉から中に入ると、大きなテーブルの上座にラーナ様が座っておられた。
俺は奥の席に通されて、扉側にはフレイナ様が着席する。
他にも数名の護衛がいるところを見ると、完全に信用されたというわけではないのだろう。
今日のラーナ様は、ドレスのような胸元が開いた服ではなく、首まで布があるブラウスを着ていた。
それでも隠し切れないほどの凶器が搭載されているので、ラーナ様の瞳を見つめて挨拶をした。
「今宵はお招きいただきありがとうございます!」
「いえ、クルシュから報告は受けております。ドラゴンゾンビを討伐してくださったと。本当にありがとうございます」
ラーナ様は俺の席に近づいて握手を求める。
「いえ、俺は俺の仕事をしただけですから」
「ふふ、ソルト様はやっぱり謙遜なされるのですね」
「謙遜なんてそんな」
握手をすると、ラーナ様が口元に手を当てて楽しそうに笑う。
だが、俺は本当に謙遜なんてしていない。
自分の出来ることを成しただけにすぎない。
「良いですか? ソルト様」
身を寄せるように顔を近づけたラーナ様は、とてもいい匂いがした。
綺麗な顔が蝋燭の灯りで照らされて、なんとも幻想的だ。
「はい?」
「ワイトキングもドラゴンゾンビも、高ランク任務であることはご存知ですか?」
「ええ、まぁ」
それは重々承知している。
俺は、聖属性だから倒す方法を持っているが、聖属性以外の者では死属性に対して全てを滅することはできない。
殺すことも難しいので、どこかに吹き飛ばすか、封印するアイテムを用意する必要があるだろう。
「ワイトキングは、死霊術師と呼ばれ、下位モンスターを発生させて天災と呼ばれるほどの脅威があります」
「う……」
「ドラゴンゾンビは、疫病の原因になり、発生している間はどんどんと毒素をバラ撒き続け、空気を汚染します」
「はは……」
死属性と瘴気が合わさると最悪な結果を生むのは、知られている。
「そんな2体をこの短い期間で討伐してくれた冒険者様は、ソルト様だけなのです。もっと胸を張ってください」
「胸をですか?」
ラーナ様は俺に対して胸を張る仕草をする。
俺はそう言われて、大きなラーナ様の胸へ視線をむけそうになって……。
「きゃっ!」
バチンっ! と音がしたと思ったら、俺の目にラーナ様の胸元からボタンが弾け飛んできた
「ぐわっ!? 目がっ!?」
痛っ!?! くっ、これがラーナ様の胸を見ようとした罰だというのか?
「あぁぁ!!! 申し訳ありません。今日は大きめのサイズを着たはずなのに!」
「だっ、大丈夫です。自分で回復魔法をかけて治せますから。それよりも……」
俺はこのまま目を開いて、ラーナ様の解き放たれた谷間を見ても良いものかと戸惑う。
「ソルト殿は紳士です。ラーナ様のお姿に気を使われておられるので、お召し物を変えてきてはいかがですか?」
「そっ、そうでしたわね。ソルト様、申し訳ありません。すぐに着替えてまいりますので、お待ちください」
「ええ、お気になさらにず!」
俺は自分に回復魔法をかけながら、ラーナ様が出ていってくれたことにホッとする。あのままなら、どうしてもラーナ様の胸元から目が離せなくなってしまっていた。
「すまないな。ソルト殿。ラーナ様に合う服がなかなかなくて全て特注で作ってはいるんだが、胸元がまたも成長なされてしまってな」
まだまだ成長途上のラーナ様のOPなのですね!!!
そんな情報を教えないでほしい。
どうしても気になって見ないようにしているのに、見てしまいそうだ。
「だが、貴殿が見ないようにしてくれているから、瞼を傷つけただけで済んだ。バカな平民がガン見して、モロに目に受けて失明しかけたことがあったのだ」
ヤレヤレという声で話をするフレイナ様だが、それはなかなかにヤバい状況なのではないかと思えてしまう。
「貴殿の紳士な振る舞いに、詫びと感謝を」
よくわからないことに感謝をされたが、とにかくフレイナ様には悪気はなさそうだ。
「お待たせしました! さぁ食事にしましょう」
そう言って戻ってきたラーナ様は、昨日のドレスと近い胸元が開いた服で、余計に目のやり場に困るディナーになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます