第18話 フォーリアの現状

「オスカー、行ってきます」

 私はオスカーの石像にそう挨拶をして、彼の頬に軽くキスをした。


 冷たくなってしまった彼の身体。やっと触れられたのに、こんな結末じゃ悲しすぎる。

 絶対元に戻すからね、オスカー。


 私はそう決意をして別荘を飛び出し、エドとノエルの待つ潜水艇へと乗り込んだ。


⸺⸺


「ノエル。確かあそこの森は島の北側へ川が流れています。そこから上陸できないか試してみましょう」

「んだな、了解」


 この孤島は島から東にあったため、ノエルは北西を目指して潜水艇を進めた。


 その道中で。

「エマ、ノエルからあなたのことも一通り聞きました。災難でしたね……」

 と、エド。


「でも、オスカーとノエルが助けてくれたので……それに、エドもエドのお兄様も戦ってくれていると……」


「その件は一旦兄のハンスに任せることにして、僕は一番上の兄オスカーとあなたの様子を見に行くことにしたのです。僕はハンス兄さんよりも爵位も下で発言力も乏しいですから……」


「それでも、ありがとうございます。私とオスカーにとって、あなたたちは希望です」


「……そう言われるとめちゃくちゃに抗議したかいがあります」

 エドはそう言って苦笑する。

「めちゃくちゃに抗議してくれたんだね……」


「ははは、それはもう。だって、兄さんが禁じられている召喚なんてするはずがないですから」


「その、諸国会議はどんな感じ……?」


「今のところ、フォーリア以外の5つの国の内、古くからある3国は恐らくローレンツ家寄りなんじゃないかと思います。ただ公言はしていませんが……。ですが残りの2国は歴史も浅くローレンツ家との関わりもあまりありませんでしたから、僕らよりもフォーリアの召喚術を恐れてそちらにつこうとしていますね……」


「なるほど……」


 ここでノエルが口を挟む。

「俺もさ、唯一味方になってくれそうなフォーリア国王とコンタクトを取ろうと思ってんだけど、どうしても国王の養生している寝室に入れねぇんだよ……。侵入の技術は磨いてきたつもりだったんだけどな。あそこだけ警戒が異常だ」


「それも怪しいですよね。フォーリア王妃も、国王の絶対の安静のためだ、としか言ってくださいませんでした」

 エドもそう続く。


「あの……失礼を承知で言うけど……もう死んでるんじゃ……」

 私は遠慮がちに言う。しかし、ノエルがすぐに反対した。


「いや、それはねぇ。寝室からは、ちゃんと国王の気配がしてる。あの石になったオスカーだって人の気配がするんだ。気配がする以上、国王は生きていると考えるのが妥当だ」


「そっか……オスカーも人の気配するんだね……良かった……って!」

 私はオスカーの気配があると知って安心すると同時に、ある結論に至る。


「エマ、どうしました?」

 と、エド。


「国王も石になってるんじゃない!?」


「「っ!」」

 2人は目を見開いて驚きをあらわにする。


「もしそうだとすれば……オスカー兄さんだけではなく、この国の状況もひっくり返せるかもしれませんね」


「うん!」

「だな!」


 私たちは新たな希望を胸に、島の北東部へと到着する。

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