第119話 注目カード
俺達は3人で観客席に行き、他の対戦を見ていく。
「そういやフランクとセドリックは?」
「あの2人は明日からだから今日は最終調整だってさ。午後からはトウコとユイカの試合もあるし、自分達の対戦相手の試合もあるから見るらしいけど」
なるほどねー。
「ユイカとラ・フォルジュさんは?」
「多分、あんたらの試合は見たと思うわ。あとは午後からの試合に向けた調整でしょうね。あの2人にそんなものがいるかは知らないけど」
いらないだろうなー。
俺達はその後も試合を見ていくが、特に目を見張る人はいなかった。
そして、午前の試合が終わると、観客席にいた人達が席を立ち始める。
「つまんなかったわねー」
「皆さん、強かったですけどね」
「普通なのよ。面白みがない」
イルメラの言いたいことはわかる。
実力者もいたが、戦い方が剣で戦うか魔法を使うかで普通だったのだ。
「注目は午後の一戦か」
「だと思うわよ。今日一番の注目カードね」
「俺らは?」
「初戦だから注目カードなのは間違いないけど、あの2人ではねー……私の戦いの方が観客は盛り上がってたわ」
確かにイルメラの方が派手さはあったな。
「ツカサさん、午後からは会長と見られるんですか?」
ノエルが聞いてくる。
「そうだな。皆も注目カードだろうけど、俺達が一番注目しないといけない。シャルと相談しながら見るわ」
「対戦相手ですもんね。じゃあ、私達とは見られませんね」
そうなるね。
「あんた、明日のフランクとセドリックの試合はどうするの?」
あいつらの試合は見たいが……
「翌日の水曜にロナルド、ユキと当たるからな。今日の試合を見て、対策を考えないといけない。多分、見られんな」
「じゃあ、私らが代わりに見とくわ」
「お前も水曜に対戦があるだろ」
「問題ないわよ。敵じゃないし」
すげー自信。
「じゃあ、俺の分まで応援しておいてくれ。セドリックはやる気ゼロだろうけどな」
「でしょうね」
「セドリックさんですしね」
俺達は立ち上がると、演習場を出て、寮に向かう。
イルメラとノエルと分岐点で別れると、家に帰り、昼食を食べた。
そして、男子寮に戻ると、丘を降りていく。
すると、分岐点にはシャルとクロエが待っていた。
「やっほー、クロエ」
「やっほーでございます。朝一の試合は勝ったそうですね。おめでとうございます」
「ありがと。クロエも午後からの試合を見るの?」
「はい。今日の試合を見て、対策を考えます」
六連覇さんが見てくれるのはありがたいな。
「じゃあ、行きましょうか」
シャルがそう言うので丘を降りていく。
そして、演習場の客席にやってきたのだが、試合の10分前だというのに超満員であり、すでに立ち見客もいて、座れるところがなさそうだった。
「ダメだこりゃ」
本当に注目カードだわ。
「仕方がないわよ。立ち見でいいでしょう」
「しゃーないか」
まあ、立ち見でもわかるだろ。
「ツカサ様、あちらの御方は知り合いですか? こちらに向かって手を振ってますけど」
クロエにそう言われて席を見渡してみると、一番前の席の男子が俺達に向かって手を振っていた。
あの男子は……
「アンディ先輩じゃん」
「本当ね。先輩だわ」
何してんだろ?
俺達は階段を降りていき、一番前の席にいるアンディ先輩のもとに向かう。
「先輩、復帰したんですね」
座っている先輩のもとに行くと、声をかけた。
「まあ、先週から復帰してるんだけどね。1年の君らと会う機会はあまりないから仕方がないけど」
俺は寮生じゃないからな。
「先輩も試合を見に来たんです?」
「そんなところ。2、3年は授業があるんだけど、ほとんどの人間がサボってる」
「よくないですよ?」
「これまでのショボい魔法大会と違って大盛り上がりだからね。あ、もちろん、僕は君らに賭けた」
やっぱり盛り上がってるのは賭けか。
「それが正解です」
「信じてるよ。君らもこの注目カードを見に来たんだろ? 席は取っておいたから座りなよ」
そう言われると、確かにアンディ先輩の横は数席空いていた。
「取っておいてくれたんです?」
「ミシェル先生の指示だけどね」
ミシェルさん、ちゃんと俺らを贔屓してくれるんだな。
「あざます」
俺達は俺、シャル、クロエの順番でアンディ先輩の隣に座った。
「先輩、賭けってどんなのですか?」
ちょっと気になったので聞いてみる。
「色々あるけど、一番は君達4組の総当たり戦だね。誰がどう見ても、それが1年の頂上決戦だもん。それの勝敗が賭けになってる。一番人気はトウコさんとユイカさんの全勝」
トウコとユイカか。
「先輩は俺達の全勝に賭けたんです?」
「もちろんだよ。僕に良い思いをさせておくれ」
この人、幼馴染があんなんだったのに明るいな……
「頑張ります」
「頼むよ。君達の最初の一戦を見たトウコさん達に賭けた奴らの顔が忘れられない」
この人、大丈夫か?
暗部だろうに。
「一番人気はトウコ達ですよね? 二番は?」
「ほぼ同率だけど、君らとアーサー、ヘンリーチームだよ。君らは特化型でバランスが良かった。アーサーとヘンリーは実力者のコンビだったんだよ。でも、その予想は早々に消えたね。あの2人は正直すぎた」
確かに正直だった。
「非常に楽でしたよ。予想通りの動きをしてくれましたもん」
「学園が実戦形式の魔法大会を大規模にした理由がよくわかったよ。彼らは実戦不足だ」
教えてもらったことしかやっていない感じだった。
どれだけ剣を振ろうが、相手は考える人間だということをわかっていないといけないのだ。
その証拠にこっちがちょっとセオリーじゃない行動をしたら一気に崩れた。
「断言しますが、あの2人は獣みたいな突撃コンビに秒殺されますよ」
もちろん、トウコとユイカ。
「僕もそう思う。怖いねー」
「それで先輩達の予想だと、ロナルドとユキが一番下ですか?」
「あの2人は情報が少なすぎるんだよ。完全なダークホース」
ダークホースか。
「ツカサ、そのダークホースが来たわよ」
シャルが言うように片方の出入口からいつぞやも見た袴姿のユキと槍を持ったロナルドが入場してきた。
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